このブログを読んでいる良い子のみんなは、私が大阪在住であることや、セアカゴケグモは触っちゃいけないこと、彼女持ちの男と終電逃したい時の女はわざと脱げやすいパンプスを履いてくることくらいはご存知だと思うのだが、実は私、結構名古屋に行く機会が多い。
 新幹線で柳沢慎吾ばりにいい夢50分見てたら着くのだから、大阪と名古屋は近所であると言っていい。
 そして名古屋に行くと、絶対に行くお店がある。名古屋市営地下鉄「上前津駅」から徒歩2分のところに店舗を構えるアメリカンダイニングバル”City Dining Macy’s”(メイシーズ)。ビンテージ感漂うおしゃれな店内には、いつもジューシーな香りと、多くのお客さんで賑わう。私も友人に誘われて初めて行ってからというもの、ここの虜になってしまった。抱かれていると言ってもいい。
 そんな人気店メイシーズのオーナー、山ちゃんから2号店を出すという話を聞き、居ても立っても居られなくなり色々話を聞きたくてインタビュー形式で対談させてもらった。
 メイシーズだけでなく、DJイベントに呼んでもらったり、朝まで飲みに連れていってもらったりと本当にお世話になっているのだが、意外とお店のオープン当初の話とかは聞いたことがなかったので、話を聞いてて目から鱗を通り越して目から鰤が落ちることもしばしば、大変楽しい対談となった。なお、かなり砕けた雰囲気で進行する対談となるため、みなさんも力を抜いて読んでいただければ幸いである(通常運転)。ではいっちょ行ってみよう。

2店舗目を出店した山ちゃん。今度はピザで勝負。


俺はお金を借りてくる係

新店“Dookies PIZZA”(ドゥーキーズ)が6/19にオープンということで、オーナーである山ちゃんに色々とお話伺いたいんですけど、1店舗目である”City Dining Macy’s”(メイシーズ)は、今、オープン何年目ですか?

山ちゃん:今、もう丸6年。7年目に入ったところかな。

その前も、なにかお店やってたんですか?

山ちゃん:その前は居酒屋の店長やってた。でもね、そうなるまでにも色々あってさ、俺の居酒屋のさらに前の仕事がラジオの裏方だったのよ。その時出会ったラジオの喋り手さんが、居酒屋の経営もしてたの。んでその人に「店長やらない?」って頼まれたんだけど、その頃は特に、飲食店やりたいって思ってたわけじゃなかったんだけど、店長だしいいかなと思って。居酒屋の店長だったら飲めるから(笑)。

山ちゃんらしいですねそれ(笑)。居酒屋は結構長かったんですか?

山ちゃん:2年ぐらいかな。それくらいの時期に、今のメイシーズの場所にあったカフェが閉店することになったって聞いて。そのカフェ、俺が大学時代に5年バイトしてたとこなのよ。で、そこが閉まるって聞いたから、5年お世話になったし挨拶行こうかなと思ってみんなで行ったら、そこのオーナーに「このあとこの物件返しちゃうんだけど、もし1ヶ月以内に引き継げるならそのまま中の什器とか内装そのまま譲渡できるから、やったら?」って言われて。その時の俺は、どうしよっかなー?くらいだったんだけど、一緒にいた子が結構やる気満々で、やりたいと。

あ、最初ふたりで始めたんですね!知らなかったです。

山ちゃん:最初はふたりと、そこであともうひとり呼んだのがカッシー(現メイシーズスタッフ)っていう子だったんだけど。その時は三人とも別の仕事してたんだけどね。

カッシーも立ち上げの頃からいたんですね!(カッシーはじゅんぺい丸と同い年でとても仲が良い)

山ちゃん:その頃のカッシーはBIRTH(名古屋で開催されている、全国有数のロックDJパーティ。開催数は200回を超える、老舗イベント。山ちゃんはそのBIRTHの主催でもある)のお客さんだったんだけど、フレンチで仕事してて、料理をやってるてのは知ってたから、引き抜いた感じで。それともうひとりのケンタってやつも、ずっと結構有名なカフェで働いてたから、言ってみたら俺だけが、たまたま居酒屋やってたけどそんなに飲食に精通してない感じで。その三人でやることになった。

