トラックで、映像で、リリックで、今の自分をさらけ出したい。大阪を愛するマルチアーティスト・ISSEI TERADAの“初”挑戦。
ある種の“おせっかい”ができるのが強み。

ISSEIさんが手がけるトラックの世界観は本当に幅広い印象があります。若い時に聴いていたヒップホップのプロデューサーから影響を受けているような感覚はありますか?
プロデューサーというより、僕はヒップホップ以外のジャンルもめっちゃ好きなんですよ。テクノ、ジャズ、ソウル、あとJポップとか歌謡曲もめっちゃ聴きます。シチュエーションごとに聴きたい音楽も変わるんです。だから僕のApple Musicのプレイリストはものすごく雑多です(笑)。プロデュースする曲の系統が幅広いのは、そういう理由じゃないかなと。
いろんなカラーの曲を作れてしまうだけに、テーマ設定が難しいんじゃないかなと思うんですが、曲ごとのカラーはどう決めていくんですか?
自分の曲を作る時は、モデルとなるアーティスト像を“降ろす”感覚ですね。「今回はこの人っぽい世界観でやってみよかな」みたいな。例えば、USのプロデューサーのテイストをそれとなくイメージしてみたり。…という意味では、今まで聴いてきた音楽の影響はもちろんあると思います。最近Rude-αと、梅田サイファーのKennyDoesと作った曲とかは、The Prodigy(ザ プロディジー)のドラムの打ち方をやってみたりしています。それとリリックも自分自身のことを書いていないことも多いですね。架空のキャラクター目線からのストーリーテリングな内容やったり。もちろんリアルを歌ってることもありますが、フィクションも割と多めです。
すごい!しかもそれが“ISSEI節”になるのもまた面白いですよね。同じく映像も、何か影響を受けたり参考にしている作品はありますか?
映画でいうと『スター・ウォーズ』の大ファンで、映像作品はほぼ制覇するくらい好きです。だからあの映像美を自分でも作り込んでみたい!って思うんですけど、予算や環境が限られているMVであの壮大な映像を再現するのは難しいですよね。でも、何らかのテイストを取り入れることはできるんです。例えば仮に、この商店街のなかでビデオを撮ろうってなった時に、『スター・ウォーズ』みたいな世界観にはできないけど、『スター・ウォーズ』でよく使われる引きの絵で人がポツンといる、みたいな技法を取り入れることはできるかもしれない。
なるほど。撮り方・見せ方の部分で好きな作品からサンプリングするという技ですね!
そういう「冷蔵庫の中にあるもので何を作れるか」みたいな工夫がめっちゃ好きですね。もしかしたらインディーズのアーティストの映像を作ってきたからこそ鍛えられたスキルかもしれないです。
アーティストのMVを撮る時にも、プロデューサー的な視点で提案することもあるんですか?
そうですね、初めてMVを頼んでくれる若手のアーティストさんとかは、どこを狙ってるのかを聞いたりします。その音源でただ映像を作るだけじゃなく、どんなアーティストになりたいかとか、どんなファンを獲得したいかとか。

撮影や編集だけでなく、ディレクションやトータルプロデュース的な部分までできるのは、若手のアーティストにとっては頼もしすぎますね。
でも、たまにアーティスト本人と事務所の方向性が全然噛み合ってないこともありますけどね(笑)。それで最終的に、僕のところに「どう思います?」って相談がくることもあります。
難しそう!そういう時はどうするんですか?
一応、僕はアーティストの個性だったり意図を尊重したい派ではあります。結局本人が納得せずに撮ってるのって、映像越しに伝わってしまうんですよね。だから本人のやりたい方向に向かいつつ、事務所も「それ良いかも」って思わせるのが一番ベスト。そういう時こそ僕自身が音楽をやってるというのが生きてくることがあります。

たしかに。ISSEIさん自身がアーティストとしてやってきた分、説得力がありますもんね。
「こういう見せ方が得意なんだったら、もっと出していった方が面白いかもしれないですね」とか、さりげなくね(笑)。そういうある種のおせっかいができるのは、自分の強みだと思います。

ISSEI TERADA
ヒューマンビートボクサー、ビートメイカー、映像ディレクター、デザイナー、そしてフロントマンと多様な顔をもつ大阪出身のマルチクリエイター。ヒップホップを軸に幅広い音楽のエッセンスを落とし込んだサウンドと、洗練されつつもどこかに彼独自のユーモアを感じさせる映像作品の二刀流で幅広く活動し、今ではメジャーシーンからのオファーも多数。Produce・Lyric ・Act ・Director...と、さまざまな形でクレジットされる彼の名前だが、2025年にはそのアーティストネームをISSEIから本名・ISSEI TERADAへ改名。それを皮切りに、シングル・EPのリリースに続き、初のソロワンマンを敢行。長いキャリアにおける転換点を経て、さらなる飛躍を予期させる。