お笑い、音楽、俳優……ジャンルレスに活躍する藤井隆さんが登場!今秋出演する舞台に対する想いや、大阪時代の思い出についてもインタビュー!


この前ね、赤ちゃんの役をやったんですよ。赤ちゃんのわけないですよ、でもこれも舞台の醍醐味じゃないですか。だから「赤ちゃん!」って思い込んで演じました。

藤井さんは演じるとき、役作りというか、どのように役にアプローチされますか?

役について考えたりとかイメージをふくらませたりとか、セリフを覚えたりとか、それは当然しますけど、でも結局1人ではお芝居できないんです。お相手の方がいてくださってなんぼなので。
怒ってるセリフを怒った風に言ってみても、相手が違う感じで受け取ったら、それはまた違う言い方になるわけで。逆に相手が笑いながら怒ってるか泣きながら怒ってるかで、こちらの気持ちもきっと変わりますし。多分セリフっていうのは、僕の気持ちがどう動くかっていうきっかけとか記号だと思うんです。

たしかに、自分1人で完結するものではなくて、関係性の上で成り立つものですね。

だから、役づくりの大変さって言うのは、僕は実はわかってなくて。いつも共演者や演出の方に与えていただけるから。相手の方がくれるものに従うっていうか、乗っかるっていうか。だからこれは、僕の能力の高さとかそういうことではなくて、周りの方に恵まれてるという意味で、役作りで苦労したことはないんですよ。

舞台に立つときに大切にされていること、意識されていることはありますか?

これだけはちゃんとやろうと心がけてるのは、信じ切ること。例えばね、鬼に殺されて自分も鬼になるとか、そんなの現実ではないじゃないですか。でも、あるって信じるんです。客席のほうに向かって何かセリフを言ってるときも、目の前にはお城があると信じてますし、殺されるときは殺されたって思うし、殺すときは本当に殺すって思い込むようにしてます。
この前ね、赤ちゃんの役をやったんですよ。赤ちゃんのわけないですよ、でもこれも舞台の醍醐味じゃないですか。だから「赤ちゃん!」って思い込んで演じました。

舞台の上に、その世界があると信じ込んで演じられるんですね。

それぐらいしないとダメなんですよ僕はきっと、上手じゃないから。真面目に言うと、そういうふうにお芝居を教えてくださった方がいたんです。その人と一緒に舞台に立ってたら、本当にそんな気分になったんですよ。

たしかに客席から見ていても、舞台の上に別世界を構築する役者さんの力量はすごいと思います。生身の人間が目の前で動いているのに、現実とは全く違う世界を見せてもらえるので。

僕は生まれて初めて舞台を観たとき、目の前で人がやってることに驚いたんですよ。暗転で時間が飛んだり、「遡ること10年」っていうセリフで時代が戻ったり。今まで見てきたものとは違う時間の進み方、物語の展開の仕方をするから、すごく衝撃を受けました。その衝撃がいまだに記憶に残っているので、それを再現できなくても、自分が舞台に立たせてもらえるときは、せめて信じ切ることぐらいはしようと。

信じ切る力が、舞台の上の世界を表現する原動力になっているんですね。舞台からは、客席はどんなふうに見えるんでしょうか?

それは劇場や演目によってケースバイケースですね。でも、実際に初日が始まると、お客さんに教わることはたくさんあります。ここでこんな反応が返ってくるんや!とか。1ヵ月とか稽古をずっと重ねてきても、お客さんの前でやるのとは全然違いますね。

お客さんの反応によって芝居が変わったりすることもありますか?

それは変えちゃいけないと思うんです、稽古してきたんやから。でも、稽古場で演出家の方がおっしゃったことの答え合わせを、舞台の上でしてる感じはありますね。ああ、お客さんがこう受け取ってくださると信じてこういう演出だったんだなとか。だから自分ではわかってなかった演出の意味を、お客さんの反応で理解するってこともありますね。

今回の『ガラパコスパコス~進化してんのかしてないのか~』では、老いや進化がテーマですが、ご自身で老いや進化を感じる部分はありますか?

最近ね、興味のないことに本当に興味がなくなってきたんですよ。昔は自分に関わりがあってもなくてもいろんなことに興味を持ってたんですけど、最近本当に興味のないことがどうでも良くなってきて。年とったなあって思います。例えば、東野幸治さんとか今田耕司さんとか、あのお兄さん方はすごいんです。テレビもチェックしてるし漫画も本も読んでるし映画も観てるし、オールマイティにいろんなことをご存知で、24時間は平等なはずなのに、全然違うんですよ。ああいう風になりたいなと思ってたんですけど、でもそういう人にはなれませんでしたね。

お好きなことに対する情熱は衰えてはいないですか?

そうですね、だから短所でもあり長所でもあるんですけど、好きなことは徹底的に追及します。なんかね、昔はおじさんとかおばさんって、自分勝手だなって思ってたんですよ。でも自分がその年になってきたら、その自分勝手は、他者に興味がなくなって、自分の好きなものとか好きな人を守ることにベクトルが向いてるんだなってことに気付いて、失礼しました!って思ってます。

逆に、進化してるなって感じることってありますか?

あります。3年ほど前に体調を崩して精密検査を受けることになって、耳が聞こえにくかったのも調べてもらったんです。先生に「病気ですか?」って聞いたら「老化です」って。味覚も、昔は椎茸とか昆布の出汁の味とか、化学調味料とか、わかるタイプだったんです。でもそれがわからなくなってきて、それも調べてもらったんです。先生に「病気ですか?」って聞いたら「老化です」って。精密検査の結果を全部「老化です」で片付けられて、すごい嫌ってなりました。

今のは老化のお話ですね(笑)

違う違う、進化ね。食べることに関しては、味覚がちょっとぼやけた分、苦手な味も紛れてきて、食べれるものの幅が広がりました。もともと何でも食べれるほうでしたけど、より広がった。茗荷とかね、ちょっと苦手と思ってたけど、いけるようになりました。食への探求心は進化してます。

子供の頃は、難波は怖かったんですよ。北摂で育った僕は、そんなに難波には行ってなかったんです。僕にとっては梅田が大阪やったんで。
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Profile

藤井 隆

1992年吉本新喜劇に入団。2000年に「ナンダカンダ」で歌手デビューし、年末の紅白歌合戦に初出場。最近の舞台出演に、『おとこたち』(岩井秀人演出)、『ゲゲゲの鬼太郎』(田村孝裕演出)、『広島ジャンゴ 2022』(蓬莱竜太演出)、こまつ座『雪やこんこん』(鵜山仁演出)、大パルコ人④マジロックオペラ『愛が世界を救います(ただし屁が出ます)』(宮藤官九郎演出)、『大地(Social Distancing Version)』(三谷幸喜演出)などがある。12月に『ジャズ大名』(福原充則演出)、2024年に『カラカラ天気と五人の紳士』(加藤拓也演出) に出演予定。

https://takashi-fujii.com/

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