Interview & Writing
藤原シホ
Photo
谷脇 靖寿

こんにちは、旅と音楽を愛する子煩悩ライターの藤原シホです。今回は前回(イベントレポート編から)の予告どおり、「水都大阪の魅力発見! 水の回廊春爛漫クルーズ」のスペシャルゲストとして登壇なさっていた、西野亮廣さんのインタビュー編をお届けします。

エンターテイメントをやるっていうのと、ちゃんと芸人をするっていうのは決めています

原作・製作総指揮・脚本を担当された映画『えんとつ町のプペル』、第44回日本アカデミー賞では優秀アニメーション作品賞受賞、おめでとうございます。最近ますます活躍の幅が広がっているように感じるのですが、まずは『西野亮廣って何者?』ってあたりから教えてもらえませんか?

西野:なんだろなぁ、まぁ、エンタメをやる人です。エンタメ屋さんです。

普段の西野さん、作家の西野さん、芸人の西野さん、人格に違いってありますか?

西野:僕はたぶん、そんなに切り替えていない気がしていて……。作品をつくったらつくったで、ちゃんと届けなきゃいけないじゃないですか。届けるところまでがつくるっていうことだと思っているから、絵を描くのと文章を書くのは同じはずなので、なんかこう、広告を考えるとか、集客をするとか、広めていくっていうのは同じような作業だと考えています。

服は「カタチ」にグッとくる

ファッションへの興味はどうですか?  今日のお洋服も素敵ですけど、スタイリストさんとかは??

西野:ついてないです! 私服です。

好きな服の傾向は?

西野:あー、同じ服を着る!っていう(笑)。僕がほんとダメというかズボラで、結局同じ服をたくさん買って、それをずっと着ている。選ぶのが面倒くさいみたいな、そっちだと思います。好きな服、苦手な服っていうのはありますね、その「カタチ」が。

黒い服がお好きなんですか?

西野:いや、そういうことじゃなくて、それより「カタチ」です。「カタチ」が好きっすね。なんか基本的に服に限らず、建物とかも、「このカタチ、グッとくるなー」とか。

自分の中から出てきたものには、もはやオリジナルはない!

これはわたしの勝手なイメージなんですけど、西野さんはインプットとアウトプットの新陳代謝が活発ですよね。いつも何かしらおもしろそうなことをなさってるなぁと思うんですが、最近気になっていることは何かありますか?

西野:えーっと、最近は江戸時代がおもしろいです。次の仕事のことで歴史の勉強をしなきゃというか、仕入れなきゃっていうのもあるけど、やっぱ歴史がおもしろいですね、総じて。ここもむっちゃくちゃ考えなきゃいけないなぁと思うとこがあって、たとえばファッションとかも、もしかしたらそうかもしれないですけど、「オリジナル」っていうものが、自分の内から出たもの、独創性みたいなものだと捉えがちじゃないですか、僕たちって。で、その時代は実際にあったと思うんですよ。ですが、今、たとえば僕がスゴイものをパッとあみだし、開発したとするじゃないですか、これは本当に素晴らしいものであると。じゃぁ、それはたぶん翌日には中国がコピーしているはずなんですよ。で、次にはヨーロッパがコピーしているみたいな感じで、要は、自分が生み出したものっていうのは、基本的にコピー可能。つまり「自分の中から出てきたものには、もはやオリジナルはない!」。じゃぁ、オリジナルってなんなんだ?っていうと「基本的にはコピー不可能なもの」。 というふうに定義したとしたら、コピー不可能なものって「時間」くらいしかないんですよ。

オリジナルとは、レガシー×テクノロジー×個性

西野:たとえば、歌舞伎役者の市川海老蔵さんがやっていることをコピーするのは無理じゃないですか。あれは、初代・市川團十郎から何百年もつみあげられてきている。あの歴史というのは、百億円払っても一兆円払ってもコピーできないんですよ。あとは、チームラボの猪子(寿之)さんとかもよく言われるけど、やっぱり自然みたいなもの。ああいうものに、自分の個性みたいなものを掛け合わすっていうことをしていかないとコピー可能になっちゃうから、やっぱり歴史ですよね。歴史に理解を深める! それはよく言ってます。自分のチームでもよく話すのがレガシー、つまり遺産。「レガシー×テクノロジー×個性」、この3つがそろっていないと基本的にオリジナルっていうのは現代では無理だよねって。なので最近は、ずっといろいろ調べ物ばっかしています。

これをしたら「確実に死ぬ!」ってことをリストアップして

西野さんは二十五歳のときに人生の転機があったという話をよく聞くのですが、若い世代にアドバイスしたいことって何かありますか?

