Interview & Writing
松田 岳
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依藤 寛人

今、関西のスケートシーンで存在感を醸し出している注目の若手・SHUJI KAWAGUCHIさん。仲間たちとスケートを日々楽しみながら、イラストレーターとして個展を開いたり、VERDYがプロデュースする『Wasted Youth』のライダーとしても活動するなど、スケートカルチャーを起点に表現者としてマルチに活躍中。 2020年9月には、エリアを問わずスケートヘッズが足を運ぶスケートショップ『GOOD TIMES』もオープンしました。そんなSHUJIさんは今も昔も変わらず、理屈なんてお構いなしにバイブスが揺れ動く方へ進み続けているような人物。ただ純粋に好きなカルチャーと向き合い続けるなかで、表現者・アーティストという生業を手に入れたストーリーを通じて、表現の面白さを紐解いていきます!

1日中滑った後は、喫茶店でみんなとチルする。高校生の頃から、そんなライフスタイルだった。

ースケーターとして活動しながら、昨年の11月には中津の『IMA:ZINE』でイラストの個展も開かれていましたよね。

『IMA:ZINE』のディレクターの谷さんは、スケートボードが繋げてくれた縁でした。現在の活動としては、スケートを起点にビデオやイラストを制作していて、「個展を開きたい!」と谷さんに相談したら、企画してくださったんですよ。個展を開催する人ってみんな、絵そのものに自分のスタイルがしっかりあると思っていて。初めての個展でしたが、自分のスタイルを見つめる貴重な機会になりました。

『IMA:ZINE』での個展期間中も描き続けていたバンク。展示を終えた今は、みんなで使っているのでイイ感じのアジが。

ースケートボートを起点に、ビデオやイラストを通じて、表現活動を行っていると。ちなみに、いつからスケボー始めたんですか?

スケボーを始めたのは、小学3年生の頃からですね。父親がサーファーだったので自分もサーフィンをしてたんですが、家族で出かけた海岸にスケートパークが併設されていて。何となく「やってみたいな!」と思って。近くのスケートショップでクールなグラフィックが描かれているデッキを買ってもらい、滑ってみたのがきっかけですね。

ーたまたまスケートボードと出会ってから、のめり込んでいったんですね。

高校に入学した頃からがっつりハマりました。僕の地元の大阪・加美に、久宝寺緑地っていう大きな公園があって、そこが有名なスケートスポットで。当時、仲良かった3人を誘って「遊ぼうや!」くらいのノリで滑ってました。次第に近くの八尾や長居公園のスケーターも集まって、同世代10人くらいの仲間で滑るように。当時は、スケボーってまだまだマイナースポーツで、周りにいる学校の子たちはやってないからこそ、カッコイイって感じ。

ーその頃のライフスタイルは?

それこそ1日中、スケボー漬けの毎日。朝学校に行く前から滑ってました。ただ、私立高校なんで校則が厳しくて…。革靴のまま滑って、学校にボード持っていけないんで近くの自動販売機の上に隠して、学校が終わったらまた取りに行って滑るみたいな。日が沈むまで気が向くままに滑って、帰り際にお決まりの喫茶店でみんなとチルする。僕は毎日コーヒーフロート飲んでました(笑)

ー高校生からクール!!!当時の友達って、今でも仲良いんですか?

今でも一緒に滑ってますね。スケボーを通じて手に入れた、仲間というか。こんなん言うの、ちょっと恥ずいっすけど(笑)。同世代なんで、お互い意識し合って、良い刺激でした。「あいつよりスゴいトリックをメイクしたんねん」みたいな感じで、コソ練したりしてましたよ。

ー関西のスケートシーンを語るうえで既に欠かせない存在となりつつあるSHUJIさんからして、ぶっちゃけ大阪のスケートシーンってどう映ってるんですか。

自分はそんな大した奴じゃないですよ!大阪のスケーターは、みんなどこで滑ってきたのか、そのルーツが違っていても仲が良いですね。何かしようとした時に、20代半ばの若い僕にでも「頑張ってるから」って先輩たちが手を差し伸べてくれる。陰でめちゃくちゃ支えられてるなって感じてます。でも、まだまだ世に知られていないスケーターが多い…。大阪のローカルスケーターには、オモロいヤツとかヤバいヤツとか、クールでカッコイイ人がいっぱいいるのに、メディアに掲載される機会が少ないんですよ。

