大阪のまち、陸から見るか、川から見るか。 世界的にも珍しい「水の回廊」をめぐる90分の船旅。
「水の都」と言えばイタリアのヴェネチアが有名ですが、実はここ大阪も、水の都って知ってました? かつて水運で栄えた大阪は、都心部を川がロの字に巡る「水の回廊」を形成しているんです。この地形は世界的にも珍しいとのことで、今回は「水の回廊」のすべての川(堂島川・土佐堀川、木津川、道頓堀川、東横堀川)を巡るリバークルーズを体験! よく知っているはずの大阪のまちを、川から見てみました。
案内人:水都大阪コンソーシアム 吉城寿栄さん、一本松海運株式会社 一本松英三さん
モデル:前野修一、三村毬乃
今年は「船からお花見」。大川さくらクルーズのコースからスタート。
クルーズの始まりは、八軒家浜の船着場から。この船着場、なんと駅直結なんです。天満橋駅の改札を出たらすぐ船に乗れるなんて、さすが水都大阪。さっそく一本松海運さんの「えびす」に乗り込んで、まずは大川(旧淀川)沿いの桜をめでる「大川さくらクルーズ」のコースに出発します。
毎年3月末から4月上旬にかけて開催される大川さくらクルーズは、一本松さん曰く「船の桜の通り抜け」。天満橋と言えば造幣局の「桜の通り抜け」が有名ですが、船から見る桜も絶景なのだそうです。「大川の桜は染井吉野で、造幣局の桜は八重桜。満開の時期が違うんです。3月末から船で大川の染井吉野を見て、4月中旬ごろに造幣局で八重桜を見る、それが大阪の風物詩になったら嬉しいですね。」と一本松さん。
水都大阪コンソーシアムの吉城さんも、「大川の両岸が淡いピンクに染まる様は、まさに日本の春!って感じで圧巻ですよ。」と太鼓判を押します。なるほど、混雑のない船の上から優雅に桜を眺めるの、いいですね。
特に今年は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、造幣局の桜の通り抜けは予約のみ(申込み期間終了)。天満橋界隈で桜を楽しむなら、オープンエアな船でのお花見がおすすめですよ!
レトロ建築に夜景も。堂島川沿いは、おしゃれなアーバンリゾート。
再び八軒家浜に戻り、今度は大川を西へ。大川は中之島を挟んで堂島川と土佐堀川に分かれますが、今回は堂島川をクルーズします。
川風に吹かれてクルーズを楽しみつつ、なぜ大阪が「水の都」なのかを吉城さんに聞いてみました。
「鉄道も自動車もない時代、人や物の移動を支えていたのは船。中でもこの大川(旧淀川)は海からの入り口であり、京都と大阪を結ぶ水路であり、交通・物流の大動脈だったんです。」今まさに通っているこの川が、大阪発展の礎だったんですね。
「昔は網の目のように水路が張り巡らされていたんですよ。四ツ橋も心斎橋も、川にかかっていた橋の名前です」という一本松さんの言葉にも納得。大阪市内に橋がつく地名が多いのは、水運で発展した名残だとわかりました。
かつての水路の多くは埋め立てられ、残ったのがロの字を描く「水の回廊」。吉城さんは「水の回廊というコンテンツを通じて、大阪府民の生活のなかにもう一度、川や水辺に親しむ機会が増えたらいいなと思います」と語ります。
江戸時代から大阪の政治・経済・文化の中心地として発展してきた中之島は、今も大阪を代表するビジネス街。オフィスビル群の中でひときわ存在感を放つレトロ建築は、大大阪として栄えた当時の面影を感じさせます。
堂島川にかかる橋のデザインも装飾的で美しく、見ていて飽きません。が、とにかく橋が低い。通り抜けられるか不安なぐらい低い橋もあります。これは、大大阪時代に地下水を組み上げた結果、地盤が沈んだことが原因のひとつなのだそうです。一本松さん曰く、「低い船でないと通れないし、潮の満ち引きの影響も受けるので、限られた船で限られた時間帯しか通れないんです」とのこと。今回は屋根をぐっと下げて通過しましたが、本当にアーチに手が届きそうなほどの低さでした。
中之島界隈は、川沿いをゆっくり散策したり、川に面したカフェで休憩したり、水辺に親しむのに絶好のロケーション。堂島川沿いには船着場も4カ所あり、まさに水都大阪の魅力を堪能できる、先駆的なエリアなのです。 吉城さんによると、昼の風景はもちろん、ビルに明かりが灯る夜景も抜群とのこと。ぜひナイトクルーズでアーバンリゾートな気分を体感してください。
ゆるゆるほっこり、木津川沿いはのんびりムードがいい感じ。
安治川で方向転換をして、船は木津川を南へ下ります。アーバンな堂島川の風景から一変、木津川沿いはのんびりとした雰囲気。水の回廊は、川ごとにガラリと表情が変わります。「このあたりは、水と共に暮らしてきた昭和の大阪の片鱗が残っているエリア。船も観光用ではなく、いわゆる作業船が多く停まっています」と吉城さん。
