やりたいことは、みんなで!新しい時代のコミュニティスペース『chignitta』を立ち上げた谷口さんに、今ここで生まれてること、これからの動きについてたっぷり話してもらいました。
『chignitta』が発信するメッセージの一つに、「君の自己実現をみんなでやろう」というのがあるんです。この場所でみんなと助け合いながら何かを実現していくこともそうなんだけど、アーティストに会わせたい人を呼んだりする日々のアクションも、自己実現の一つだなと思ってます。
リアルとオンラインでアーティストが自由にコミュニケートできる場として誕生した『chignitta』ですが、まずはこの場所『chignitta space』について聞かせてください。2021年6月のオープン以来、すごいペースで個展が開催されてますが、キュレーションの方針などはあるんですか?
オープンして4ヶ月で6回(2021年10月20日時点)の個展を開催してるので、自分たちでもすごいペースだなと思ってます(笑)。キュレーションについては僕と笹貫がこれまで付き合いのある人、今おもしろいと思う人、みんなに見てもらいたい人、僕らが会いたい人というのが軸。今開催中(2021年10月24日まで)の山口一郎さんは笹貫がずっと憧れてた方で、SNSでアプローチして実現しました。
これまでのつながりはもちろん、今の感覚や想いをこの場所でカタチにしてるんですね。
『chignitta』が発信するメッセージの一つに、「君の自己実現をみんなでやろう」というのがあるんです。この場所でみんなと助け合いながら何かを実現していくこともそうなんだけど、アーティストに会わせたい人を呼んだり、僕らが会いたい人に声をかけたり、そんな日々のアクションも自己実現の一つだなと思ってます。
ここで個展を開催するアーティストさんはもちろん、谷口さん笹貫さんはじめみんなが自己実現できる日々があるって、めちゃ楽しそう。それに、この場に流れる空気もすごく前向きなものだと感じます。
目の前が公園というロケーションにも救われてますけどね。でも、紹介するアーティストの何がどう良いのか、どこを見てもらいたいのかを、笹貫と一緒にしっかりと発信し、伝えること。それがまず基本にあります。個展開催までのプロセスや僕らが今実践してることもオンラインで共有してるし、この場はいつだってオープンなんですよ。前回開催した池口友理の「2021年スーパーの旅」ではスーパーマーケットのBGMをMIXして流してみたり、それぞれの個展の魅力が増す手伝いがしたい。どうすれば作品が生きるか、そこを考えながら創作するのがめちゃくちゃ楽しくてね。これも小さな自己実現やと思ってます。
フライヤーは谷口さんのデザインなんですね!
もちろん外部のデザイナーにお願いしてもいいけど、そういう問題でもないなと。分かりやすく言えば、好きなことは何でも自分でやりたいタイプなんですよ(笑)。
アーティストさんにとっては、作品以外の部分で谷口さんや笹貫さんのように共に考え、共に創ってくれる存在がいるのはとても心強いと思います。ギャラリースペースとは逆の壁側には、アートやデザイン関連の本がギッシリ並んでますが、こちらは全て谷口さんのコレクションだと伺いました。
自分だけのものにしてコレクションしておくのももったいないですからね。生前贈与の意味も込めて、販売もしてます。
まさかの生前贈与ですか(笑)
いろんな人が興味を持って見てくれて、買ってくれるんですよ。京町堀界隈はデザイン関係の方が多く、「それいきますか!」みたいな選び方をする人もいるし、見た時のヒラメキを大切にして買ってくれる人もいる。僕自身も、誰がどんな理由でその本を手にするのかを知れるのがすごく楽しいなと。僕がいない時に本が売れると「誰が買ったん?」「どんな感じやった?」と、気になってスタッフに聞いてしまうほど。本ソムリエもするので、興味のあるものがあればどんどん聞いてほしいと思ってます。ちなみに本の購入については、これから学割を導入する予定なんです。それで然るべき人の手に渡り、そこからまた新たな出会いやつながりが生まれたらいいなって。
自身のコレクションだからこそ、どんな人がどんな理由で買ったかを知れるのは楽しいですよね。学割も学生さんにとっては、すごいラッキーなことだし、やっぱり谷口さん自身がこの現場を愛してることが随所に表れてるなと。
やっぱりね、現場が大好き。ここにいると、おもしろい人たちがたくさん集まって来てくれるんです。先日はたまたま個展を見に来てくれた人と話してたら、絵を描いてる人でね。見せてもらったその絵が、これまたすごい良かった。和歌山から毎週来てくれる人もいて、その人はギャラリーをしてたりとか。とにかくこの場所が、いろんな人との出会いの場になってますね。現場が大好きってのもあるけど、そんな理由があるからこの場所にいたいんですよ。
思いがけない出会いって、やっぱりリアルの醍醐味ですよね。
ただ、ずっとここにいてるから、逆に僕たちが会いに行くことがなかなかできないのが悩み。和歌山でギャラリーをしてる人にも会いに行きたいし、奈良でギャラリーを立ち上げ、アートで街を豊かにしようと奔走してるコミュニティメンバーの応援にも行きたい。行かなあかんところが、本当にいっぱいあるんですよ。
谷口 純弘
1963年生まれ。京都府出身。デザイン会社のコピーライターを経て、FM802に入社。1990年より若手アーティスト発掘プロジェクト『digmeout』のプロデューサーとして、数々の企業プロモーションやアートブックの発行、国内外での展覧会を手がけるなど「街」と「アート」と「人」をつなぎながら多岐に渡って活動。2015年にはプロデューサーとして『UNKNOWN ASIA』を発足してアジア各国のアーティストと日本をつなぎ、各方面で注目される国際アートフェアへと育て上げる。2021年6月にFM802を退社し、クリエイティブコーディネイターの笹貫淳子と『chignitta』を設立。アーティストやさまざまな表現者たちの自己実現のために奔走している。