罪(Sin)×偶然(Synchronicity)×時(Clock)がリンクする時、人生が動き始める。2月10日公開の映画『Sin Clock』で主演を務める窪塚洋介さんにインタビュー!
社会や自分自身に鬱屈とした感情を抱えながら生きる、多くの現代人への警告を含んだサスペンス・ノワール・ムービー『Sin Clock』が2月10日に公開。「最低な人生は、たった一夜で最高の人生に変えられるのか?」。この問いの答えを求めるかのように、最底辺の人生を惰性で生きてきた主人公・高木シンジの日常がハイスピードで展開していく。果たして、その行く先は天国か地獄か。この物語は、決してスクリーンの中だけで完結するような、ただのサスペンス・ストーリーではなく、多くの現代人が抱える鬱屈とした感情に警告を発する、社会と人生に対するフィロソフィー(哲学)です。そして、邦画長編映画では、本作が実に18年振りの単独主演という俳優・窪塚洋介さんを中心に、多彩なジャンルからキャスティングされた意外すぎる配役も見どころのひとつ。ハリウッドデビューも果たし、今や日本を代表する気鋭の俳優のひとりとなった窪塚洋介さんのポジティブマインドから『人生の波を乗りこなす術』を教えていただきました。
自分のリアルな人生で主人公より最低の経験を通っているから、彼が抱えている感情は自分自身でも知っている部分でもあった。個人的にはこういうタイプの人間嫌いだけどね(笑)
まず、今作が18年振りの邦画長編映画での単独主演ということですが、窪塚さんはずっとコンスタントに色々な作品に出演しているし、どの作品でも存在感が強いから、敢えて言われて「そうだったのか!」と気付きました。
ねえ(笑)。俺も人から言われて「ああ、そうなんや」って感じたくらいで。ただ、今回の作品では座長として存在させてもらえたことが、個人的には意識が高まったところではあったかな。座長って言っても、現場で何かを働きかける人もいれば、ただそこに居るというだけの人 もいると思うんだけど、自分の場合は、現場全体のチューニングを良い状態に合わせたいというか......。現場って、『芝居をしやすいムード』というものがあると思うんだけど、それはぬるすぎてもダメだし、熱すぎてもダメで。気持ちよく入れる風呂くらいの温度っていうか(笑)。スタッフ含めて皆のパフォーマンスが一番良い状態でいられることが何よりも大事だから。こんなことを自分で言うのはちょっと独善的に聞こえるのかも知れないけど、現場ではそういう空気感を作るのが座長の大事な役割なのかなって感じてたね。
窪塚さんが演じた高木という主人公は、弱気な暴力性を内に秘めていて、ものすごく怒っているのに、表面的に見せている彼の人格はいつも申し訳なさそうで……。いわゆる、覇気の無いただの社会人。彼のこの人格は窪塚さん本人の性格とは真逆に思うけど、演じるにあたって、高木の人格についての理解はできましたか?
理解というより、俺は自分のリアルな人生で高木より最低の経験を通っているから、彼が抱えている感情は自分自身でも知っている部分でもあって。当時の自分は、高木と同じか、それよりひどいような感情を強烈に感じてたから。「この先どうなるのか?」という漠然とした不安とか「もうダメだろうな」という諦めとか。今の自分は、過去に抱えていたそういうネガティブな感情を箪笥の奥に突っ込んで、もう見ないでいいようにしてきたけど、今いるココはその経験自体を経て辿り着いてる場所だから。
だから高木を演じるにあたっては、自分自身の過去の経験と、その時の自分がリアルに味わったあの感情をまた引っ張り出せばいい、と。でも、個人的にはこういうタイプの人間嫌いだけどね(笑)
そうだと思います(笑)。具体的にはどんなところに嫌悪を感じましたか?
なんかさ、もう人生のあらゆることを諦めてるところとか。いまハマっている悪循環みたいなものに嫌気がさしてるくせに、抗うことも出来ないでそこに居続けているというマインドセットがそもそもムカつくよね(笑)。「お前、そりゃいいこと起こんねえよな」って。 だから、自分の嫌いなタイプの人間と、演技とは言え自分が同化しているっていうストレスも ちょっとあったね。でも、それも究極的にはカチンコが鳴っている間だけの付き合いだから、“淀んでいる”ってことを楽しんでもいたけど。
窪塚 洋介
1979年5月7日生まれ。『金田一少年の事件簿(95’)』で俳優デビュー。その後『池袋ウエストゲートパーク(00)』でのキング役で注目を受け、『GO(01)』で第25回日本アカデミー賞新人賞と史上最年少での最優秀主演男優賞を受賞。2017年にはマーティン・スコセッシ監作品『Silence-沈黙-』において、物語のキーマンである“キチジロー”役を獲得し、ハリウッドデビューを果たす。俳優だけに留まらず、卍LINE名義としてレゲエDee-JAYや、執筆活動やプロダクト開発、YouTube発信など、多岐に渡るクリエイター/アーティストとしても活動する。