カラフルなパッケージにときめく『YACCO -感じのよい豆富店-』の店主・神原裕さんが追求する、新しい“町の豆腐屋さん”のカタチ。

あくまで食卓の脇役だけど、日本の食文化に欠かせない食材の1つである豆腐。昨今急激に姿を消しつつある“町の豆腐屋”に着目し、昔ながらの文化を新しい形で受け継いでいこうとしているのが、神戸・三ノ宮にある『YACCO -感じのよい豆富店-』。「0歳から100歳まで楽しめる豆富」をコンセプトに、メインディッシュとしても楽しめる豆腐を提供しています。「豆腐の地味なイメージを変えたかった」と話すオーナーの神原裕さんが手がける豆腐は、おしゃれなイラストが入ったカラフルなパッケージデザイン。これまでの概念を覆すルックスに、手に取るだけで心が躍ります。今回は、神原さんに『YACCO』を始めたきっかけや豆腐にかける思い、今後の展望などを伺いました。気になった方は、ぜひ一度買いに行ってみて!
コーヒースタンドから豆腐屋へ。もっと家庭に寄り添い、イチから作れる何かを届けたいと感じ、辿り着いたのが豆腐屋でした。

『YACCO』をオープンした経緯を教えてください。
神戸の大学を卒業後、飲食店で経験を積んで独立し、イタリアンやコーヒースタンド、中華料理店など、さまざまな業態を経営してきました。ちなみに『YACCO』の前身は、トアウエストにあったコーヒーとマラサダの店『RAVO BAKE COFFEE』です。コロナ禍を機に店を閉めて移転先を探していたのですが、考えていくうちに、同じようなコーヒースタンドはすでに飽和状態だし、“映え”を狙ったメニューづくりにも限界を感じるようになっていきました。そこで、もっと家庭に寄り添い、イチから手がけた“何か”を届ける仕事がしたいと思うようになったんです。そんな時、旅行先の沖縄で出会ったのが、90代のおばあちゃんが作る島豆腐。その味に心を動かされ、「自分も作ってみたい」と豆腐作りの勉強を始めました。

沖縄で出会った豆腐がきっかけだったんですね。
そうなんです。いろいろ調べていくと、近年は年間300店舗もの豆腐屋が閉業し、逆に新しくオープンしているのは2〜3店舗だと知りました。もちろんお店の方の高齢化もありますが、一般的には豆腐って100円くらいのイメージがあるから高いとなかなか売れなくて、利益を上げるのが結構難しい食材なんです。それもあって新しく始める人が少ないのだと思います。
専門店ではなく、スーパーで豆腐を買う方も多いですもんね。カフェから豆腐屋への転身に関して、不安などはありませんでしたか?
カフェも豆腐屋もやってること自体は同じで、相手が目の前のお客さんかその奥にいる家族なのかという、アプローチする先が違うだけだと思うんですよね。料理も真面目にやってきたので、勉強さえすれば市販のものよりおいしい豆腐が作れるだろうと考えていました。

豆腐屋をやろうと決めて、まず何から始めたんですか?
まずはいろんな豆腐屋に行きました。自分の中で“おいしい豆腐”の定義がなかったので、おいしいと思う豆腐を探しに全国を回りました。印象的だったのは、「菜豆腐」と呼ばれる宮崎県椎葉村の郷土料理。豆腐の中に野菜などの具材が入った家庭料理の1つで、母親が昨日の残り物を入れて作ったりすることもあるんです。シンプルに素材としておいしいものを作るのは難しいけど、メインディッシュとしても楽しめるよう料理として提案すれば、おいしいと思ってくれる人も増えるんじゃないのかなって。

豆腐を1つの料理として提案する、面白い発想ですね。
町の豆腐屋さんって日本の昔ながらの文化の1つだと思うから、そこと共存できる道を探したくて、僕らは変わり種を担当できたらなと。『YACCO』では、山芋を荒めにすりおろして混ぜ込んだ「山芋豆腐」や、ペースト状のホワイトコーンを入れた「とうもろこし豆腐」、お酒のアテにもぴったりな「いぶりがっこ豆腐」など、他の食材を掛け合わせた豆腐をメインに製造しています。鍋に入れたりアレンジするのもいいですが、1番のおすすめはやっぱり冷奴。「とうもろこし豆腐」は塩を少量、「山芋豆腐」はわさび醤油、おすすめの食べ方もそれぞれパッケージに記載しているので、ぜひ参考にしてもらえたら嬉しいです。


神原 裕
岡山出身。大学進学を機に神戸に住み始め、卒業後はカフェに就職して30歳で独立。イタリアンやカフェなどの運営を経て、日本の伝統食である豆腐の製造&販売をスタート。年々減少する“町の豆腐屋”を残すべく、従来のイメージを覆すおしゃれな豆腐を提案する。

YACCO -感じのよい豆富店-
078-330-7531
神戸市中央区琴ノ緒町1-6-9
11:00〜19:00 日・月曜休