Interview & Writing
金輪際セメ子
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中島 真美

中崎町を拠点に編集活動を行うSTAND MAGが、FREE BOOK『NAKAZAKI ACT』を発行。中崎町の濃ゆい情報をギュッと凝縮した限定3000冊のマガジンが、2022年1月20日(木)より配布されています。この『NAKAZAKI ACT』、関西のファッションカルチャーマガジン『カジカジ』『カジカジH』の歴代編集長が名を連ねるSTAND MAGの制作とあって、すでに各所で話題沸騰&早くも品薄に。このご時世に「WEBで読めない」マガジンを発行した背景や中崎町というまちへの想いなど、メンバーの皆さんにお話を伺ってきました!

WEBではなく紙媒体で、「取りに行く」というアクションを起こさせる。

まず、『NAKAZAKI ACT』を制作することになった経緯を教えてください。

名越:もともと中崎町では、2017年から「イコール(=)フェスティバル in 中崎町」というアートやファッションのイベントが毎年開催されていたんです。でもコロナ禍で、2年続けて中止になってしまった。イベントで集客するのが難しい中で、それに代わるものを何か考えてほしいとPR会社から声を掛けられたのがきっかけです。

イベントの代わりに中崎町の魅力を発信するものとして、冊子を作ろうと。

名越:当初はWEBでという話もあったんですが、STAND MAGのメンバーはカジカジ出身ですし、紙媒体が中崎町にはしっくりくるんじゃないかと僕らは思って。紙のほうが目立つし、フリーマガジンにしたら取りに来てくれるから、人の流れも作れるんじゃないかと思ったんです。

STAND MAGのマネージャーを務めるスタイリトの名越亨さんと、『NAKAZAKI ACT』編集長の栗山倫佳さん。

あえての紙媒体だったんですね。では、中崎町というまちを、どんなコンセプトで編集することになったんですか?

栗山:中崎町に拠点を構えて半年ぐらいの時期にこの企画がスタートして、ちょうどリアルにまちの感じがわかってきた頃だったんですね。外から見ていたときは、洗練され切ってないというか、そんな印象がちょっとあったんですけど、ここに来てからは実は面白い人とかいろんな人がいることがわかって。外から見た中崎町と、中に入ってみないとわからなかった中崎町、それをひっくるめて「今打ち出したいものは何だろう」っていうのを考えました。

名越:個々のお店の人がSNSとかで発信はしてるけど、中崎町の「今」を発信してるものってなかったんですよ。だから、中崎町の最新版を『NAKAZAKI ACT』ができたらいいねっていうのは、最初からありました。

たしかに、「中崎町」をまるっと捉えたものって今までなかった気がします。編集テーマになっている「サ活」のキーワードは、どのタイミングで出てきたんですか?

村上:企画会議でみんな中崎町でやりたいことを出し合ったんですけど、僕が「美容室朝活」っていう企画を出して。

栗山:中崎町って朝が遅いイメージだから、朝が早いって切り口新しいやん!ってなったんですよね。

和島:でも詰めていくと、朝はお店とか全然やってなくて(笑)。朝活自体はなくなったんですけど、それぞれが中崎町でやりたい企画が全部「サ」でくくれることに気付いたんですよ。サウナとか、サテン(喫茶店)とか、サンポ(散歩)とか。それで「サ活」にしようかって。サ活ありきじゃなくて、たまたま。

巻頭では中崎町でできる6つの「サ活」をピックアップ。偶然とは思えないほど、見事な「サ」つながり。

大手アパレルが進出していない中崎町は、「いい意味でディレクションされてない」。

実際に中崎町を取材されてみて、どんな印象でしたか?

