カメラマンで、現代美術家。両極端にも思える「商業」と「芸術」の間を行き来する、木村華子さんの奥深きグレーゾーン。
ネオン管をつけた3作目で受賞したことで、「写真家じゃないですよ」ってちゃんと言ったほうがスッと見てもらえるなと思って。
「UNKNOWN ASIA 2018」ではグランプリだけでなく、審査員賞やレビュアー賞など多数受賞されましたが、「UNKNOWN ASIA 2018」の前と後で変わったことはありました?
関西での知名度はすごく上がりました。カメラマンとして知っていただいていた人に、こういう作品をコツコツ作っていたことが一気に広まって。それと、写真のコンテストではないアートフェアで賞を取ったことで、現代美術家としてやっていこうと思うようになりました。それまでは写真家って言われても否定はしてなかったんですけど。でもこの作品でネオンをつけた時に、これはもう写真作品じゃないし、そもそも以前の作品も写真を目的にしているわけではないし、全然違うなと思って。それなら、写真家じゃないですよっていうのを積極的に言ったほうが見る人にも親切だなと思って、そこからちょっとずつ現代美術家としての露出が増えていきました。
受賞された作品はシンプルなのに、青いネオン管がすごく印象的でした。
ああ、ありがとうございます。ここらへんで、キャッチーな作品を作ろうと思ったんです。インディーズの曲ばっかり作ってたから、ちょっとメジャーっぽい曲を作ろうかなみたいな。パッと見て印象に残るような作品を作ろうと思ったので、そうなるように作りました。ひとつのシリーズを出すのに3年ぐらいかかるんですけど、あれはなにも書いてない看板と青いネオンがすごくフィットしたので、今ならコンペに出したらいろんな人の印象に残るかなって。
あの作品も3年ぐらい前から準備されてたんですね。
自分の頭の中のクリップボードに気になる事項が貼ってあって、一貫しているテーマをどう表現するかのバリエーションなんですけど、何も書いてない看板だったり、微妙に顔の違うぬいぐるみだったり、ジェフ・クーンズのパクリの貯金箱だったり、いくつかフックがあって。その中から今回はこれでいけそう……みたいなのがあるんです。
気になることの中から、時代の流れとかタイミングで、発表していくっていう感じですか?
自分が考えてることって、自分が今の時代に生きているからなので、時代性みたいなのは勝手に汲んでしまいますね。個人と公共は切り離せない。それもグレーゾーンなんですけど。平々凡々とした生まれ育ちですし、何かしら表現してやるぞとか、世間にこういうメッセージを届けたいとかはないんですけど。
世に問うてやりたい!みたいなことはなく?
問いであり答えでありたいというか。自分がいなくなった後も、作品の効果が長く続くようにしたいとは思ってます。そもそも現代美術が好きなんで、その末端に自分がいるっていうのも面白いので、おこがましいですけど、現代美術からもらったものを流れの中に還元していきたいという気持ちもあります。現代美術からガンガン喰らってるんで、自分も一発ぐらい返したいっていう。もらってきた問いを、自分のアンサーとして返すっていう感じですね。
木村 華子
京都府出身、大阪市在住。同志社大学文学部美学芸術学科卒業。関西を拠点に商業カメラマンとして雑誌や広告で活躍すると同時に、現代美術家としてコラージュ、インスタレーション、立体作品などを手掛ける。「UNKNOWN ASIA 2018」では、写真にネオンライトを組み合わせ、青い光が点灯する作品を発表。グランプリをはじめ、レビュアー賞5部門、審査員賞4部門を受賞する。
木村 華子(作品)