おもちゃみたいな佇まいにときめきが止まらない!食品サンプルの可能性を切り拓く、クレハフーズさんのもの作り。


マイナーなジャンルだから、自分で模索するしかないのが難しいところ。新しい作品に挑戦するたび壁にぶち当たります。

『100均商品だけで食品サンプルを作ってみた』寺田くれは

2020年に発行したZINE『100均商品だけで食品サンプルを作ってみた』の話もお伺いしたいです。養成スクールに入学する前に作られたんですね。

正確には、スクールの入学前から卒業手前くらいまでかかったかな。食品サンプルについて本格的に学ぶ前に、何かを作って世に出したいなと思っていて。今できること、今しかできないことを、記録的にやってみたらおもしろいんじゃないかなと。100円均一の材料だけという縛りでやってみました。制作時は技術も専門知識もない素人だったけど、思いのほか色んな人に興味を持ってもらえて嬉しかったです。大学とスクール、就活もあったので、その合間で作るのが大変でした。

私はエビフライのクオリティに感動しました。完全に独学というのもすごいなと。

100均って素材的におもしろいと思うものがたくさんあって。例えば、縄跳びがあったら「これラーメンになるやん」とか。そういう日々のひらめきを組み合わせて作りました。

ちなみに自信作はどちらですか?

やっぱりエビフライかなぁ。材料も少なめだし、衣がいい感じでおいしそう。

食品サンプルを作る難しさってどういうところなんでしょうか?

うーん、強いて言うと全部ですかね。スクールで習ったとはいえ、1年にギュッとカリキュラムが凝縮されていて、やっぱり10年かけて職人になる方は、たくさん経験ができるぶん強いなと思います。私たちはとりあえず教えてもらって手を動かして、やり方を必死に吸収するだけだったから、経験が圧倒的に足りなくて。作り方はわかっても、形状によって焼く時間の予想がつかないことも多くて。型取りが難しかったり思う色が出なかったり、新しい作品を作るたび絶対壁にぶち当たります。レジンとか樹脂粘土とか、メジャーなものならYouTubeで調べられるんですけど、食品サンプルってそもそも作っている人が少なくて。マニュアルや教科書もないので、教えてもらった知識や技術を活用していくしかないんです。先生に作り方を聞いても「わからない」と言われることもありましたし、自分で考えてやっていくしかないというのが難しいと思います。

確かに、特殊なジャンルですもんね。素材は塩化ビニール樹脂ということですが、大体何分くらい焼いているんですか?

薄いものだと1~2分で、ゴロっと分厚いおでんの大根なんかを作る時は、10~15分くらいかけてじっくり熱を通します。私が使っている塩化ビニールの素材は、最初は不透明なんですが、しっかり熱を通すことですっきりクリアになるんです。時間が足りないと真ん中がぼやっと濁っちゃうから、中が透けて見えるくらい透明にしようと思うと結構長くかかっちゃいます。

型は本物の食品から取っているんですか?

基本はシリコンを使って本物から取っています。もちろん複雑な形の方が難しいけど、意外と簡単にできるものもあるんですよ。手元にあるのだとスパゲッティとか。

え、それは意外です!

これは自己流で作っていて。普段通りに作ると、焼く前の樹脂はドロっと流れちゃうんですが、硬化作用のある素材を混ぜ込んで、チューブ状にしてくるくる絞り出して形を成形し焼いています。全部違う形になっちゃいますが、型がいらないのでだいぶ手間は省けます。私はこうしてるけど、飲食店のディスプレイに並んでいる食品サンプルには、塩化ビニールでできた麺の既製品を使うことが多いんですよ。チューブとかを作っている会社が、同じ要領で食品サンプル用に生産しているみたいです。 ―知らなかったです。食品サンプルの世界って奥深いですね。

なんでここにシュウマイが?!日常に不思議な違和感を生むことができるのが、食品サンプルの魅力です。
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Profile

クレハフーズ

1998年生まれ。高校生時代に食品サンプルの世界に憧れを抱き、大学に通いながら「食品サンプル制作技術者養成スクール」で専門知識を身につける。現在は会社勤めをしつつ、オリジナルの作品を展開する食品サンプルアーティストとして様々なポップアップを開催。2020年に発行したZINE『100均商品だけで食品サンプルを作ってみた』も好評。

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