和島:「個」が立ってるなあと思いましたね。専門的なお店も多いし、店主さんとかお店のキャラクターが際立ってて、そこに集まるお客さんもまた個性的な感じで。流行に左右されず、純粋に好きなことを商売にされてる印象でした。

洗練とか流行とかは関係なく、ブレずに好きなことを突き詰めていると。

高松:テナントひとつひとつが小さくて、大型店がないんです。大企業のアパレルショップとかが入り込めない場所。だから個性の強い小さなお店が多くて、梅田にこんなに近いのに、都会の最先端が流れてこないんですよ。

そういえば、梅田とはぜんぜん空気感が違いますね。

栗山:大手のアパレルとかがないから、いい意味でディレクションされてなくて、個が乱立してるんです。ストリートカルチャーってまちにいる人から生まれてくるものだと思うんですけど、そういう意味では、中崎町にはそれがあるのかなって思いますね。

「お店の人もそうやし、まちを訪れる人もマイペースな印象」と和島美緒さん。

自分の好きなことを、自分のペースでできるまち、みたいな。

和島:そういう傾向があるというか、やりやすいんじゃないかな。マイノリティにも優しいというか、むしろ「マイノリティですがなにか?」みたいな。でも決して閉鎖的なわけではなくて、横のつながりとかはそんなにないんですけど、干渉しあわずお互いに自由なんです。

栗山:住んでる人も多いし、専門学校が近いから若い子もいっぱいいるし、休日はカメラを持った人もたくさん歩いてるし、今はコロナで少ないですけど、前は民泊とかもあって外国人の観光客も多かったらしいです。ほんとにいろんな人がいるんですよ。

中崎町は、多様性を受け入れてきたまちなんですね。

高松:だから巻頭に出てくるモデルさんたちも、中崎町の多様性を表現できたらと思って、外国人や若者、LGBTQ、いろんな人たちに登場してもらいました。

サウナのサ活はもちろん、中崎町のシンボルともいえる「大東洋」で撮影。ちなみに中崎町は、犬もすごく多いそう。

「作りながら、これは違うなって」。シュッとしたデザインから、ギリギリで全面変更を決断。

取材で苦労されたこととか、大変だったことはありますか?

高松:それが、ないんですよね……。カジカジを長年やってきたのでみんな慣れてるし、取材範囲がコンパクトな分、むしろやりやすかったですね。

村上:徒歩圏内なんで、アポイントも電話じゃなくて直接行ったり。

和島:お店の人も、中崎町を盛り上げたいっていう想いを伝えるとすごく快く協力してくださって、「いいですよ~!」みたいな感じで。

取材や撮影で苦労したことを聞くとしばし考え込んだ後、「……ほんまにないんですよ」と高松直さん。

苦労がなかったっていうのはすごいですね。

名越:村上くんはちょっと苦労してたけどね、サンドイッチ企画。

村上:そうですね、サンドイッチを取り上げることになったけど、知ってるお店がひとつしかなくて。食べ歩いて探しました。

和島:あとは、お店が開いてる時間がバラバラとか?平日は一日しか営業してなかったり、アポイント制だったり。みなさんそれぞれ自分のペースで営業されてるところが多いので。

サンドイッチを特集した村上竜一さんは、『納豆マガジン』やアパレルブランド<ネバネバビーン>を手掛ける納豆ラバー。以前、『MARZEL』にも登場していただきました。

そういうところが中崎町なんですね。

栗山:ご近所付き合いの延長で本を作らせてもらった感じで。むしろ大変だったといえば、取材のあとですね。最初はもう少し、シュッとした誌面にするつもりだったんです。もっと今っぽい感じに。でも取材してみて、これは違うぞって。それで、デザインをギリギリで全部変えたんです。

え、誌面のデザインを全変えですか…!?

栗山:表紙も一枚もののビジュアルだったし、フォントとかも全然ちがうものでした。もともとはシュッとしたデザインのほうにもっていこうとしてたんですけど、みんなの印象として、シュッとすることが中崎町にとっていいことではないなと。それで、思い切ってデザインを変えたときに、全員すごく納得できたんです。まちの個性を受け入れて、それをデザインに落とし込んだ感じですね。

和島:このデザインになったときにめっちゃハマってて、これこそ中崎やなって。すごくまとまって、しっくりきました。

デザイナーさんはびっくりされたんじゃないですか?