すごいですね、急に動き出す感じなんですね。

名古屋を代表するロックDJパーティ“BIRTH”
山ちゃんは“BIRTH”主催でもある

山ちゃん:そうなんよ、で、1ヶ月で色々決めないといけないわけだからさ、「マジかよ…」って(笑)。改装にお金もかかるし。で、その時に、共同経営にするかどうかって話になって。その時に、ケンタはずっとカフェやってたからドリンク作れます、店の要領も分かってますと。カッシーは料理作れますと。で、俺は何もできんから、せめて頑張ってお金だけなんとか借りてくる係になろうってことで(笑)、オーナーを俺がすることになったの。

いやそれかっこ良すぎません!?(笑) そういえば、メイシーズってアメリカンダイナーみたいなスタイルだと思うんですけど、そのコンセプトとかはどうやって決めたんですか?

山ちゃん:アメリカが好きだから。それしかなかったんよね、周りより知識があって、情熱が持てそうなくらい好きなものが。だから、もし自分で店やるならアメリカンテイストでやりたいって思って。
俺、結構アイデアとか出すの好きなんだけど、それを具現化するのが苦手だったからバランスが良かったね。俺が「こういうのやりたい」ってバーッと出して、それを全部ふたりが具現化してくれて(笑)

山ちゃんはアイデアと金を出すと(笑)

山ちゃん:一応、借りたお金を計画でいくと5年で返す予定で、返し切ったら次2店舗目出そうって言ってたんだけど、最初なかなか上手くいかなくて。結果6年、ちょうどコロナで騒がれ出した時くらいに完済し終えて。だからそのちょっと前から2店舗目の場所探しも少しづつしてたんだけど、コロナだしちょっと厳しいなと。そこから機をずっと伺ってて今!って感じ。

なるほど〜、じゃあ次はピザをやりたい!っていう計画も1年くらい温めてたんですね。

山ちゃん:ピザ屋やりたいなってこと自体はもう2〜3年前から思ってたのよ。でも、なんでもそうだけど、やっぱりタイミングって突然来るんだよ。今回の物件見つけたのも3月の半ばにサイトで見かけて「これはいいな」と思って翌日すぐ見に行って。そしたら、結構人気で入札って言われて。家賃は決まってるけど、居抜き物件だったから、中の内装をいくらで買い取るかっていう入札。即決金額も聞いたんだけど、家賃も4月から始まるっていう、めちゃくちゃ急な話で(笑)、どうしようかな〜即決金額はどう考えても払いたくねえな〜って考えてたら、「他にも買いたがってる人いますけど?どうするんですか?」って煽ってくるから、もういいや行くしかねえと思って「即決額払いますよ」って(笑)。

すげーー!!(笑)

山ちゃん:でもさ、ちょうどその頃に飲食やってる仲良い友達が、内装費にその倍くらいかけて周りにバカにされたって話聞いて変に勇気付いちゃって(笑)、それよりはマシかって。だから、結構周りに感化されて決めちゃったところはあるね。

思い出のピザ。これを再現するのに苦労したそう。

イメージだけで再現してもらった思い出の味

そういえばインスタの投稿見たんですけど、アメリカに遊びに行った時に、ピザ屋さんやりたくなったんですよね?アメリカで何か人生観変わるような出来事でもあったんですか?

山ちゃん:そうそう。ラジオの仕事を辞めたあと、ニューヨークに1ヶ月くらい行ってて、その時に一番食べてたのが、チキンオーバーライスとピザ。なぜなら安いから。

あっ、だから今メイシーズでチキンオーバーライスで、次はピザってこと?