西野:僕が自分より下の方に言えることって、あんまりないんですが、何か挑戦するときに、「何をしようかな」って考えるのは一回やめる。やりたいことなんて、そんなに降ってこないじゃないですか。じゃなくて、これをしたら「確実に死ぬ!」ってことをリストアップして、それをやらない。っていうことをやればいいと思います。どうすれば成功するかなんて、わかんなくないですか? 車でどこかへ行こうってなったときに、なるべく早く目的地に着くことが目標だとしたら、高速道路で行ったほうがいいのか、裏道を使ったほうがいいのか、高速が混んでる場合もあるし、行けると思った裏道が工事してることもあるじゃないですか。これが正解かなぁと思っていたことが止められちゃうことって、フツーにある。一方で、ブレーキのオイルが切れていたら100%事故るし、ガソリン入れてなかったら100%走らない、みたいな……。これをやったら絶対に失敗するっていうことリストアップして、それを徹底的にやらない!っていう、そっちじゃないですか。それでいうと、結構見えてくると思うんですよね。

YouTubeの再生回数をとりにいくとか、なんの未来もない

西野:たとえば今、自分が十九とか二十歳くらいだったとして、これをやったら100%終わる!っていうのは、YouTubeの再生回数をとりにいくこととか。そこにはもう、なんの未来もないと思うんです。YouTubeのアルゴリズムにあわせて活動してしまうと、「この企画が再生回数まわってるから」というふうになってきて、だいたいみんな同じほうへ流れて行っちゃう。そうすると、これはとって替えられるんで、それはやっちゃダメだし。やっちゃダメなことって、結構わかりやすいと思うんです。

自分が死ぬことを前提に考えたら、生き方が変わってきた

西野さんの考える自分の未来。結婚観とか、人生観みたいなものは?

西野:性欲くらいはあるんですけど、結婚願望はなくて。ただ先々の話をすると、僕は会社で動いていて、チームで動いていて、そうすると、最近は僕よりひとまわりも年下の若い子が入ってくるんですけど、この子たちより僕のほうが先に死ぬのは決定しているじゃないですか、寿命ということで。って考えたときに、たとえば『えんとつ町のプペル』のミュージカルをつくってもらっているとか、自分の作品を横展開することを仕事につなげている人たちは、僕が死んじゃうことでそのすべての活動が止まってしまう。それは、あってはならないことだと思うんです。二十歳そこそこ、二十三、四の、しかもお父さんお母さんに一生懸命育てられたお子さんを会社でお預かりしている以上は、なんか三十年間振りまわして、「僕が死んだらあとは知らないよ〜」っていうのはやっちゃいけないと思っていて、やっぱり自分が死んだあとにも「まわり続ける仕組み」を、今の間につくらないと! それは、彼らのために、彼らのお父さんお母さんに対しても申し訳ないかなと思っています。

僕が死んでも人はウンチしつづける

西野:自分が死ぬ前提で考えたら、まずアレがダメです「露出」。くれぐれも、僕のケースは!っていうことですよ。作品をベースにビジネスを展開していくやつで言うと、露出して出演料をもらうっていうこのサイクル、この仕事自体は素晴らしいことなんです。が、僕はそれをやってしまうと、その売り上げで作品をつくるっていうことになる。ここが収入源になっちゃうと、僕が死んだら全部止まっちゃうので、だからやっぱり、それはなるべく控えて、死んでも売り上げというか、製作費がまわり続けるためにはどうしたらいいのか?ってことを考えるんですけど、そうすると最近やってるのはトイレットペーパー。トイレットペーパーを開発して、トイレットペーパー会社と組んで、トイレットペーパーの売り上げの何パーセントとかを、制作費とか支援にまわすようにする。僕が死んでも人はウンチしつづけるじゃないですか、そういうやつですね。死ぬ前提で考えたら、生きている間の生き方が全部変わちゃった。

なんだかものすごく広い意味で「みんなのお父さん」って感じがします(笑)

西野:会社でやっているというのは大きいかも。あと自分は個展とかするし、映画もあの調子の作品なので、個展会場とかに来てくださるお子さんがすごく多いんですよ。だいたいスタッフが仕事をしてくれて、僕はあんまり仕事してないんですけど、子どもと喋ったり、遊んだりしていると、やっぱりね、このまま、この感じの世界を渡しちゃっていいの? みたいなことは、考えちゃいますね。

「夢の叶え方」ということで、子どもたちにアドバイスするとしたら?

西野:好きなことをシンプルに追いかけ続けるっていうのと、できるだけ褒めてくれる人の近くにいること。あとは、ちゃんとお金の勉強をする!

お金の勉強とは?

