みんなの人生に音楽で関わりたい。『日本音泉紀行』をリリースしたビートメイカー・NICKELMANが生み出す、そのビートから始まる体験と世界。


ビートとアートワークを並行して作りながら、どんどんシンクロさせていく。そんな作り方に変わっていった。

ここからNICKELMANさんのビートメイクについて色々と聞けたらと思います。いつもどのような感じでビートを作っていくんでしょうか?

例えば昔は、「サンプラー・SP303のコンプをかけてビートを作ると、おもしろい音像になるんじゃないかな」とか。どこかに起点を置いて、そこからイメージを膨らませていく感じでした。ただ、今はかなり変わりましたね。

気になります!

カナダのレーベル・URBNETから『BUTTER WAX』というレコードをリリースしたんですが、そこが自分の中でのビートメイクが変わり始めたきっかけです。その作品は自分のアートワークをジャケットにしてて、HIPHOPのアルバムだと分かるように使用してる機材を入れたり、なめらかでクールな音のイメージを想起させるためにバターのパッケージをアレンジしたり。ビートとアートワークを並行して作りながら、どんどんシンクロさせていくような作り方に変わっていきました。その次にリリースしたアルバム『Mangoes』はソウルミュージックをサンプリングした作品なんですが、100%フレッシュビーツというイメージから着想し、マンゴーの甘くてジューシーなテイストを表現しています。

ジャケットのポスターがこちら。自身の作品にコラージュやドローイングを施すアートワーク名義・55555としても活動。

音源だけでなく、アルバムそのものにもストーリーを持たせると。ビートとアートワークを並行で作ってる時って、頭の中はどんな感じになってるんですか?

その時の自分にFEELするビートから作り始めるんですが、自然とアートワークが頭に浮かんでくるようになったんですよ。それでシンクロするように作っていくとどんどん双方向にイメージも広がっていってね。レコードのジャケットって、キャンバスだなと。僕にとっては音楽作品でもあり、アート作品でもあるんですよ。そんなスタイルで作品をリリースするようになったのが、2020年頃でした。

音楽もアートも、双方向にイメージが広がっていくと頭の中が混乱したりは?

双方向にイメージが広がり、シンクロしていく流れを考えてるのは銭湯で風呂に入ってる時なんですよ。

そうなんですか!?

ある日、湯に浸かってぼーっと考えを巡らせてたら、ビートとアートワークがシンクロするようになったんです。それ以来、毎日銭湯に行くようになり、創作活動の一部に銭湯が組み込まれました(笑)。いろんな情報を遮断して湯に浸かることで、頭もリセットされてクリアになるからですかね。自分にヒットするインスピレーションが浮かびやすいんですよ。

頭もリセットされてクリアになる。その感覚は分かります!NICKELMANさんにとって銭湯は体を癒す場所でもあり、創作活動の整理や答え合わせをするような場所でもあるんですね。コロナ禍が明けてからは海外ツアーにもよく行かれてますが、印象的なエピソードがあれば聞かせてほしいです。

上海やLA、台湾などに行きましたね。それぞれにエピソードはあるんですが、例えば上海に呼ばれたのは、心斎橋にあるレコードショップ『ISANDLA』がきっかけ。僕のレコードを扱ってくれてるんですが、普段はしない海外へのシッピングをしてくれてね。その相手が上海で『fRUITY SHOP』というレコードショップのマネージャーをしているキャシーでした。そんな縁で直接連絡が来て、上海でツアーをするようになったり。

うわー素敵な広がり方ですね。

LAの話だと、伝説的なパーティー『Low End Theory』のボス・DADDY KEVが新たに始めた『SCENARIO』というパーティーが、日本でも開催されたんです。日本ではDADDY KEVとBUN FUMITAKE TAMURAさんの2人がオーガナイズしてて、BUNさんからお話をいただいて『SCENARIO』の大阪開催をお手伝いさせてもらいました。それがきっかけで、KEVに「LAの『SCENARIO』でビートを流したい!」って言ったら、「11月1日の水曜日はどうだ?」と言ってくれて。速攻で飛行機のチケットを取ったんですよ。『SCENARIO』はLAのダウンタウンでやってるフリーパーティーで、僕はHIPHOPとハウスのセットで挑んだんですが、ドラムンベースにダブステップ、テクノとか、とにかくジャンルレス。集まってる人種も多種多様なイベントでしたね。しかも『FUZZOSCOPE』というレーベルのクリスチャンからの紹介で、LA発のビートパーティー『BEAT CINEMA』にも出演しました。この2つのパーティーに出演できたことは、自分にとってとても刺激的でいい経験になったなと。あとは、僕がリリースした『日本音泉紀行』にも繋がる体験もあって…。

気になります。その話も聞かせてください!

