罪(Sin)×偶然(Synchronicity)×時(Clock)がリンクする時、人生が動き始める。2月10日公開の映画『Sin Clock』で主演を務める窪塚洋介さんにインタビュー!


あまりにもシンクロが起こっていた現場撮影。「生きている実感」や「生命力」、主人公はそういうものを求めていたんじゃないかと思う。

今作では「3」という数字が物語を展開させるキーナンバーとして使われていますが、監督となぜ「3」という数字だったのかという話はありましたか?

そう言えば、監督とそういう話はしてないな……。なんで「1」でも「5」でもなく、「3」だったのかってことだよね。

そうです。この映画を見終わった時に、個人的にこの「3」という数字の意味を勝手に見出して(笑)。仏教では「3」という数字にすごく意味があって、それは「悟りを表す数字」と言われていて。かなり要約すると「対立と矛盾から離れて、両極端のどちらにも偏らず中道を行きなさい」という教えで。高木を中心とした登場人物たちのように、人生において敗者か勝者かの両極端な二分法に捕われて「最底辺の人生を一発逆転する」という安易な選択と、それを打開するために極端に振れた彼らを戒めているのかなと。考えすぎかもしれませんが……。

そう言われてみれば、高木と一緒にあんな行動に駆り立てられた2人(番場ダイゴ役の坂口涼太郎と坂口キョウ役の葵 揚)の人格も両極端だよね。あの2人に挟まれている高木って、そういう意味では中道というよりも、ひたすら“宙ぶらりん”な奴というか。高木のああいう“寄る辺の無さ”を、両サイドのあの2人の極端な人格が支えているなって思った。「3」という数字を使った監督の本当の意図はわからないにしても、その考察はすごく的を得ているなと思う。しかもさ、今話していて思ったけど、高木の名前ってシンジっていうんだけど、「神事」って書くことも出来るし……。

ちょっと、今ゾワってきました(笑)。そう言えば、現場でも色々なシンクロニシティが起こっていたと聞いています。

もうね、すっごいあったよ。あまりにもシンクロが起こりすぎて、撮影の途中からは「もう考えるのやめよう」っていうくらい。まず小さなことで言うと、3月3日(メインキャスト3人の劇中の誕生日)が、俺がすごく大好きだったおばあちゃんの誕生日ということと、劇中で番場(坂口涼太郎)が乗ってるタクシーが、俺が前に(プライベートで)乗っていた車のナンバーと同じだったり。これはごく小さなシンクロの一部なんだけど、こういうことが現場では日々、無数に起こっていて。なかでも一番ビビったのは、坂口涼太郎くんのお父さんが神戸に移住した時に、タクシードライバーをしながら彼を育てていたらしいんだけど、劇中で高木たちが務めているタクシー会社も神戸が舞台ということと、お父さんの名前が高木と同じ「シンジ」。

監督はそんな事はまったく知らずに坂口さんにこの作品のオファーを?

うん。まったく知らずにオファーして、後になって偶然繋がったっていう。こういうことが信じられないくらい起こっていた現場だったから、監督自身も「ちょっとヤバいんですけど」って(笑)。「この作品は(何かに)書かせられている気がする……」とか言ってて。でも、いわゆるシンクロが起こっている時っていうのは物事が良い方向に進んでいる状態だと思うから。

良い状況で起こるって聞いたことがあります。それを気のせいにするか、特別な意味を感じるかは人それぞれですが。そういう意味でもこの映画は、これは最後の10分以降からの結末までを見て思ったんだけど、いわゆるサスペンスストーリーのハラハラする展開だけを見せたいんじゃなくて「人生哲学」を示したいんだと感じました。シンクロをきっかけに、人生に何を見出すか。それはこの映画を観た人それぞれに委ねられていて。

うん、すごいわかる。俺も監督と初めましての状態で、送られてきた脚本を読んで「めちゃくちゃおもしろいな」って思って。この役を演じておいて自爆するようなこと言うようだけど、脚本がおもしろければ役者なんて誰が演じてもおもしろくなるって思ってる。俺じゃなくてもね。牧監督は脚本と監督をやるだけじゃなくて、俳優陣も自分で口説き落として、さらには現場でロケ車の誘導とか水撒き、そういう雑用まで自分でやる人で。本当に、身体ごとその精神性が染み付いている人なんだなって感じて。自分たちキャストやスタッフも、監督のために「良い作品を残す」という共有意識みたいなものも芽生えたから、すごくいい経験になったと思う。

この作品を観てから、個人的にすごく考えたのは「高木が本当に求めていたものとは何だったんだろう?」ということでした。

そうだね。本質的な部分を紐解いていくと、たぶんお金というものを媒介にして、今の状況から抜け出したい、今の自分を変えたいという欲求を満たしたかったんだろうなと思う。ずっと負のループの中に居続けて、陰鬱としたオーラをまとっていたけど、刺激的な仲間を得て、強奪計画という内容はともかく、日常が新しい方向に動き出してからはどんどん活き活きしてくるんだよね。暗かった顔つきも変わってきて。それが答えだよね。

お金を得ることじゃなく、すでにそのプロセスで高木の望んでいたことは叶えられていたように思います。いわゆる「生きている実感」のようなものを。

そうだよね。すごい険しい山に導かれていく人っているじゃない。そこに行ったら何が起こるかわかんないし「行かなきゃこんなことにはならなかったのに」みたいな展開もあるかも知れないんだけどさ、でもそういう「生きている実感」みたいなものを、生命力を全身で感じられるから行ってしまう人って多いよね。高木もそれを求めていたんだろうね。

誰にでも声を掛け合う関西らしいカルチャーや性格が好きだし、肌に合うって感じる。人生を変えたいなら、自分を信じ抜くこと。
123
Profile

窪塚 洋介

1979年5月7日生まれ。『金田一少年の事件簿(95’)』で俳優デビュー。その後『池袋ウエストゲートパーク(00)』でのキング役で注目を受け、『GO(01)』で第25回日本アカデミー賞新人賞と史上最年少での最優秀主演男優賞を受賞。2017年にはマーティン・スコセッシ監作品『Silence-沈黙-』において、物語のキーマンである“キチジロー”役を獲得し、ハリウッドデビューを果たす。俳優だけに留まらず、卍LINE名義としてレゲエDee-JAYや、執筆活動やプロダクト開発、YouTube発信など、多岐に渡るクリエイター/アーティストとしても活動する。

CATEGORY
MONTHLY
RANKING
MONTHLY RANKING

MARZELでは関西の様々な情報や
プレスリリースを受け付けています。
情報のご提供はこちら

TWITTER
FACEBOOK
LINE