西野:才能がなくて夢をあきらめざるをえないというのは納得がいくんですけど、才能があるのに、お金がないからこの夢をあきらめなきゃいけない……っていうのは、ちゃんと知識を得ていれば、本来は回避できることなんですよ。ココって運じゃないんで、そういうのって、あまりにも可哀想じゃないですか。なので、ちゃんとお金の勉強をしようね! って言うと、日本では「銭ゲバ」扱いされるんですよ(笑)。だから結構、残酷な国なんですよね、夢を叶えにくい状況なので。

なるほど

西野:「お金のブロック」「集客のブロック」、この二つは、どんな仕事でも絶対にクリアしなきゃいけないことなんだけど、これを語ると、とにかく叩かれる。そういう国に生まれちゃったら仕方ないんで、親子で勉強するしかない!ってことですよね。

知識不足、勉強不足、日本はほんとにヤバい

イベントでのトークでは今後の展望として遊園地やアパート、いろいろな事業展開の話をされていましたけど、「教育」ってどうですか? たとえば学校とか。

西野:いろんな国に行って、その国の人たちと喋ったり、見てきたりすると、やっぱりほんとにヤバいなぁと。日本がヤバいヤバいと言っていても、たぶん、日本にずっといる人って、日本がどれだけヤバいのか気づいていない。でも、旅行とかで頻繁に海外に行ってる方っていうのは「おや?」って、なってると思うんです。たとえば、アメリカでお昼ご飯を食べようと思ったときに、二十年前と全然値段が違う。「高っ! お昼で三千円、四千円いってるけど〜」って、びっくりするはずで、そこはヤバいですよ。日本はほんとに貧しくなってるんです。で、貧しくなっている理由が、当然人口の問題などもあるんですけど、知識不足、勉強不足っていうのは、さすがにちょっと、何かやろうかなって思いますよね、この国に生まれたしね。

面倒くさいけど、日本を捨てられない

西野:めんどくせーーー!って、思いますけどね。なんかね、とにかく叩かれるし、知識がない人ほど叩くっていう。だからみんなもう「面倒くさい」って言います。だからもう「日本捨てる!」みたいな。その気持ち、むちゃくちゃよくわかるけど、自分はそれで捨てるみたいなことができない。なので、「子どものこととか、もっとちゃんと考えろよ〜!!」って、思って。そうすると、これをクリアしなきゃダメじゃん!とか。あ、なんか熱くなってますね(照)

いえいえ、すごく興味深いです

西野:わかりやすくシンプルに言うと、犯罪に走る原因のたぶん二位くらいは「お金」、自殺する理由の二位くらいも「お金」ですね。十代では一位が「いじめ」、年齢が上になってくると「健康上の問題」とかもあるけど、上位を占めるのはだいたい「お金」なんです。人を殺すのと、自分が死ぬ・自害する、その理由がどっちもお金って、自分の子どもがそんなことしたらイヤじゃないですか。自分の子どもが自分で命を絶つなんて、絶対にさせてはいけない。大人が全力でそれを止めるべきで、じゃあ、一回ちゃんと勉強しよう! っていう。税金のこと、資産を運用すること、そういう勉強をしようと言うと「銭ゲバ」だと叩かれる。だから最近はとくに、テレビで喋るのが面倒くさい。自分でお金をつくるっていう人があんまりテレビを見ていないのか、「あいつ、金の話ばっかりしやがって」って言われますから(笑)。これはあんまりよい流れではないので、なんとかしたいなぁとは思いますね。

おじさんは、おじさんの仕事をする

できれば未来は明るいと願いたいわけですが、2025年には『大阪・関西万博』の開催予定もあります。大阪がこれからもっとおもしろく盛り上がっていくために、西野さんならどうしたいですか?

西野:若い世代に、ちゃんとバトンを渡す!っていうのができたらいいなって、思いますけどね。もう結構、五輪とかもズタズタじゃないですか。やっぱりそこはちゃんと渡さないと、大阪万博も終わると思います。リーダーが、ちゃんと手放さないと、基本的には無理っすね。そういう運動は若い人もしたほうがいいのかなぁ? でもなぁ、僕だったら、自分から渡すけどなぁ〜。自分のほうが才能ないんで、いやその、二十代、三十代の子のほうが圧倒的におもしろいんで。なんか、渡すとこは渡して、おじさんはおじさんの仕事をする。そりゃあ、おじさんは必要なんで、話をとおしたり、フォローしたり、責任をとる!とか。ただ、おじさんがハンドルにぎっちゃうとロクなことがないっていう(笑)。そこをだから、渡せるといいですよねー。

最後に記念写真を撮っていただきました! 大阪ダックツアーのゆるキャラ「ダッパくん」も一緒に。西野さん、今回はどうもありがとうございました。
Profile

西野亮廣/ニシノアキヒロ

1980年 兵庫県出身。絵本作家。1999年、漫才コンビ『キングコング』を結成。独学で絵を学び、2009年1月に絵本作家としてデビュー。2016年に出版した絵本『えんとつ町のプペル』は昨年12月に映画化され、150万人の動員、興行収入20億円を突破し、処女作にして異例の大ヒットとなった。

share

TWITTER
FACEBOOK
LINE