ポップなドーナツの裏に秘められた求道心。人との縁をエネルギーに疾走を続けるshe she delivery・音々さんが夢見る未来。
定番のSHY BOYは「ひとりでも遊びに来て」とメッセージを込めたフレーバー。

she she deliveryの魅力は、なんといってもポップな世界観だと思うのですが、ご自身があえて言葉にするなら、どのようなコンセプトか教えてください。
一言で表すのは難しいですが、普通のことをやっても面白くないし、かといって「映え」を意識しただけのものも好きじゃなくて。自分の髪色や服を選ぶのと同じ感覚で、着せ替えるようにドーナツのビジュアルも楽しみたいと思っています。直感的に「素敵だな」と思ってもらえる見た目と、一口食べて幸せになれる味の両方を追い続けています。以前コラボしたアーティストのツダハルトくんや、Tシャツを作ってくれたデザイナーのツネくんなど、感性が似ているクリエイターに出会えたことも、この活動にとってかなり大きかったですね。


Instagramも、単にドーナツの写真の羅列ではなく、アパレルブランドのルックブックのような構成ですね。
ドーナツの良さって、ピザやホットドッグと同じで手軽に食べられることだと思うんです。歩きながらや何かをしながら片手で食べられるし、なんなら食べかけをポケットに入れて持ち運んでもオッケーなストリートフード。そんな、街の空気感や生活に溶け込むスタイル、ラフさを大切にしたいので、写真はあえてお店の中ではなく、なるべく屋外で撮るようにしています。
確かに「こういうふうに楽しんでほしい」というメッセージが伝わってきます。フレーバー名もユニークですが、どうやって考えているんですか?
いろんなパターンがありますが、一番人気の「SHY BOY」というフレーバーは、トッピングした小さな星が控えめに見えたことから名付けました。けっこう意外に思われるのですが、私自身も最初は人見知りで、自分から積極的に喋るタイプではなかったので、そんな性格も重ねていて。ポップアップイベントに来る子たちって、おしゃれで社交的な子が多いけど、「ひとりで遊びに来てもいいんだよ」みたいなメッセージも込めています。

実際に、込められた意味に気づく人もいますか?
私から説明することはほとんどないのですが、本当にひとりでふらっと来て買い続けてくれている男の子がいて。ある日、別の女の子が「SHY BOYってどれですか?」と尋ねてきて、もしかしてと思って聞いてみると、ふたりはカップルだったんです! 予定があって彼が来られないからと、おつかいで彼女が来てくれたとのことでした。ひとりで来てくれたことも、素敵なふたりの間で「SHY BOY」が共通のワードになっていたことも、すごくうれしかったです。

she she deliveryならではのエピソードですね。カラフルなビジュアルもイメージソースがあるのでしょうか?
まずは見て楽しい気分になれることが第一です。あとはやっぱり、出店先の雰囲気を想像しますね。ファッションやアートだけでなく、音楽の影響を受けることもあります。分かりやすい例だと、J Dillaのレコードのアートワークとして登場するドーナツをイメージしたフレーバーや、レコードアダプターを表現したものなどがあります。そもそも7インチレコードを「ドーナツ」と呼ぶし、つながりの深いモチーフですよね。このふたつは、レコードが置いてある金沢の喫茶店『メルティングポット』で出店したときに作ったものですが、お客さんにもそれが伝わり「好きなカルチャーでつながれた!」という手応えと喜びがありました。

音々
石川出身。調理系の専門学校に進学するのを機に大阪へ。2023年に一度帰郷するも、再び拠点を大阪に移し、she she deliveryの活動をスタート。谷町4丁目のピザショップ『Henry’s PIZZA』や新町の古着店『beeens』に勤務しながら、ポップアップ出店やオーダー受注をこなす。世界観を投影したアパレルやステッカーなども人気。
Instagram: @__sheshe___
Instagram: @sheshedelivery