山ちゃん:そうそう!だからメイシーズを始めた時も、「思い出の味のチキンオーバーライスを出したい!」と思って。カッシー、一回も食べたことないのに、俺にイメージだけ言われて頑張って作ってんのに、「違うって、もっとジャンキーなんだよ、なんでわかんねえんだよ」とか言われて(笑)。絶対わかる訳ないもん、なんならカッシーはフレンチ専門だったし。

カッシーかわいそうすぎる(笑)強く生きてほしい。でもすごいな、それで最終的に再現できた訳ですもんね。

山ちゃん:いまだにカッシーは再現元のチキンオーバーライス食べたことないから本人は再現できてるかわかんないけどね(笑)。
今回のピザも、元々台湾まぜそばで働いてたメイシーズのスタッフの子に店長任せるんだけど、この子もまた、俺のイメージだけを伝えられてピザ作ってさ、「いや、もっとサクサクしてたし!」とか言われて。元々ピザと全然関係ないのに(笑)

むちゃぶり再び!6年経っても人は変わらないんだな…(笑)。あ、でも、ドゥーキーズとしてオープンするってことは、その味もちゃんと再現できたってことですか?

山ちゃん:そう、理想の味になったよ。俺のイメージだけ伝えてできた思い出の味。

カッシーが頑張って再現したチキンオーバーライスは本当に美味しい!

アメリカの話で驚いたのは、生活費の稼ぎ方ですよ。アメリカの人の名前を、漢字で書いてあげるっていう路上習字パフォーマンスしてたっていうやつ。

山ちゃん:あれはね〜、初めてアメリカ行ったときだから大学生の時かな。当時の俺は、ひとりでアメリカに行った!っていう実績が欲しくて。一人旅でアメリカに行くってかっこいいなあって憧れてたんだけど、ちょうど(ちょうど?)大学も留年して一緒に卒業する友達もいなかったもんだから。じゃあ卒業旅行として、西海岸にひとりで行くか!と思って。そこで車借りて、メキシコまでサブライム聴きながらフリーウェイで走りたくて。

いやもうそれ最高ですやん…ワードだけで最高…

山ちゃん:でしょ?でもその当時、海外旅行どころか一人旅すらもしたことがなかったから、そういうのをよくやってた知り合いに色々聞いてみたの。そしたら、「外国人は漢字が好きな人がめちゃくちゃ多いから、漢字を書いてあげたら喜ばれるしコミュニケーションは取れる」って言われたの。だから俺は筆ペンを持っていって、路上に座って、声かけてくれた人の名前を当て字で漢字にして書いてあげることにしたんよ。そしたらこれが結構喜んでもらえて。だから次ニューヨーク行った時もこれやろうと思って、習字セット持っていって(笑)。で、この経験から、やっぱ日本ぽいものがウケるんだなと思ってさ、百均で扇子とかいっぱい買って持っていってさ、俺も作務衣着て路上で習字書いてあげてたの。特にニューヨークはストリートミュージシャンとか多かったからそれに紛れてね。「日本の書道家です」って言って(笑)。それで生活費はなんとかなったから、夜は飲みにいって、ピザ食べてたね。

アメリカ生活は自給自足。書道家時代の山ちゃん

はえ〜なんとかなるもんなんですね〜!その頃にピザに出会ってたってことは、メイシーズオープンした時には既に、2店舗目はピザ屋っていう構想はあったってことですか?

山ちゃん:あったあった。アメリカのピザって、1枚じゃなくて切って売るんだよね。だから、焼きたてじゃないんだよ。一回焼いたのを、注文が入ったらもう一回温めて出すみたいなのがアメリカンスタイルのピザなんよ。正直、イタリアのピザに比べたら邪道なんだけど、効率的というか、アメリカっぽいというか。だからまあ、二回焼く訳だから、カリッカリになるんだよね。それがちょっとお菓子っぽくサクサクしてていいんだよね。イタリアのモチモチの生地とはまた違う味わいになるのよ。

もう完全に僕が好きなやつですねそれは。

山ちゃん:こういうスタイル、当時日本にはなかったのよ。だけどここ5年くらいかな。東京とか、日本でも少しづつアメリカンスタイルのピザ屋が出てきて。メイシーズの時にやってたら一番だったはずなんだけど、チキンオーバーライスにしちゃったから。アイデアだけなら俺が一番最初だったはず!