スケーターとして、技術よりも想いの向くままに。

ー大阪のスケーターをもっと知って欲しいと。ビデオ制作に力を入れているのと関係ありそうですね。

今の時代、スケートボードというカルチャーに身を置く上で、ビデオ制作は欠かせませんね。一般的なスポーツだとスキルや技を磨いて大会に出て、そこで勝利することが目標だと思うんですけど、スケボーは違う流れがあって。例えば、アメリカを代表するスケートボード専門誌『THRASHER』のようなマガジンに取り上げてもらったり、ブランドなどが制作するビデオに自分のスケートパートが採用されたりする方が、重要だったりもするんです。だから、自分のスケートビデオパートを作って、見てもらうことを大事にしてますね。

ーでも、知識や技術がないなかで、いきなり動画って作れるもんなんですか…?

僕の場合は、高校生の時にはiPhoneがあったんで、気軽にiMovieで作ってましたね。独学ってほどの勉強もしてないですし…。それより、自分のスタイルを発信したいとか、周りのスケーター仲間を見て欲しいっていう想いが強かったんで、自然と撮るようになりました。自分で表現もするし、自分も仲間も含めて発信したいというか。

ーなるほど。SHUJIさん流のビデオ編集・ディレクション、ぜひ知りたいです。

ビデオ制作の技術よりも、スケーターのスタイルをどう伝えるのかとスポットシークが大切。メイクひとつ決めるのにも、2〜3時間くらいざらにかかるので、いかにその瞬間をかっこよく見せるのかにこだわっています。素材を、どこで切り取って、どこで繋げるのか、その基本があれば大丈夫!って感じで(笑)

ー良い意味でノリというか、その時に自分が何を感じたのか…、“グルーヴ感”を大切にしていますよね!今までのスケートボード人生のなかで、「この道で生きていくぞ」みたいな覚悟が決まった瞬間ってありました?

19歳で、『Sponsor Me(スポンサー・ミー)ビデオ』を制作している時ですかね。さっきも話した通り、スケートボード業界で自分を売り出す最も一般的な方法は、自分の滑りを撮影・編集したパートをサポートして欲しいショップやブランド、メディアに発信すること。そこで、地元のスケーターと本気で映像制作に向き合いました。その時に、自分で滑るのも楽しいんですけど、動画作るのもめちゃくちゃ楽しかったんです。仲間のカッコイイスタイルをもっと色んな人に見てもらうために、「ビデオを作って発信していきたい」と覚悟が決まったのかも。スケーターとして、フィルムメーカーとして、この道で生きて行けたらなって明確に意識するようになりましたね。

生まれ育った街にショップをオープンしたのは、ローカルへのこだわりがあるから。

ー今や着実にスケーターという生き方を生業にしていますよね。そして、その拠点となるのが、2020年9月に地元でオープンしたご自身のスケートショップ『GOOD TIMES』であると。

そうですね。スケートショップの役割って、モノを売る以外にもあると思うんで、『GOOD TIMES』としてビデオも作っています。やっぱり僕らにとってはビデオの優先度が一番高いので。スケーターと交流する場が生まれることで、ビデオ制作にも本腰を入れられるようになりました。

ーショップの構想はいつから考え始めたんですか?

いつかビデオ制作の事務所が欲しいとは思っていたんですけど、「スケーター仲間が集まる場所ができる」「ローカルからスケートカルチャーを発信できる」とかも考えるようになって、ショップがあると「何でもオモロイことができるやん」と思って。シンプルにワクワクしたので、ショップをオープンさせることを決意しました。

ー地元・加美でオープンしたのも、何か理由があったんですか?

