もっとラフにアートを楽しんでほしい。SNSで話題の<耳で聴く美術館>を手がける人気動画クリエイターのAviさんが目指す、やさしさに包まれた世界。


誰もが身近に感じられるカジュアルな切り口からアートのおもしろさを発信。カレーのようにしばらく寝かせることが、客観的な視点でわかりやすく伝えるコツです。

最近は、美術館の展覧会の紹介動画などがよく上がっています。どこかからのお願いがあって作っているものなのでしょうか?

そうですね。美術館の広報さんから、次回の展覧会でぜひ紹介してほしいと連絡をいただいて、タイアップのような形で発信しています。あとは知り合いのアーティストが広めてくれたり、そういうツテも多いです。

それはこの1年半でできた繋がりですか?

六本木の『森美術館』とお仕事をしたことがきっかけです。そこの広報さんが私のSNSをよく見てくれていて、展覧会を紹介する動画の案件をいただいたんです。『森美術館』って世界中から注目されている現代アートの中心で、日本の美術館業界のSNSにおいてもトップクラスなんです。それを機に他の美術館の学芸員さんも知ってくれて、「うちもお願いしたい」というので色々と広がっていきました。

きっかけは『森美術館』なんですね。動画作りのモットーや伝わるよう工夫していることってありますか?

それぞれ媒体によって違いますね。TikTokやインスタの短いリール動画って、パッと見てつまらないと思ったらすぐスクロールされちゃうので、最初の2秒がとても大事で。いかにスクロールされない動画を作るかを心がけています。あとは、美術ってすごくニッチなジャンルだから、気軽に興味を持てるコンテンツの切り口も大事。私のフォロワーは24歳以下が大半なので、なかなかアートに触れる機会がなかった人も多くて。そういう人がいつの間にか見ている動画が、実はアートのコンテンツだったっていうのが理想です。例えば、誰もが知ってる絵についてじっくり話したり、漫画やファッションの元ネタから切り込んだり、デートに行くならここ!みたいなカップルの旅目的のコンテンツを作ったり。馴染みやすいところに落とし込むことで、見てもらいやすいよう工夫しています。

その切り口は、アートがきっかけで思いつくんですか?

アートがきっかけですね。この作品の魅力を伝えたいって思ったら、どうやったら興味を持ってもらえるかを客観視して切り口を見出しています。「こういう美術品で」とか「こんな技法を使ってて」と言うと堅苦しくなっちゃうので、できるだけ専門用語は使っていません。あとはコピーライトと同じで、最初の一文もめちゃくちゃ大切です。

動画に組み込まれている情報は、どこから集めてくるんですか?

書籍が多いですね。書籍で得たエピソードなどを軸に、ネットの情報などを組み込んで構成を組み直しています。書籍が一番裏取りができているので、時間はかかりますがしっかり情報収集します。

図書館に行ったりとか?

めちゃくちゃ行きます。図書館で「めっちゃいい!」という本を見つけて、アマゾンで買うことも多くて。美術書って高額なものが多いから、いい本を激選して買っています。図書館には基本おじいちゃんおばあちゃんしかいないんですが、そこに大きなIKEAのバッグを持って探しに行っています。

どんな方法で動画作りをしてるんですか?

ショート動画を作る時は、まず1分以内に収まるテキストを作成します。恐らく皆さんはそこから絵コンテを描くんですが、私は描けないので一気に撮影を始めて、話に合うイメージを色々のせていくんです。音楽を先につける場合もあって。話の盛り上がりを音楽の盛り上がりと調整しつつ、映像とマッチングするよう作っています。

動画を1本作るのにどれくらい時間がかかるんですか?

めちゃくちゃノっている時は、テキスト作成から編集終了まで2時間くらい。企業案件の場合は、丸1〜2時間くらいかけて最初の構成をしっかり考えて、ある程度作ったら半日くらい寝かせます。そうすると「ここおかしいな」とか「この流れが悪いな」っていうのが見えてくるんです。カレーのように寝かせるのが味に深みを持たせるコツですね。

なるほど。Aviさんは動画作りのほか、YouTubeで<寝落ちラジオ>というコンテンツも発信されてますよね。Aviさんのゆったり落ち着いた声と喋り方が本当に好きで。最初にコニュニケーションが苦手と仰っていましたが、お話も上手なので聞き入ってしまいます。お話される際、何か意識していることってありますか?

できるだけ低い声でゆっくり話すことを心がけています。学生時代に就活をしていた時、めちゃくちゃ行きたい会社があって、5人くらいのグループ面接でガチガチに緊張して、自己紹介の名前を言うところで噛んじゃったんです。結局そこは選考に落ちたんですが、その失態が忘れられなくて。どうしたら緊張しないでお喋りできるか調べまくったんです。

あとは、カウンセラーにも興味があって、社会人向けの養成講座に1年間通いました。そこにはカウンセリングの講義があって、みんなが見てる前で相手と向かい合い、応答やおうむ返しの練習をするんです。最終的には1人40分くらいのセッションを、みんなに見られながらやるっていう。いわば会話の基本を教えてもらう感じです。最近は、アーティストのトークショーをする機会も増えたんですが、すごく会話がしやすくなりました。話をしっかり聞くのも大切みたいです。

YouTubeには、若手のアーティストさんのインタビューコンテンツもありますよね。あればどうやって作っているんですか?

完全に別々で撮っています。本当は実際に会って話を聞きたかったんですが、コロナもあって叶わずで。事前に質問項目を渡して、アンサー動画を撮影してもらっていて。それをサンドするような形で、私のコメントを組み込んで動画を作成しています。

最近はコロナが落ち着いてきたので、実際にアーティストのアトリエにお伺いしてロケを始めました。絵の具があちこちに飛び散っていたり画材が所狭しと並んでいたり、アーティストのアトリエってめちゃくちゃおもしろいんですよ。それを眺めながら、ここにこだわりが……、みたいな話を聞くのがとっても楽しくて。YouTubeのフォロワーは、これから芸大に進みたい、そういう活動をしたいという若い世代が多いので、選ぶ画材の参考にもなるのかなって。<画家のアトリエツアー>というコンテンツなので、よかったら見てみてください。

新しいアーティストさんはどうやって見つけているんですか?

以前は、インスタのストーリーズにインタビューのサンプル動画をアップして、協力いただける方を募っていました。今は、トークショーのお仕事などをいただく機会が多いのでそこでアーティストと仲良くなって、「今度アトリエに遊びに来てください!」って言ってもらえることが多いです。SNSの写真だけだとわからないので、実際に作品を見てお話をする中で、もっと話を聞いてみたいなと思う方にお声がけしています。

アートを知ることは“生きやすさ”に繋がる。今後は世界に目を向けて、アートの未来に繋がるようなコンテンツ作りを続けていきたい。
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Profile

Avi/耳で聴く美術館

大阪府出身、1992年生まれ。「心が震えるアートの話をしよう」をテーマに、TikTokとYouTube、Instagramにて<耳で聴く美術館>を展開。「もっと多くの人にアートを楽しんでもらいたい」と、気軽に興味を持てるライトな情報を中心に、展覧会の情報や若手アーティストのインタビュー動画を発信する。

耳で聴く美術館
TikTok:@mimibi301 / YouTube / note

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住所: 大阪市北区中崎3-2-18
電話: 06-6459-7879
営業時間: 11:00〜18:00
休日: 不定休

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