アメリカ村に立つ人型街路灯の歴史が塗り変わる。「アートで街にエナジーを!」を合言葉に、5人のアーティストたちが挑んだプロジェクト『Red Bull Reignition』に密着。
昔からずっといた場所に自分の作品があるのは、なんか不思議な感じ。一発目のステッカーは、誰が貼るんかなって思ってます(笑)| KICHI

『Red Bull Reignition』は街路灯という公共物にアートを描くプロジェクトですが、どんな想いで参加されましたか?
グラフィティの大先輩たちをはじめ、錚々たる方々が作品を描いてきたプロジェクトなので、自分もそこに参加できることはとても嬉しかったですね。これまでにミューラルは数多く描いてきましたが、公共物として残るものは初めて。「あー、自分の作品がこうやって残っていくか」って、感慨深さもありました。
確かに、シーンを創ってきたグラフィティライターの方々の作品もかなり多いですもんね。そういった方々の姿を見て、KICHIさんもグラフィティを始めた感じですか?
そうですね。アメ村で遊ぶようになり、いろんなグラフィティを見るうちに「やってみよ!」って感じで、地元のツレたちとノリで始めたのがきっかけかなと。そこから紆余曲折を経て、結局今も進行中です。

KICHIさんのグラフィティ人生はアメリカ村が出発点なんですね!ここ数年で作品の露出も一気に増えたような印象があるんですが、何かきっかけが?
まぁ単純に言えば、4年前に仕事を辞めたんですよ。それまでは塗装職人をしながら制作してたんですが、アーティスト活動に一本化したのが要因かもしれません。
アーティスト活動に振り切ったのには、何か理由があるんですが?
とりあえず描くことが好きだから、やってみよかなと。「果たして、お金になるんかなー」と思いながら始めてみて、今に至ります(笑)
グラフィティへの想いと、KICHIさんらしいノリが共存してますね。なんと言うか、堅苦しくないそのスタイルが、作品にも表れてるなと思うんですが、今回はどんなテーマで制作されたんですか?
これと言ったテーマは決めてませんでした。ただ、現物をチェックしに来たら、街路灯の下の部分がステッカーでやばいことになってたので、完成後も貼られることを前提にしたデザインにしたんです。だから、一発目は誰が貼るんかなって思ってます(笑)

そこはもう受け入れてるんですね(笑)。そんな下の部分とは違って、真ん中や上部はKICHIさんのテイストが出てるなと。
オールドスクールのバブルみたいなものですが、繋げていくと煙にも雲にも見える。いい感じに伸びてる木々の緑と街の雰囲気とマッチするように描きました。作品自体はそんなに難しいことはしてないんですが、図面上はめちゃくちゃ細かくなってたので、キレイにラッピングしてくれた職人さんには感謝ですね。


すごくキレイに貼り合わせられてるので、職人さんたちもだいぶ苦労したと思います(笑)。背中の部分に描かれた、KICHIさんのキャラである3つ目のMOGOもめちゃいいですね。あえて背中に描いたのにはどんな意図が?
三角公園にたむろしてる人たちに向けて、背中の部分に描きました。隙間に入れ込めればと思ってたので。

なるほどー。思い出と作品のポイントがクロスオーバーですね!実際に完成した作品を見て感じることは?
昔から見てた場所に自分の作品があるのは、なんか不思議な感じですね。改めて見ると、めちゃヤバい場所にあるなって思います。
これから三角公園で遊んだり集まったりするキッズたちは、KICHIさんの作品が必ず目に飛び込んでくるでしょうね。公共物に描くのは今回が初めてとのことでしたが、今後はどんな活動をしていきたいと考えてるんでしょうか?
今回の『Red Bull Reignition』もそうですし、面白ければなんでもしたいですね。個人的には、とりあえずいろんな場所に描けたらアツいので。それが自分の中にある創作の原点かなと思います。

真辺 良