理由は2つあって、ひとつはローカルへのこだわり。地元のローカルスケーターを発信したい、さらにはローカルからスケートシーンを盛り上げたいという想いです。もうひとつは、僕たちが滑り続けてきたスケートスポット・久宝寺緑地があるから。せっかくなら、自分たちの中にあるスケートカルチャーが育まれた原点で、これからも過ごしていきたいと考えました。それで、昔から一緒に滑ってたスケーター仲間のSUBARUとKOUを誘ったんです。

地元のスケーター仲間であるKOU(真ん中)とSUBARU(右)と一緒に『GOOD TIMES』をオープン。

ー学生時代から仲が良い仲間と一緒に、好きなスケートボードのカルチャーを生業にして生きている。これって、サブカルチャーが好きな人間なら、みんなが憧れるライフスタイルですよね。にしても、ビデオ制作以上に、いきなりショップ運営を始めるって、ハードル高過ぎませんか…?

マジでトラブルの連続でした(笑)。とりあえず、みんなでDIYしてショップはオープンできましたけど、分からないことも多くて…。でも、スケボーで繋がった人たちがアドバイスをくれて、何とか少しずつ前に進めた感じ。アイテムのセレクトも、良い意味で最初と今ではほぼすべて変わりました。僕はやっぱりグラフィックのデザインに惹かれて、ボードもアパレルもセレクトすることが多いです。

ースケートボードで繋がった縁がここでも力になっている訳ですね。でもやっぱり、中心にはSHUJIさんの求心力というか魅力があるから、すでに地元をはじめ全国のスケーターが足を運ぶショップに成長したはず。今日着てるパーカーも、SHUJIさんがデザインしたオリジナルアイテムですよね?

はい! 昔から絵を描くのは好きだったので。あと、スケートボードのデッキのグラフィックに惹かれて、グラフィックデザインにも昔から興味を持ってたんですよ。でも、大学は理工学部だったから半期で中退しちゃって…(笑)。そこからデザインの専門学校に通い直しましたね。当時は、スケーター仲間とビデオを作ることに夢中やったんですけど、個人の表現活動に目を向ける機会が少なかっただけで、ずっとデザインは好きでした。

ーSUBARU君とKOU君からみて、SHUJIさんのデザインってどう映ってるんですか?

SUBAU:昔からずっと一緒にいて、スケートカルチャーに浸かってきたから、何をカッコイイとするのか、その感覚は近いと思いますね。だからこそ、俺はSHUJIのデザイン好きですよ。

KOU:SHUJIの好きなものは、僕も好きなことが多い。お互いの好みを、お互いに把握して、信頼しているから安心して任せられますね。いわゆるフィーリングが合うってやつです!

「イラストもひとつの表現手法」。スケートカルチャーを通じて、何を、どう表現するのか考えるのが面白い。

ー現在はスケートとビデオ制作を『GOOD TIMES』で行いながら、それとは別で個人の活動としてイラストにも情熱を注いでいると。

あくまで個人の活動ではあるものの、スケートボードやその延長線上にあるビデオ制作、イラストの全てが、お互いに良い影響を及ぼしあって、色んな表現ができると考えています。スケートで培ったカルチャーをイラストのテイストに活かしたり、イラストで身につけたグラフィックの技術をビデオで活かしたり。あくまで全てスケートが起点にあって、何を通じて表現するのかの違いだけですね。

ー勝手な印象なんですけど、SHUJIさんのイラストってどこか『ニコロデオン』のようなアメコミチックなテイストが含まれていますよね、

『ニコロデオン』とか『スポンジ・ボブ』とか、カートゥーン調のアニメは小さい頃からよく見ていました!あのふざけている雰囲気が好きなので、自然とイラストも似たテイストを含んでいるのかも。

『IMA:ZINE』での個展に際して描いたイラストがこちら。ポップでヘンテコなキャラクターたちがぎっしりと描き込まれている。

ー他に好きなアーティストとかはいるんですか?

スケートボードブランド『Polar Skate Co』のデザインも手がけるJacob Ovgren。可愛らしいポップなタッチの裏で、バイオレンスやセックス、ドラッグなどをテーマにしたシュールな絵がたまらないっす。汚くて破壊的な感じが個人的にツボです。

ーイラストという表現活動を通じて、何を発信していきたいですか?

