再降臨した「心斎橋PARCO」が、ミナミにアート&カルチャーの火を点ける! その① 

2020年11月20日は、心斎橋にPARCOが帰って来る日! PARCO不在の9年間、ミナミはなんとなく大人しかった気がします。「アート/カルチャー」をテーマのひとつに掲げる新生『心斎橋PARCO』は、そんな大阪にあって、文化の発信基地としての機能も期待される存在。その記念すべきオープニングを飾る3つの展覧会を、取材してきました。

PARCOの復活を高らかに告げる、7メートルのSEXY ROBOT。

14階のPARCOイベントホールで開催される「JP POP UNDERGROUND」は、渋谷にある現代アートギャラリー「NANZUKA」によるキュレーションで、昨年NYとLAにあるJeffery Deitchギャラリーを巡回した「TOKYO POP UNDERGROUND」および、7月にPARCO MUSEUM TOKYOで開催された「GLOBAL POP UNDERGROUND」のコンセプトを踏襲した一連の企画展の最終章。この展覧会を担当する髙橋賢太郎さんに、お話を伺いました。

まず、この企画が誕生したきっかけを教えてください。

昨年渋谷PARCOがリニューアルオープンして、国内外に向けた情報発信を強化していきたい、PARCOとして面白いできごとをクリエイションしていきたいっていうのがまずあって。そこからあらためて、PARCO MUSEUM TOKYOというPARCOがずっとやってきたアートスペースが扱うテーマとしても、本当に世界に通じるようなアートの企画展にちゃんと取り組みたいと思ったんです。
そこで、渋谷に現代アートのギャラリーをかまえ、渋谷PARCOにも「2G」をオープンされた「NANZUKA」の代表・南塚真史さんと一緒に、世界で活躍するアーティストを集めたグループ展をやろうという話になりました。NANZUKAさんが海外で行った「TOKYO POP UNDERGROUND」を、2020年オリンピックイヤーの東京に合わせて日本人だけでなく海外アーティストの作品も加えて再編集し、「GLOBAL POP UNDERGROUND」として渋谷PARCOで開催したのが7月。そして、大阪ならではの編集で、心斎橋PARCOのオープンに「JP POP UNDERGROUND」を持ってきました。

POP UNDERGROUNDは、LA、NY、東京を経て、大阪へ。今回は日本人アーティストにフィーチャー

心斎橋ならではの編集というのは、どんなところですか?

心斎橋PARCOのオープニングとして、「これがPARCOだよ」っていうのを伝えられるものにしたいと思いました。久しぶりに帰ってきた、ご挨拶というか。9年の月日が流れているので、PARCOを知らない人もいるわけですよね。だから、知っている世代の人にも知らない世代の人にも、PARCOというものをきちんとメッセージしようと。そのあたりの想い、PARCOの大阪での情報発信や文化発信への想いをNANZUKAさんにご理解いただいて、キュレーションや作家のセレクトをしていただきました。

スケートカルチャーから誕生したHaroshiによる、スケートデッキの廃材を使った彫刻作品。

よりPARCOらしさが伝わる展示、ということですね。

そうですね。本物のアートや、極上な空間体験を杮落しとして用意したかったんです。世界巡回でも東京でもできなかった、空間体験を伴う展覧会の形を、最終章として大阪で実現させたいと。NANZUKAさんと協議を重ねて、日本人アーティストだけに特化した、東京にも展示していない作品を大阪のために準備しました。会場の空間は、出展アーティストでもあるYOSHIROTTENさん率いる「YAR(ヤール)」にお願いして、ディストピアをテーマにデザインしていただきました。

ディストピアというテーマはなんとなく、コロナ禍の今ともつながっている気がします。

企画当初はそういう意図はなくて、アンダーグラウンドな作品を見せる手法に加え、NANZUKAさんとYOSHIROTTENさんが本当に実現したかった表現と聞いていたので、企画コンセプトを展覧会として魅せるのに適した形だと思い決めたのですが、期せずして現実とリンクしましたね。コロナによって困難や空虚感を一人ひとりが現在進行形で味わっている、そんな状況のなかだから、見る人それぞれが現実世界と空間体験をリンクさせるんじゃないかと思います。

NANZUKAさんが大阪の展示のためにセレクトした、大平龍一の作品。

髙橋さん的に、「ここを見てほしい!」というポイントは?

