「夢も希望もないスノードーム」を作るAto1snowさんが小さなドームに閉じ込めるのは、見てはいけない裏側の世界。
善と悪なら悪に惹かれるし、やさしいと意地悪なら意地悪のほうに興味が湧く。

もともと、こういうちょっと不穏な世界観が好きだったんですか?
好きだったと思います。ホラー映画とかも好きだし。でも最近、子どもの頃の体験が影響してるなって気付いたんですよ。ずっと裏側を見て育ったというか。実家がおもちゃ屋だったから、クリスマスになると父親がサンタクロースの格好をして配達するんですよ。けっこう凝る人なので、ちゃんと衣装にもこだわって、鈴をカランカラン鳴らしながら行くんですけど。それを手伝ってたので、見てるわけです。
お父さんがサンタになる瞬間を。
だから、ちょっと感覚がおかしくて。私のお父さんがサンタクロースなんだって思ってたんです。サンタからプレゼントをもらって喜んでる子どもを見て、どや!って思ってました。
お父さんがサンタクロース!いるとかいないとか、信じるとか信じないとか、そういう次元じゃないんですね。
ないんですよ。小学生ぐらいから店のお手伝いをしてたので、お祭りなんかも、売るほうなんです。「あれ買って!」って駄々こねてる子どもに売りつける子ども(笑)。浴衣なんて着たこともないし、花火大会も音しか聞いたことない。打ち上がってる音は聞こえるんですけど、忙しいから振り返って見ることもできなくて。

一般的な子どもとは違う目線で育ったことが、いまのシニカルな作風につながっているのかもしれませんね。
そうですね。善と悪なら悪に惹かれるし、やさしいと意地悪なら意地悪のほうに興味が湧く。表と裏なら、見えない裏側に惹かれたり、見せたくなったりするところがあります。
なるほど。見えない部分を見せたくなるというお話ですが、作品のモチーフはどのように決めてるんですか?
特にあまりないんです。一時は、お金を払って買っていただくからには、メッセージ性を持たせなければって思ってて。時事的なニュースを私なりに解釈するみたいなことを考えてたんですけど、最近はそういうのがなくなって、作りたいものを作ってます。

その時々の気持ちに合ったものを形にされているんですね。
頭の中にあるものを吐き出したい、みたいな。作り始めて精神が安定してきたんです。ストレスがなくなって。
そうなんですか?
作る前はもっと性格が悪かった気がします。たまたまそういう尖った年頃だったのかもしれないですけど。あの頃の自分はあんまり好きじゃないですね。
尖ってた部分が、いい感じに作品に反映されてると。
だから、私生活で嫌な人に出会った時も「クソ!」って思いながら、その人を作品の中で切ったりできるんです。ちょっとスッキリするので、その分子どもには優しくなれたりもします。
それいいですね。見る人も、自分の嫌いな人に置き換えてスッキリするかもしれない(笑)。惨劇だけどキラキラしているから、罪悪感も少ないですね。
ブラックな会社に勤めてる人は、職場に置いてましたね。あと、会社の応接室に置いて、「これなんですか?」って、商談に入る前のワンクッションにしてるっていう話も聞きました。女友達の結婚祝いに、花嫁が花婿を血まみれにしてる作品を贈った人もいて。裏切ったらこうなるぞみたいなメッセージが込められてるっていう(笑)

結婚祝いのチョイスとしてはなかなかパンチありますね(笑)。ちなみに、綺麗なものはあまり作らないんですか?
自分の心の健康のために作ることはあります。ずっと闇ばかり作っていると、ダークサイドに落ちておかしくなりそうだから、バランスを取るために。たまに可愛いものを作って、ちょっと戻して、もう一回闇に行く、みたいな。

Ato1snow(アトワンスノウ)
大分県別府市出身、堺市在住。実家は戦後から約70年続いた玩具店。大学進学を機に大阪へ移り、2013年からスノードーム制作を開始。クリスマスや観光地のモチーフにとどまらず、ある情景を切り取り、前後のストーリーを想像させる作品を手がける。従来のスノードームとは一線を画す作風で、コレクターからアート愛好家まで幅広く支持されている。