布施の秋は、ハロウィンより妖怪!「妖怪あつめ」を仕掛ける彫り師・ぎんさんの深すぎる妖怪愛。


カッパの伝説も北九州とか長崎とかに多くて、海沿いに目撃情報とかが続いてるんですけど、なんでかなって調べたんですよ。

ぎんさんが実際に現地に行って、妖怪の話を調べるのが「妖怪あつめ」だったんですね。今まで、どんな妖怪を調べたか、教えていただいてもいいですか?

例えば、鬼っていうのは江戸時代の人たちが、その当時に起こったできごとを基に描き起こしてキャラクターにしてるから、きっとそれが正解にいちばん近いんですよ。でも、現代になって掘り起こしていくと、鬼っていうのは実は、当時の政治争いに敗れたコミュニティのボスだったんじゃないかとか、そういう仮説が立てられるんです。もしそうだとしたら、悪さをしてみんなから嫌われる存在という描き方じゃなくて、もうちょっと凛とした感じを漂わせたいなとか思いますよね。

なるほど!どういう存在を鬼として描いていたのかを調べると、鬼=ただの悪者ではないのでは?という仮説に行き着くわけですね。

カッパの伝説も北九州とか長崎とかに多くて、海沿いに目撃情報とかが続いてるんですけど、なんでかなって調べたんですよ。日本の妖怪ってきつねとかたぬきとか、だいたい動物がベースになって描かれてるんですけど、カッパって似てる動物いないじゃないですか。何かなと思ってたんですけど、隠れキリシタンだったんじゃないかと思って。当時のキリスト教徒は、トンスラって頭頂部を剃る髪型をしてたんですよ。山とかに潜んでいたキリシタンの姿を、子供たちが見かけたんじゃないかって。

そういう仮説を立てると、自ずとカッパの表現も変わってきますね。現地に行くと、なにかヒントになるようなものは残っているんですか?

なにかは見つかりますね。都市開発とかでキレイになってても、地名だけが残ってたりするんです。
高知県におっぱしょ石っていうのがあって、絵には描かれてなくて、石の名前だけが残ってるんですけど、それがむっちゃ気になって高知まで行ったんです。普通の住宅地に山が残ってて、その中にもう誰も管理してないような墓が密集してて、そこにおっぱしょ石があったんですよ。南無阿弥陀仏って彫られた石に、おっぱしょ石って文字も彫ってあって。現地の人に聞いたらその奥に本物のおっぱしょ石があるらしいんですけど、そこは入ってはいけない場所らしいんですよ。で、もしかしたら、姥捨て山やったんちゃうかなって。おっぱしょっておぶれって言う意味で、おぶっているうちにだんだん重くなっていく……みたいな話が残ってるんで。

ああ、おぶって捨てに行く心苦しさが、重さとして感じられたのかもしれないですね。

そういう仮説をもとに、帰ってから絵を描いたんですよ。

じゃあ世界で初めて、伝説しか残ってなかったおっぱしょ石がビジュアル化されたわけですね。

いや、でも誰か描いてるかもしれないっすね。妖怪好きは変わった人いっぱいいますから。

ぎんさんが描いた、おっぱしょ石のイラスト(上段5点)。「力自慢が背負ったらしいから、力士のモチーフにしてみました」

そうなんですね(笑)。ちなみに、ぎんさんがいちばん好きな妖怪はなんですか?

カタチだけでいくと塗仏。でも、しっくりくるのは鬼っすね。鬼の生き方とか惹かれますね。

カタチが好きだという塗仏。「メディアに出るときは、これで顔隠して出ることもあるんですよ」

鬼って日本全国にいるんですか?

いますね。鬼伝説は日本中にあります。有名なところでは三重の大嶽丸(おおたけまる)とか、京都の酒呑童子(しゅてんどうじ)、あとは吉備の桃太郎の鬼退治とか。京都の福知山の大江町には「日本の鬼の交流博物館」があって、世界鬼学会の会長がいるんですよ。これがまあまあワールドワイドな活動してて、シンガポールとかマレーシアの鬼研究者が集まってシンポジウムとか開いてるんです。

鬼に惹かれるというぎんざんが昨年、石浦関のために作った鬼づくしの着物。

鬼学会がシンポジウム!鬼って日本だけじゃなくて、海外にもいるんですね。

鬼の概念って世界中にあるんですよ。世の中の基準って、大きく善と悪に分かれてるじゃないですか。それは宗教観とか人によって多少の違いはあっても、善と悪が存在し続ける以上、鬼という考え方も残るんやろうなって思います。

善と悪に分かれていると、悪の側の役割を担わされているものがあると。人の営みがあるところには、鬼もいるということですね。

歴史を見てるとそうですね。去年、引退前の石浦関の着物を作らせてもらったんですよ。彼は鳥取出身なんですけど、鬼に由来のある土地だったので、鬼づくしのデザインにしたんです。相撲自体が野見宿禰(のみのすくね)って豪族がルーツなんですけど、豪族って鬼との関係が深いんですよ。朝廷が、自分たちに対抗する勢力を持ったコミュニティを鬼扱いしていたので。

うちは親や親戚がみんな商売をやってて、お金を稼ぐ=自分でなんかやる、なんですよ。勤めるっていう発想がなくて。それで、屋台をやってみようってなったんですね。
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Profile

ぎん

広島県出身。地元でバスを改造した屋台を経営した後、21歳で大阪へ。たまたま立ち寄った布施を気に入って定住、布施商店街でタトゥースタジオを開業する。2017年からイベント「妖怪あつめ」をスタート、2023年6月に妖怪専門店「ビリビリモンスター」をオープン。

Shop Data

ビリビリモンスター

妖怪をモチーフにしたラグマットの展示など。オリジナルラグマットを作るワークショップも受付。タトゥーは妖怪以外のモチーフもOK、妖怪ガチャガチャも設置予定。

東大阪市足代1-11-15
Youtube:@user-ru7jk4pv7i

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