空間ごと体感してほしいですね。実は、床も壁も天井も全てこの空間を作る為の演出として今回の為だけに作ってるんです。そんなはずないって気付いてない人もいますが(笑)。アート作品は壁や台座に飾られたものを鑑賞するのが一般的ですが、廃墟的な空間の中に本物のアートがあるという、ここでしか味わえない見せ方をしているところが醍醐味かなと。空間そのものがインスタレーションなので、ディストピア化した世界で、オーパーツ的にきらめくものを発掘するように作品を楽しんでもらえたら、と思います。
あとは、空山基さんの「SEXY ROBOT」シリーズ。14階の展覧会場内の展示もめちゃくちゃかっこいいですし、12階の「滝の広場」に展示している全長7メートルの巨大なSEXY ROBOTはエスカレーターや上からも眺められて必見です。

12階と14階に展示されたSEXY ROBOT。吹き抜け空間にそびえるその姿は、神々しさすら感じるほど。

まさに、「これがPARCO」を示す今回の展覧会のシンボルですね。

全長7メートルのSEXY ROBOTは、渋谷でパブリックアートとして屋外に展示したものなんです。コロナの影響でまだ外出自粛や営業休止のムードがあったなか、パブリックアートを置くことで、街や世界を元気づけようという意図もありました。

大阪の街も、これをきっかけに盛り上がるといいなと思います。

大阪は街も人もエネルギーがあるから、独自のカルチャーも生まれてくるかなと思います。ストリートも大阪は強いから、面白い活動をしている若い子たちもフックアップしていけたらいいですね。カルチャーに興味を抱いている人が、PARCOを遊び場にしてもらうというか。PARCOをきっかけにステップアップしてもらえるような、可能性を広げられる場所になったらいいなと思います。若い人に、PARCOをどんどん使ってほしいですね。

これからどんな企画を考えてますか?

ジャンルにはこだわらず、PARCO的に見て面白いものとか、PARCOが編集して他では味わえない体験やエンターテイメントを作っていきたいっていうのは常に考えてます。大阪という、マーケットも大きく独自の文化もあるところで、大阪発の展覧会を作って全国を回るようなものも企画していきたいですね。

工事現場のライトやダクト、コードもすべて演出であり、空間全体が作品。


(後書き)
むき出しのダクト、工事現場のライト、汚れた壁、もはやどこまでが作品なのかわからない。美術館とは全く違う、空間まるごとを作品として味わう、そんな展覧会でした。作品の熱量がすごくて、どこからこんな発想とパワーが……と圧倒されます。赤いライトに照らされた田名網敬一の巨大オブジェ、ガラスケースに並ぶ空山基のSEXY ROBOT、どれも圧巻。「すごい……」と何回言ったことか。とりあえず一歩足を踏み入れたら、考えるな、感じろ、です。

Profile

株式会社パルコ
プロモーション部 業務課長
髙橋 賢太郎さん

PARCO MUSEUM TOKYOの制作ディレクションを担当し、年間17~18本の展覧会を企画する髙橋さん。さまざまな展覧会を手掛けるうち、「最近自分でもなんか作りたくなってきた」と美大出身の血が騒ぎつつあるとか。

Exhibition

JP POP UNDERGROUND

心斎橋PARCO 14階「PARCO EVENT HALL」
2020年11月20日(金)~12月6日(日)
主催:PARCO
キュレーション:NANZUKA
会場デザイン・グラフィックデザイン:YAR

https://art.parco.jp/eventhall/detail/?id=537
https://shinsaibashi.parco.jp/event/detail/?id=8399

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