ほんまですかあ???(笑) まあでも相当早くから温めてたのは間違いないですもんね、ピザだけに。
アメリカのピザはパルプフィクションとミュータントタートルズでバッチリイメージできてるつもりです。

山ちゃん:そうそうあんな感じよ、サラミが乗っててね。今だとテイクアウトも注目されてるし、路面店で、でかい道路に面してて、サクッとテイクアウトして、ベンチに座って食べるみたいな。ストリートグルメ感覚で食べて欲しいなと思って。だから今回のお店の立地も若宮大通りっていう、スケートパークがあったりするところだから、絶対若宮大通り沿いがいいなと思ってたんよね。だから、その通り沿いの物件が開くのをずっと待ってたのよ(笑)

大阪も、ぜひアメ村で出して欲しいなあ、三角公園前とかめちゃくちゃ売れそう…

3店舗目もすでに案がある。これからの山ちゃん

めちゃくちゃ気が早い質問なんですが、もし3店舗を出店するとしたらなにやりたいとか考えてたりします?

山ちゃん:今考えてるのは、逆輸入的な街中華かな。中華なんだけど、アメリカのチャイナタウンにある中華。

もうすでに考えてることに驚きました。逆輸入中華ですか。

山ちゃん:ちょっと認識がずれてる中華って感じかな。

えーっと、僕がハワイで食べた訳分からんラーメン屋みたいなことかな…

山ちゃん:そうそうそんな感じ!

そんな感じなん!?

山ちゃん:どんな食べ物でも、アメリカフィルターを通すとなんでもジャンクっぽくなるのよ。寿司とかでもそうじゃん。カリフォルニアロールとか日本の常識ではまず存在しない食べ物だっただろうし。中華でもそうだよ、中華って言ってるのにやたらとフォーばっか使ってる料理とかさ(笑)、ちょっと間違ったアジアの認識みたいなね。

じゃあまたそのヘンテコな中華を、山ちゃんのイメージだけで再現させられるスタッフさんが出てくる訳ですね(笑)

山ちゃん:誰かが無理くりやらされることになるな、絶対誰もやったことないから(笑)。あ、これからの話で言えば、今度の9月に晴れて法人化することになったんよ。

まじですか!おめでとうございます!社名聞いてもいいですか?

山ちゃん:Mountain Records。

山ちゃんレコーズやん!!!(メイシーズ入り口にある、山ちゃんのお気に入りのCDがたくさん詰まったボックス、それが通称山ちゃんレコーズ)

山ちゃん:いずれ音楽にも絡めたいなと思って。バンドやってもいいかな、即レーベル契約みたいな(笑)
まあでも結局、今一緒にやってるメンバーって、元々BIRTHで知り合ったメンツが多いのよ、お客さんもいるし。だから、みんな音楽好きなんだよね。自分もラジオ関係で働いてたってのもあるし、だから音楽と繋げたら面白いかなと思って。

僕が路頭に迷ったら絶対拾ってください!

山ちゃん:変な中華作る?


 6月19日にオープンしたDookies PIZZAはやっぱり好評で、私のタイムラインにも、”アメリカンスタイル”なピザがいくつも流れてくる。
 オープンを心待ちにしていたのに、まだ食べられていない自分が嫌になってしまうが、名古屋に行く際はいの一番に向かおうと思う。そしてそれをかじりながら、メイシーズに向かうのだ。
 読んでいただいたみなさんも、名古屋へ遊びに行く機会があればぜひチェックしてみてほしい。

インタビュー中、隣の席に座っていた女の子二人組が、ずっと甘酢っぱすぎる恋の悩みを語っていて、我々もその行く末がどうにも気になってしまい、途中、どうにもインタビューどころじゃなかったね、と帰り道に笑った。ふたりとも幸せになってくれ。そしてDookies PIZZAが大繁盛しますように!山ちゃんまた朝まで遊んでください!



店舗情報

City Dining Macy’s
愛知県名古屋市中区大須4丁目3−40
Instagram:@ciyudiningmacys

Dookie’s Pizza
愛知県名古屋市中区大須4丁目1-12
Instagram:@dookiespizza

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じゅんぺい丸

ミナミを中心に四方八方で飲み散らかすいなせな男。しばしば長文のブログを書くが、生きていく上でまったく役に立たない事しか書かれていないことで有名。酒の隙を見てDJもしています。

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