栗山:いや、なにか違うなっていう感覚は同じだったと思います。このままでもいいんだけど、でももうひとつ何か……っていうところは。だから撮影が終わってからここに来るまでが、いちばん時間がかかったんじゃないかな。

名越:みんなベテランですからね。外に対する苦労より、着地させるための苦労というのがあったと思います。

今っぽくおしゃれに見せるより、中崎町のありのままをどう見せるか、だったんですね。

栗山:昭和とかレトロとか古い街並みとかそういう印象があると思うんですけど、でもそれだけじゃないっていうのは絶対伝えたかったので。新しい中崎町は、見せられたんじゃないかなって思います。

デザインの全面変更を決断、「色校とか修正だらけでもう大変でした」と栗山さん。

「いらなくなったら返してほしい」くらい、想いを込めて、大切に作ったマガジン。

中崎町のショップ約50店舗とSTAND MAGにて、限定3000冊を配布。

完成した『NAKAZAKI ACT』をご覧になったまちの方はどんな反応でしたか?

村上:取材の時から、持って歩けるマップとかフリーペーパーを求めてたっていう声を聞いてたんですね。だから、そういうものができるのは嬉しいって。それを聞いて、フリーマガジンっていう媒体はやっぱり中崎町にマッチしたのかなと思いました。刷り上がりを持って行ったときも、すごい喜んでくれたんですよ。「え、これで本当にフリーですか?」みたいな。

たしかに、フリーとは思えないボリュームとクオリティですよね。

名越:栗山さんは「ちゃんと本にしたい」っていうこだわりがあったよね。絶対に角綴じにしたいんです!って。

栗山:薄くは絶対したくなくて、パンフレットみたいな感じじゃなくて、きちんと本というか雑誌の形にしたいと思ってました。埋もれてしまったり、捨てられてしまったりするものにはしたくなかったんです。

1月20日に発行されてから、反響や反応はありましたが?

名越:今日も梅田のNu茶屋町からここに向かって歩いてるときに、取材させてもらった古着屋さんに会ったんですけど、店頭に置いてた分は1日でなくなりましたって。

もうなくなったんですか!?3000部限定なんですよね?

高松:店舗さんからは、なくなったっていうお話はいくつか聞いてますね。

名越:たくさん刷っていつでもあるじゃなくて、早く行かないとなくなるって思ってもらえたら。ゼロ・ウェイストですよね。必要な人が、必要な分だけ持って行く。

和島:そうなんですよ、ゴミになってほしくないし、なんなら、いらなくなったら返しに来てほしい(笑)

それは早く取りに行かないと! 『NAKAZAKI ACT』によって、また中崎町が賑わう予感がしますね。

村上:こういう状況だからこそ、ちょっとでもまちが動くというか、これを手に取って動いてほしいなって気持ちはありますね。 

和島:一見入りにくいかなってお店も、入ったらぜんぜん大丈夫。みなさんやさしい方ばっかりなので。

『NAKAZAKI ACT』の表紙には「ISSUE 01」の文字がありますが、今後の展開はなにか考えておられますか?

和島:この取材をきっかけにいろいろ知ったことも多かったから、中崎町のネタはまだまだあります。

高松:一冊作ってみて、やっぱり中崎町っていい意味でカオスだなと思ったので。もう一回やりたいですね。

名越:ACTには、まちの動いてるところを拾いあげるとか、まちに住む人がアクター=主人公であるとかそういう想いを込めているので、またこのメンバーで中崎町でも、違うまちでも、何かアクションを起こせたらいいなって思いますね。

Profile

STAND MAG

クリエイタークルー

中崎町を拠点に編集活動を行う、元カジカジ編集部を中心としたクリエイタークルー。フリーディレクター・エディター・ライターとして活躍しながら、ヘア、納豆、古着、麻婆豆腐など各々の「好き」をさまざまなカタチで発信中。拠点とするアパートメントに併設するはギャラリースペースでは、多様なイベントも展開。

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