「夢も希望もないスノードーム」を作るAto1snowさんが小さなドームに閉じ込めるのは、見てはいけない裏側の世界。
万人受けは絶対にしないけど、誰かに引っ掛かって、面白いって思ってもらえればいいかな。

最初は自分のために作っておられたんですよね?
そうです。もともと売るつもりはなくて、自分が好きで作ってるだけだったので。でも、<日本極東貿易>の竹内さんにスノードームを見せたら、「これはもっと外に出していくべきや」って背中を押してもらって。
以前<日本極東貿易>も取材させていただきましたが、竹内さんがきっかけだったんですね!
そうなんです。SNSも始めたほうがいいと言われて、言われるがままにインスタを始めて。インスタにあげるようになって、わりとすぐに関西のアートギャラリーの人から声を掛けてもらって、ポップアップをするようになりました。そこからいろんなご縁が広がる中でアシタノシカクさんとも出会って、『アシタノホラー』の立ち上げのときに声を掛けてもらいました。

『祝祭の呪物展』ではおなじみですし、今日の『モののケ ART CIRCUS』でも、人だかりができてましたね。
場所はけっこう選ぶんですよ。きれいなものを求めて来るお客さんには、全然ウケないんです。人形の首が入っててまばたきする作品も、そういう場所だと怖いとか気持ち悪いって言われます。でも、『モののケ ART CIRCUS』に来た人はもれなく、可愛いって言ってくれますね。
場所によって反応に差があるんですね。でもスノードームって、昔は観光地とかクリスマスのイメージでしたけど、最近はすごく人気が高まってきてる気がします。そのあたりはどう感じますか?
作り始めたときは、雑貨じゃなくて、アートとして認めてもらいたいみたいなのがあって。クリスマスが終わったらしまうんじゃなくて、一年中置いておけるものを作ろうって思ってたんです。それが今は実際に一年中置けるものが世の中に出てきたから、ちょっと時代と合ってきた感じで。だから、もっと広がってほしいなと思います。

ご自身では今もコレクションされてるんですか?
自宅には400弱くらいあるんですけど、これ以上増やすなと家族に言われて。昔は見境なく買ってましたけど、今は古いのしか買わなくなりました。海外製の広告用のものだったり、日本だったら戦前の貝殻とガラスで作られたものだったり。ただ、古くなると中の水がなくなったり振ると真っ黒になったり、かわいくはないんですけど(笑)
スノードームの歴史って意外と古いんですね。
100年以上の歴史があると思います。ペーパーウェイトが始まりで、それが1898年のパリ万博のお土産として世界中に広まって。アメリカに渡って、チープなプラスチック製ができて誰でも買えるようになったそうです。
そんなに歴史があるとは知りませんでした。ご自身のコレクションの中で、お気に入りのスノードームはどんなものですか?
プレゼントやお土産でいただいたものは大事にしてますね。でも最初に大金を出して買ったのは、ディズニーのヴィランズのスノードームです。ディズニーの悪者だけが周りを囲んでいて、それを6万円くらいで買ったんですよ。あれがいちばん高い買い物でしたね。

やっぱりそこでも悪者なんですね!ちなみに、屋号はどうやって決められたんですか?
屋号は、子どもにちなんだものを少しアレンジしてつけたんです。スノードームを作り始めた頃は子どもも小さかったので、作ることに没頭しすぎて子どものことをおろそかにしないように、戒めでつけた名前です。
お子さんは、お母さんがダークなスノードームを作っていることについて、何か言ったりします?
小さい頃は隠してましたね、エッチなやつとかは。学校に行ってる間に作って、帰ってくる時間になったら隠す、みたいな。昔はいちばんのファンやでって言ってくれてたけど、今は大きくなったから全然言ってくれないですね。失笑しながら、またそんなん作って…みたいな感じです。
もっと大人になったら、わかってくれるかもしれないですね。最後に、今後挑戦したいことや、ステップアップしたいことがあれば教えてください。
なんかね、一時はあったんですけど、なくなりました。前はけっこう海外でも評価されたいとか、もっと認知されたいみたいなのがあったんですけど、今は全然。作りたいときに作って、出したいときに出せればもう。万人受けは絶対にしないけど、誰かに引っ掛かって、面白いって思ってもらえればいいかな。

そういうふうに考え方が変わったのって、何かきっかけがあってですか?
うーん、老いですかね、老眼とか(笑)。手も目もいつまで使えるかわからないから、作れる間は作れれば、それでもう幸せかなって思います。
<Ato1snowさんのお気に入りのスポット>
法善寺横丁(大阪市中央区難波1丁目)
法善寺のお香の香り込みで好きな場所。濡れてる法善寺が特に好きで、雨の日や雨上がりには用事がなくてもわざわざ通りに行くこともあります。学生の頃、あの中のお店でバイトしていました。梅田の紀伊國屋横の地蔵横丁も法善寺とよく似た香りがするので、茶屋町方面に行く時は地蔵横丁経由で行きます。

Ato1snow(アトワンスノウ)
大分県別府市出身、堺市在住。実家は戦後から約70年続いた玩具店。大学進学を機に大阪へ移り、2013年からスノードーム制作を開始。クリスマスや観光地のモチーフにとどまらず、ある情景を切り取り、前後のストーリーを想像させる作品を手がける。従来のスノードームとは一線を画す作風で、コレクターからアート愛好家まで幅広く支持されている。