「ローカルとカルチャーの交差点に」。大阪・西田辺『W&B Delicious Service』の店主・小島亮介さんが描き出すグッドフィーリングな空間。
内装は全て自分たちで担当。8ヶ月間もの大規模な工事の末、どこもかしこもお気に入りの店が誕生しました。

内装も全て自分たちで工事されたと聞いています。
そうですね。ここはもともと街のお寿司屋さんだったんです。閉店して5年くらい経っていたんですが、テナント募集の張り紙も何もないまま空き家の状態で放置されていて。僕もテナントを探していた時期だったので、気になって覗いたりはしてたんですが、特に動きはなくそのままになっていました。
僕は『COZY』を辞めた後しばらく大工をしてまして、仕事中に怪我をしてしまい病院に行くため近所を歩いていると、この物件に不動産の看板が上がっているのを見かけたんです。気になってその場で電話をしてみたら、「今は雨漏りをしてるからテナント募集はできない。でも物件を見せることはできる」と言われました。とりあえず見に来させてもらうと、カウンターも冷蔵庫も水槽も、恐らく5年間そのままの状態でずっと残されていて、しかも雨漏りのせいでどこもかしこもぐちゃぐちゃ。今吹き抜けになっている2階部分は、もともと宴会場として使われていたみたいなんですが、床も壁も崩れ落ちてしまっていて、そら貸されへんやろなという感じでした。でももしかしたら……と思い、「逆にこっちで全部修繕するから貸してもらえないですか?」と大家さんに聞いてもらったんです。すると、「全部やってくれるならいいよ」と言ってくれて。そこから正式に借りる手続きをして解体工事をスタートしました。

工事にはどれくらい時間がかかったんですか?
めちゃくちゃ大規模な工事になって、トータルで8ヶ月くらいかかりました。1回全部スケルトンの状態にして、壁も作り直しました。

結構長くかかったんですね。というか大工もしてらっしゃったとは。
独立しようと『COZY』を辞めるタイミングで、お店を作るにも経験がないから、誰かに作ってもらうにしてもお願いする方法がわからないなと思って。1回勉強すれば具体的な希望も伝えやすくなるだろうし、自分の理想をカタチにするためにも現場を知ることが必要だと考えて、大工の仕事を始めることにしました。僕が選んだのが、リフォームをメインに古い建物をきれいにする仕事で、今の物件を見つけるまでの1年半ほど、解体から造作まで色々学ばせてもらいました。その期間があったからこそ、自分でお店作りをすることができました。
自分のお店をより良く作るために大工を始めたんですね。なんか小島さんの人生って、必要な時にタイミングがちゃんと巡ってきている感じがします。
ほんとたまたまって感じですよ。夏真っ只中のめちゃくちゃ暑い時に作業をしていたので、それもすごく大変でしたね。だけど周りの友達や知り合いが助けてくれて、なんとか完成させることができました。以前MARZELで取材していた昴くんや理子ちゃんも手伝ってくれたんですよ。
2人とお会いした時も、『W&B』さんのお話がたくさん出てきました。どれとか選べないかもしれないんですが、特にこだわって作った部分ってありますか?
うちのお店、イス以外は全部手作りなんです。既製品だとカウンターとテーブルを合わせるのって難しいでしょ。自分で材料とかも揃えて手作りしました。

それはびっくりです!既製品だと思っていました。
そう言ってもらえると嬉しいです。カウンターの上に取り付けている電気もオリジナルなんです。壁に使っている木材も1枚1枚自分で選んでいて、それぞれ木目の見え方が違うので、貼り合わせる順番も考えながら作りました。どこもかしこもこだわり過ぎなくらいこだわっています。大工の仕事も好きなので、今でも呼んでもらえれば大工として現場に行くこともあるんですよ。
アーティストの個展などのイベントもされていますよね。
うちのロゴを作ってくれているTakeshi Wadaっていうアーティストがいて。<木梨サイクル>や<楽天イーグルス>にイラストの提供をしている同い年の子なんですが、18歳くらい時に知り合ってからずっと仲が良くて、最初に開催したのも彼の個展でした。その個展を開いたのをきっかけに、イベントをやらせてほしいと言われることが増えましたね。

Takeshi Wadaさん!私も存じ上げています。
内装のデザインを考える時も、タケシがラフを描いてくれて。タケシと僕のやりたいことを考えて、それをカタチにしたのが『W&B』になります。
デザインできる人と、それをカタチにできる人がいれば、何でも作れちゃいますね。
割と何でもできますね。企画は大体持ち込みで、夜のDJイベントが多いんですけど、みんなから「この日空いてる?使わせて~」って連絡が来てイベントをやることがほとんどです。8月も4回くらいイベントがあります。DJブースはもともと作っていて、知り合いのDJが遊びに来たらちょこっと回してくれることもありますね。
地元を大切にしながらも、どんどん色んな世界とのつながりが広がっているんですね。それって羨ましいなと思います。
音楽好きな子もいれば、アートが好きな子もいて。そんな人たちが集まって仲良くなってイベントをやって、またそこに新しい人たちが遊びにきて仲良くなる。そんな流れでどんどんコミュニティが大きくなってきているように思います。「あの人がイベントをやってたから僕らも使わせてほしい」っていう問い合わせも多くて。こちらとしてもそんな風に広がってくれるのがありがたいです。さっき言ってた80代のおじいちゃんも、イベントに遊びに来てくれたりするんですよ。
本当に間口が広いんですね。きっと小島さん自身、どんな人に対してもフラットに接することができる方だから、周りの人たちもみんな仲良くなれるんでしょうね。




小島 亮介
1992年生まれ。高校卒業後、飲食店などで働きながらお金を貯めて、20歳の時にワーキングホリデーでカナダのバンクーバーへ。1年半ほど現地のコーヒーショップで働いたのち、帰国してコーヒーの移動販売を始め、オーナーの誘いで『COZY Coffee Spot』を帝塚山でスタート。6年ほど勤務したのち、2023年に独立して『W&B Delicious Service』をオープン。大工としても活動する。

W&B Delicious Service
大阪市阿倍野区阪南町5-21-3
06-6625-7505
7:00〜17:00、金土〜23:00