木津川沿いも遊歩道が整備され、水辺の回遊性がアップ。2017年に完成した木津川遊歩空間「トコトコダンダン」は、地域の人が花を育てたり、ヨガを楽しんだり、水と自然に親しむスポットになっています。護岸に描かれたウォールペイントのアート作品も、水辺の風景のアクセント。
京セラドーム大阪を眺めながら進んでいくと、道頓堀川、尻無川とぶつかるエリアに。ここからいよいよ道頓堀川水門をくぐり、道頓堀へと進んでいきます。
グリコの看板にテンションが上がる!道頓堀川で、観光客気分を満喫。
道頓堀川の入り口は、近未来的なデザインの道頓堀川水門。この水門、すごいのは上屋のデザインだけじゃないんです。その仕組みを、一本松さんに教えてもらいました。
「ここは昔、扉が一枚の水門だったんです。でも一枚しかないと、水門の外と中の水位が同じときしか開けられない。そこで約20年前に、2枚の扉を持つこの水門ができました。1枚を開けて船を入れて閉め、次に2枚目を開けて船を通す。外の川と中の川の間を作ることで、水位の影響を受けないんです。」
この2枚の扉を持つ水門を「閘門(こうもん)」と言うのだそうです。この閘門のおかげで、道頓堀川の水位は、一定に保たれているんですね。
堀江をゆるゆると船は進みます。かつてこの辺りは材木の貯木場で、川にはいかだのように木材が浮かんでいました。周辺は製材所も多かったそうです。今ではすっかりきれいに整備され、湊町リバープレイスなど水辺の施設も充実。
さあ、いよいよ大阪を代表する観光スポット、戎橋へ。散々見慣れているはずなのに、近づいてくるグリコの看板にテンションが上がります。吉城さんによると、昔の道頓堀はもっと幅が広かったそう。埋め立てられて、だんだん狭くなってきたそうです。
船が通るとまわりの人がみんな手を振ってくれます。よく通る場所なのに、船に乗っているだけでものすごく観光客気分が味わえるのが新鮮。陸の上と船の上、視点が変わるだけで、こんなにも気分が変わるんですね。
2021年には新施設もオープン、東横堀川はこれから絶対くるエリア。
日本橋を過ぎ、船は川を90度直角に曲がって、東横堀川へ入ります。この川はもともと、大阪城のお堀として掘られたもの。大阪でいちばん古い堀川なのだそうです。
真上を走る阪神高速一号環状線の柱が並び、神殿のような雰囲気。川にかかる橋もそれぞれデザインが凝っていて、鉄筋製とコンクリート製の橋がほぼ交互にかかっているそうです。左右の景観は望めなくても、意匠の違う橋が目を楽しませてくれます。
実はこの東横堀川の周辺は、これから水辺のスポットとして注目されそうな場所。この夏には、マリーナやレンタルスペースを備えた川とまちの拠点「β本町橋」が開業します。高い護岸も少しずつ改良され、水辺の風景ももっと楽しめるようになりそうです。一本松さんも「陸と水辺をつなぐような、まちと地続きになった親水空間になるといいですね」と期待を寄せます。
そしてついに、東横堀川の水門に到着。ここが「水の回廊」をぐるりと巡る船旅のゴールです。
川ごとに表情も風景も一変!大阪人こそ、船で体験してほしい。
今回「水の回廊」をクルーズして、川ごとに表情が全く違うことに驚き。大大阪の発展の名残が見える旧淀川(堂島川・土佐堀川)、住宅地や倉庫の間を進む木津川、大阪随一の繁華街を通る道頓堀川、そして阪神高速の下にひっそりたたずむ東横堀川と、わずか90分でものすごい旅をしたような気分が味わえます。
そしてなにより、大阪ってこんな街やったんや……という発見がいっぱい。知らない場所がたくさんあったのはもちろん、知っている場所も川から見るとぜんぜん違います。視点を変えるだけで、こんなにも非日常感が味わえるのか!と目からウロコの経験でした。
最後に、一緒にクルーズしてくれたモデルのおふたりにも、感想を聞いてみました。
毬乃さん「川が環状線みたいに一周していることを始めて知りました!レトロな中之島、大阪らしい道頓堀、まわるエリアによって景色が変わるから飽きないです。あっという間でした。」
修一くん「印象に残っている風景は、桜ノ宮あたり。両岸が全部桜なので、満開の時期はすごくキレイだろうなと思います。」
遠出や旅行が気軽にできない今だから、リバークルーズで地元・大阪観光を楽しむのもアリ!川から見れば、また違った大阪の魅力が発見できますよ。
水都大阪の魅力発見!水の回廊 春爛漫クルーズ
イベント期間:3月22日(月)~28日(日)
場所:八軒家浜および水の回廊周辺
期間中、ラリーポイントを周り大川さくらクルーズの割引券などがもらえる『御舟印ラリー』を開催。作家 本渡章さん監修の古地図とともに書家 真澪さんがイメージして書き上げた「書」を集めて回ろう。27日には川の駅はちけんや付近で、盛りだくさんの『水辺の春爛漫ステージ』も開催。また27日・28日には大阪市中央公会堂前広場でジャンピングバルーンも実施。この春は、水都大阪の水辺を存分に楽しもう。