人が見て、クスッとでも笑えるようなイラストを描きたいです。でも、スケーターだからスケートに基づいたものとかも描いていきたいなと思ってますね。やっぱりイラストを描いてる時も、頭の中のどこかではスケートのことを考えたりしてますから。

取材後にビデオ制作を行うということで、『GOOD TIMES』のショップライダーであるISSEI(右)と、よく一緒に滑るSHUN(左)も集結。

ースケート・ビデオ・イラストとマルチに活躍するなかで、SHUJIさんの今後のビジョンをぜひ教えてください!

『GOOD TIMES』の視点で考えれば、フルレングスのビデオを作って、もっと多くの人に発信していきたい。今考えているのは、全国のショップを回ったり、ポップアップショップを開いたり、全国をツアーしながら、スケートカルチャーを広めるのはもちろん、僕の周りにいるカッコイイスケーターを見てもらいたい。僕らのスタイルそのものを発信するイメージですね。僕らってやっぱり、滑ること自体が好きなんで、その瞬間を目に焼き付けてもらいたい。

で、個人視点でいうと、引き続きイラストの個展をやっていきたいですね。実は、2月28日に原宿の『kit gallery』で個展を開くことが決まっていて。今はそこに向けて、作品づくりに明け暮れる毎日です。デスクで作業してる時も、滑ってる時も、ずっと考えてますね。

ーいよいよ東京でも!しかもあの『kit gallery』で個展を開くなんて…。僕みたいな常人だと、ビビってやろうと思わないです。

正直、パンチを喰らいたくて。色んな人に見てもらえる環境だからこそ、自分の未熟さも知れるかなと。僕自身、未熟さを知って、精進しようと思うタイプなんです。逆に、今の僕にでも「ここは良かったな」って思える部分もあるでしょうし。

ービデオ制作も、ショップのオープンも、イラストの個展も、何事もやってみて考えるスタイルなんですね。

バイブスが動く方へ滑ってみて、転んでから考えれば良いというか。最近は頭でも考えるようにしてるんですけど、結局やってみないと分からないし、その先の景色は見えてこない。カッコイイとかオモロそうとか、自分の感覚の趣く方にまずは動くことを大切に、これからも精進します!ってことで、ぜひ皆さんご都合あえば、2月28日から3月7日は原宿の『kit gallery』へ!

 


Exhibition Information

OK ALLRIGHT SHUJI KAWAGUCHI SOLO EXHIBITION

SHUJIが長年愛してやまないストリートスケートから感じ取ってきたものや、幼少期から見ていたコメディアニメなどからインスパイアされた”ヘンテコキャラクター”達を様々な手法でPOPに表現。11月に大阪で開催された個展にて展示された作品の一部に、新作を描き加えた巡回展を東京で開催。会場では作品の展示販売のほか、同人物にとって初めてとなるZINEも販売される。

会期:2022年2月28日(月)〜3月6日(日)
時間:13:00〜20:00
場所: kit galley 東京都渋谷区神宮前2-31-3 2F-A
http://kit-gallery.com/


Profile

SHUJI KAWAGUCHI

1997年生まれ。スケートカルチャーを起点に、ビデオ制作やイラスト制作などアーティストとしてマルチに活躍中。日本のストリートシーンのキーマンであるVERDYがプロデュースする『Wasted Youth』のライダーという一面も。2021年には大阪を代表するセレクトショップ『IMA:ZINE』で個展を開催。次いで2022年2月28日には、原宿の『kit gallery』でも個展を予定している。自身のスケートショップ『GOOD TIMES』はオープンから早1年で多くのスケーターが訪れる名物ショップに。いま、関西のスケートシーンを語る上で欠かせない存在。

Shop Data

GOOD TIMES

大阪府大阪市平野区加美東6-14-34
OPEN:13:00〜20:00
定休日:火曜日

https://linktr.ee/GOODTIMESSKATESHOP

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