カメラマンで、現代美術家。両極端にも思える「商業」と「芸術」の間を行き来する、木村華子さんの奥深きグレーゾーン。

関西を中心に活躍するフリーランスのカメラマンであり、2018年の「UNKNOWN ASIA」でグランプリを受賞した現代美術家でもある木村華子さん。クライアントの依頼に応えるカメラマンと、自分の内なるものを表現する美術家、いわば「商業」と「芸術」という相反する立ち位置で活動されています。今回は、カメラマンという仕事のこと、美術家としての表現活動のこと、そこに向き合うスタンスなどをインタビュー。気鋭のアーティストの頭の中と胸の内、いろいろ聞かせていただきました。その中には、難解な印象がある現代アートの楽しみ方、味わい方のヒントも!「現代アートとはなんぞや?」と言う疑問も、木村さんの言葉でほどけてきます。

会社勤めは向いてないし将来どうしよう……ってぼんやり考えてたら、夜中に急に、「カメラマンいけるんちゃう!?」ってひらめいたんですよ。

まず、カメラマンとしての木村さんについてお聞きします。『Meets Regional』など数々の雑誌やWEB媒体で活躍されていますが、カメラマンになろうと思ったきっかけを教えてください。

大学生の時に軽音楽部で、音楽をやってたんです。かなり本気の部活で、大会にも出場したり、中にはプロになる人もいるぐらい。私はアルトサックスを吹いていたんですが、2回生ぐらいで、ここまでがんばったらもういいかなって燃え尽きてしまって。しばらく抜け殻みたいにぼーっとなってたんですけど、その頃まわりはインターンシップとか行きはじめて、将来どうする?みたいな感じになりつつあったんです。で、私も燃え尽きながらも自己分析をしてみたら、うすうす感じてはいたんですけど、会社勤めは向いてないなって。

燃え尽きてはいるけど、ちゃんと自己分析をするんですね。

根が真面目なんですよ。でもOLも向いてないし就活どうしようってぼんやり考えているときに、高校時代にコンデジで写真を撮ってたことを思い出して、また写真を撮るようになったんです。その写真を夜中にPCで編集してたら急に、あれ、写真めっちゃ楽しいし、今ってカメラもデジタルやから押したら撮れるし、世の中に写真ってあふれてるから、カメラマンになったらいけるんちゃう?って思ったんですよ。

夜中に突然「カメラマンなったらいいやん!」って?

なぜか、いけるのでは!?という気持ちが湧いてきて。写真好きやし、カメラマンいいやん!って。でもなる方法もわからないし、とりあえず就職して働いてお金を貯めて、東京の専門学校にでも行こうかと思ったんです。就活するつもりでスーツも買って、リクナビとかにも登録しようとしたんですけど、チェックボックスが多すぎてしんどくて。やっぱりあかん、この時点でしんどい人間が試験や面接に受かるわけがないと思って、もう就活はやめて大学在学中に専門学校に行って、そのままカメラマンになりました。

就活が無理だから、カメラマンに(笑)。意外すぎる進路です。

就活もできないし、仕事も毎日同じ時間に起きて同じ場所に行くのも無理そうだし。まず興味のないことが全然できないんです。だから、職業の選択のひとつとして、カメラマンならこんな私でも楽しく続けていけるんじゃないか、無理せずお金を稼げるんじゃないかって。

卒業後の進路を考えた結果、自分に向いている職業はカメラマンだったと。

そうです。それまで一眼レフも触ったことなかったんですけどね(笑)。でも専門学校の在学中からカメラのバイトを始めて、わりとすぐお金がもらえたんですよ。あ、やっぱりこれは仕事にできるなって。卒業後もブライダルのカメラマンやロケのアシスタント、スタジオカメラマンなどのバイトをしながらフリーでも仕事を受けて、26歳で完全にフリーランスになりました。

大学では美学芸術学科に在籍。OLにはなれないし、学芸員も難しいし……と考えた結果、「消去法的に」カメラマンという職業を選択。

独立してフリーランスになることに不安はなかったですか?

そんな「今日から独立します!」みたいな感じじゃなくて、半分バイト、半分フリーみたいな状態から、ぬる~っとフリーになったんですよ。フリーの仕事が忙しくなったから、そっちに軸足を寄せただけみたいな。だから、不安もなくはなかったですけど、自分的にはベストな状況になりました。自分が無理したりがんばらなくていいように一生懸命がんばってきたので、あ、フリーになれた、ラッキー!みたいな(笑)。

子供の頃からの憧れを叶えた!とか、そういう感じじゃないんですね。

あ、でもたまたま小学校の卒業文集を読み返したら、将来の夢に「絵描きかデザイナーか写真家になって世界一周する!」って書いてたんです。昔から現実的な子供だったので、絵を描くのは好きだから絵描きになりたいけど、でもそれでは食べて行けないからデザイナー、あともうひとつぐらい手に職つけて写真家……みたいなことを考えたんでしょうね。実際、親のフィルムカメラを借りて撮るのにハマった時期もあったので。そして最後に子供らしさを付け加えようと、思ってもない世界一周をいれて、夢っぽいニュアンスを足したんだと思います。

まさか、その夢が叶ってしまうなんて(笑)。

そうなんですよ。でも今は、自分を写真家とは思ってないんですけど。

作品は、セーブポイントみたいなもの。ここからここまで考えたことを、いったん外に出して、自分や人が見れる形にするんです。
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Profile

木村 華子

京都府出身、大阪市在住。同志社大学文学部美学芸術学科卒業。関西を拠点に商業カメラマンとして雑誌や広告で活躍すると同時に、現代美術家としてコラージュ、インスタレーション、立体作品などを手掛ける。「UNKNOWN ASIA 2018」では、写真にネオンライトを組み合わせ、青い光が点灯する作品を発表。グランプリをはじめ、レビュアー賞5部門、審査員賞4部門を受賞する。

https://hanako-photo.sakura.ne.jp

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