出会いは偶然にして必然!?総勢11名のアーティスト・コレクティブ「Soulflex」が追求する、型に囚われないクリエイティブの在り方。
ビートメイカーのMori Zentaroやシンガー/ラッパーのSIRUP、ZIN、Ma-Nuをはじめ、フォトグラファー、ペインターなど総勢11名からなるアーティスト・コレクティブ「Soulflex」をご存知ですか?日常にすんなり溶け込むチルなサウンドが持ち味の彼らは、2010年に大阪で結成して以来、音楽を主体にしたクリエイティブな表現を行ってきました。去る9月、10月には彼ら主宰のパーティー『MILESTONE』を東京、そして大阪のなんばHatchで開催。いずれも大盛況のうちに幕を閉じました。個々での活動を行いつつ、クルーとしての在り方を模索し続け、今年で結成12年目を迎えたSoulflex。今回はビートメイカーのMori Zentaroさん、サックスのKenTさん、ドラムのRaBさん、フォトグラファーの木村華子さんにご登場いただき、気になる結成のきっかけや続けることの大変さ、今後の活動について伺いました。これを読み終えたら、彼らの音楽にぜひ耳を傾けてみてください!
メンバー全員、音楽以外のカルチャーも好き。音楽という枠に捉われず、僕らのクリエイティブを追求したい。
Soulflexのようなアーティスト・コレクティブは、日本ではまだ珍しい活動だと思います。皆さんは、主にどんなことをしているんですか?
Zentaro:ビートメイカーやコンポーザーとして、アーティストに曲を提供したり個人名義の曲を出したりしています。最近は、BE:FIRSTの1stアルバム「BE:1」に参加させていただきました。
RaB:Soulflexでの活動をメインに、メンバーのSIRUPやZINのサポートをしたり、他のシンガーソングライターのバックやレコーディングに参加したりしています。
KenT:RaBと同じく、主にメンバーのサポートをしています。今年からソロでの仕事も増えてきて、Aile The ShotaやHiplinの曲を吹かせてもらったりDENIMSやSIRUPのホーンセクションを書かせてもらったり、少しずつ幅を広げています。
今年から、というのは何かきっかけがあったんですか?
KenT:シンガーの菅原信介がアルバムを出す時、「休みの日には」という曲のホーンセクションを初めて書いたんです。演奏に限らず手広く活動しているアーティストが多い中、僕はずっとサックス一本でやってきていたので、やればできるんだぞと示したい思いもあって。これを機に広がればいいなと思っていたら、サックス以外の仕事も少しずつ増えてきました。
ちなみに、Soulflex結成のきっかけを作ったのはZentaroさんだったんですよね。
Zentaro:そうですね。僕は高知出身で、高校卒業後に音楽がやりたくて当時のバンド仲間と一緒に大阪に出てきたんです。だけどそのバンドがあっけなく解散してしまい、これからどうしようかと悩んでいました。それが13、14年前のことで、その時期にSIRUPや、RaBとMa-Nuのバンドにそれぞれ出会って、この2組をくっつけたらすごくおもしろくなるんじゃないかと思ったんです。というのも、僕は2000年頃に活動していた「ソウルクエリアンズ(Soulquarians)」というアメリカのクルーに憧れていて。彼らは個々でアーティスト活動をしつつ、時折集まって作品を生み出していて、それに影響を受けて「僕もこんなことがしてみたい!」という思いを抱えていました。
僕自身はその頃DTMを使った音楽制作をスタートしたばかりだったんですが、デモを聴いたSIRUPがトラックを作ってほしいと言ってくれたんです。2人で作った曲をライブで披露する際にRaBにドラムをお願いして、それから一緒に活動していくうちにSIRUPがZINと繋がって……と、雪だるま式に出会いが連鎖していきました。そうしていくうちに、どうせなら名前をつけて活動しよう、と2010年に結成したのがSoulflex。KenTはZINと親しかったので、その流れでという感じです。
フォトグラファーの木村さんは、どういう繋がりで加入されたんですか?
木村:大学時代、軽音部の友人に「めっちゃ歌上手い子がおるねん」とSIRUPを紹介されて仲良くなって、卒業後にSoulflexのアー写を撮ってほしいと連絡をもらったんです。そこで初めてSoulflexを知ったんですが、聴いてみるとめちゃくちゃ良くて。後日SIRUPから「入らへん?」と誘われて、おもしろそう!と軽い気持ちで飛び込んだんです。今考えると、まさかこんなに長く一緒にいることになるとは思わなかったですね。
Zentaroさんはソウルクエリアンズに憧れていたと仰っていましたが、どうして音楽という枠を飛び越えて、フォトグラファーやペインターと一緒に活動したいと思ったのでしょうか?