LAには僕が大好きな『LEAVING RECORDS』というレーベルがあるんですが、たまたま滞在期間中にイベントしてたから行ったんですよ。場所はエリジアン・パークという大きな公園でした。アンビエントミュージックのイベントで、みんなピクニックスタイルで寝そべって音楽を聴いてて、とにかく気持ちよさそうでね。その光景を見て気づいたんですよ。「これは、音楽の温泉やん!」って。僕自身も、温泉に入ってるような癒しを感じたので、なおさらでした。

音に浸かり、音に癒される的な。

ダウンタウンのパーティーで知り合った人も行ってたし、LAの人は音楽に癒しを求めてるんだなと。あの公園の雰囲気とアンビエントミュージックが相まって、温冷浴した時の気持ちいい感覚と重なったんですよ。

体験としてもそうですが、NICKELMANさん自身のビートメイクにも影響はありましたか?

そうですね、インスピレーションはとても受けたと思います。リラックスミュージックやメディテーションミュージックなどを一括りにしたNEW AGEというジャンルがあるんですが、ベースやビートがあまり主張してないんですよ。だから僕は、NEW AGEやアンビエントの精神的な癒し、世界観を取り入れたビートを作ってみたいなと思って。“NEW AGE BEATS”ってジャンルは多分ないんですけど、自分ならではの表現かなって思ってます。

NICKELMANさんならではのNEW AGE BEATS。確かに、『日本音泉紀行』にも繋がってますよね。

あと温泉繋がりで言えば、台湾ツアーも印象的でした。東京のカセットテープレーベル・ODD TAPE DUPLICATIONが、日本人と台湾のクリエイター集団・NOD TOWNとのコンピレーションテープを作ったんですよ。僕も1曲参加してたんですが、台湾ツアーの熱量はすごかった。日本の場合は「誰が来る!」とか、人の名前で選んでる印象が多いけど、台湾の場合はシーンが育ち出してる段階だから、アンダーグラウンドなイベントでも人が集まるんですよ。みんな純粋に音楽を楽しんでる感じ。ライブハウスもびっくりするくらいパンパンで、最後まで大盛り上がりでした。そんなツアーの空き時間を利用して、ちゃんと温泉にも入ってきました(笑)

この写真の盛り上がりもすごいですよね!で、温泉はどちらに?(笑)

桶美さんに台湾のおすすめの風呂を聞いて、台北にある北役の瀧乃湯に行ってきました。めちゃくちゃ湯も熱くて、水風呂はなかったですが、カランでしっかり温冷浴をしましたね。聞けばその昔、日本人が温泉を伝導したと言われてる場所で、温泉マークもしっかりあったんですよ。

何十万回再生を誇ったり、狙ったりするよりも、体験と重なるものを生み出したい。例えば僕の作品が、その人のレコード棚に10年間ある方が価値はあると思うし。
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Profile

NICKELMAN

数々のレコードやカセットテープのリリースで知られる日本人ビートメイカー。日常生活のリズムから生まれる感情を、音楽とアートで表現することを大切にしている。その型にはまらない自由な表現方法で、リスナーから着実にPROPSを集め、自身の作品にコラージュやドローイングを施すアートワーク名義「55555」 としても活動。レーベルメイト FROGMANとのビートメイカーユニット FREEMANZ PRODUCTIONとしても活動し、大阪を拠点にdeepconstruction recordsを主宰。様々なアーティストとのコラボレーションや、URBNETやVINYLDIGITALといった海外の著名レーベルからのリリースなど、幅広い活動を精力的に行う。近年では日本全国ツアーに加え、LA(Scenario、Beat Cinema)、台湾(NODTOWN)、上海(FRUITY GROOVE)での海外ツアーも成功させている。2026年2月6日、毎日の銭湯通いを経て湯煙の中で生まれたアルバム 『日本音泉紀行』 が、桶 MUSIC FACTORYのサポートのもとLPとカセットテープでリリース。

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