Zentaro:メンバー全員、音楽以外のカルチャーも大好きなんです。アートや映画、アニメとかの話でめちゃくちゃ盛り上がることもあるし、そこを音楽と分け隔てなく“カルチャー”として捉えていて。だからミュージシャンに限らず、一緒に活動できるのであればしていきたいと考えていたんです。ペインターのhitchも、主催イベントでのライブペイントや、CDのアートワークをお願いした流れで加入することになりました。
クリエイターを迎えたいという絶対的な意志があったというより、フィーリングが合ったから自然と加入することになったんですね。メンバーにクリエイターがいることの良さは、どういうところだと思いますか?
Zentaro:ペインターやフォトグラファーがいると世界観が作りやすいし、視覚的なイメージも一緒に伝えられるところが魅力だと思いますね。ソウルクエリアンズにしてもアートワークやビジュアルイメージになんとなく統一感があって、彼らのカルチャーが色濃く反映されていると感じます。音楽だけじゃなくビジュアルも併せてのクリエイティブを追求できるってすごくいいなと思います。
なるほど。逆に、難しさはありますか?
Zentaro:正直、難しいことの方が確実に多いです(笑)
KenT:メンバー11人、それぞれ個性が強いヤツらばかりなので、ぶつかることも山ほどありますよ(笑)
Zentaro:実際ソウルクエリアンズも3年くらいで空中分解してるんです。恐らく個々の活動が忙しくなって、自然とクルーという形では動かなくなったんじゃないかなと。だからというわけではないけど、クルーという活動形態がそもそも難しいものなんだとは思います。かつ僕らはかなり見切り発車で始めてしまったところもあるので、やりながらベストな方法を模索しています。みんな個々での活動もあるし、物理的に場所も離れてるし。そんな中で曲を出したりイベントをしたりするとなると、その動きをリードする人はけっこう大変だったりします。ストレスで眉毛が抜けた人もいますしね(笑)
KenT:僕っすね。この間の『MILESTONE』をメインで運営していて、思い切り抜けちゃいました。
Zentaro:僕らは完全にインディペンデントでやってるので、主催イベントの企画・運営も自分たちでしています。だからスケジュールを組んだり会場を押さえたり、そういう動きを個人の活動と並行してこなさないといけないからすごく大変で。単純に11人の意見を合わせるだけでも、かなり労力を使います。
具体的にどういうタイミングで困難を感じますか?
KenT:まさに今、この瞬間ですね。Soulflexとしては9月と10月に終えたばかりの『MILESTONE』の反省をすべきやけど、僕やRaBはSIRUPの武道館ライブを控えているから時間が取れなくて(取材は11月8日、ライブは11月11日)。今すぐ話したいメンバーもいるやろうし来年の動きも相談したいけど、まずは目前に迫ったライブの準備をしないといけない。Soulflexを大切にしたいのは山々なんですが、むやみに優先できない歯痒さみたいなものはいつも感じています。
Zentaro:常にSoulflexを一番に考えて動けないのは、普通のバンド活動などとの大きな違いですね。これまでの12年間ずっとこのペースで続けてきたわけじゃなくて、ここ数年の勢いのある流れが生まれたのは2018年のことだと思います。
RaB:あの一年が転期ですね。あれがなかったら、今の僕らがあるかどうか……。
毎月曲をリリースしていた年ですね。何かきっかけがあってのことでしょうか?
Zentaro:そのリリースが始まる少し前に、僕の中で色々と考えることがあって。ビートメイカーとしてやっていくのかプレイヤーとしてやっていくのかとか色々、個人的にかなり手探りしていた時期だったんです。その上でSoulflexのクリエイティブの大きな比重を担うのがすごくしんどくなってしまって、それもあってしばらく距離を置かせてもらいました。
KenT:それまではZentaroがリードして曲作りをしてたんですが、それ以外のメンバーで2曲ほど作ってリリースしてみたんです。それが案外楽しくて、僕ら結構いけるやん!って。
Zentaro:曲ができてみんなでアガっている様子は、LINEグループで静かに見守っていました(笑)。その後、紆余曲折あって僕と他のメンバーみんなとで話し合いの場を持ったんです。そこで、みんながまた一緒にやりたいと言ってくれて、自分も気持ちを固めました。それで気がつくと話が大きくなって、せっかくなら1年間がんばって、毎月曲をリリースしようという話になりました。
RaB:めちゃくちゃ大変やったけど、あの1年があったから今もライブでやる曲がたくさんあるんです。
Zentaro:あの時期はまさに自転車操業で、血反吐を吐くくらいしんどかったし、ぶつかったことも度々ありました。やっぱり自分たちの名前を懸けてやるものやから妥協できなくて。なおかつサイクルもタイトだったので、めちゃくちゃキツかったです。
木村:曲のビジュアルも毎回変えていて、Zentaroさんはその話し合いにも参加してくれていました。音楽とアートワーク、並行して進行するのは大変だったと思います。
Soulflex
2010年に大阪で結成。SIRUPやMori Zentaro、ZINなどを擁するシンガー、ラッパー、ビートメイカー、フォトグラファー、ペインター、プロデューサーなど多彩なメンバーで構成された総勢11名のクリエイティブ集団。それぞれのクリエイティブや趣味・思考をミクスチャーした心地いいサウンドをリリース。
シマタニケイ