ラムソン、メイク、BLACK SHEEP。大阪屈指のHIPな立ち呑み屋を手がける高橋裕基さんが、愉快な仲間たちと追求する、楽しいこと、やりたいことの中にあるもの。
コロナ禍の時は、社員みんな集めて解散宣言をしかけてました。「売り上げが全くないから、俺に遠慮せずに就活してくれていいよ」って。
『BANQUET』は鳴かず飛ばずの状態だったと言ってましたが、十分な人気店だったと思います。そこから2店舗目を北浜に出店することになりますが、どんな経緯で?
当時、2店舗目の出店場所を探してて、僕自身ももっといろんな所に知り合いを増やさないとアカンなと思ってたんです。柄にもなく経営者がたくさん集まる朝会とかにも行ってましたからね。
確かに、浮いてそう(笑)
でも、そこで知り合ったのが、生駒ビルヂングのオーナーさんでした。色々と話す中で、「うちのビルに入りませんか?」と声をかけていただけて。
生駒ビルヂングと言えば、北浜の超一等地ですし、歴史的建造物。そんな簡単に入れる場所でもない上、天満とはまた客層も人の流れも違います。
出店する1年前くらいから北浜でよく飲んでたんですよ。『ひらやま』さんとかに行ってて、北浜辺りの雰囲気もいいなと思ってました。その頃からだんだんと自分のやりたいことが明確になりつつあって、アジアカルチャーに傾倒してる時期だったので、ベトナムに社員旅行に行ったりもしてたんです。そういう背景もあった中で話をいただき、実際に内見した瞬間に、絶対にここでやろうと決めました。資金は国金で借り入れ枠全部使い切って借りて、ここに全てをかけようと。
確かに、その覚悟を持てる場所ですよね。オープンして瞬く間に人気店になりましたが、ラム串をはじめ、エスニック料理のスタンドスタイルっていうのも構想にあったんですか?
アジアカルチャーに傾倒してる話はしましたが、その時に『故郷』っていう中国人の方がしているお店にもよく行ってて、「ラム串でめちゃお酒飲めるやん!」と思ってたんです。これをアテにして、ラムを軸にした業態なら当たらんことはないやろうなと。ただ、ちょっと現地寄りすぎるから、もう少し僕らナイズしてしっかりとパッケージングしたらイケる。いい飲みのコンテンツになると考えてました。生駒ビルヂングという最高のロケーションも相まって、それで生まれたのが『MAKE ONE TWO』なんです。
見事にハマりましたよね。エスニック料理のお店は当時もありましたけど、ラム串とかがライトに味わえて、なおかつイケてる雰囲気の立ち呑みはなかったですし、オープンして3年以上経った今でも変わらず大人気。すごいなと思います。
でも、コロナの時はやっぱりめちゃくちゃ大変でした。
ですよね…。『BANQUET』を閉店したのも、確かその頃でしたよね?
完全にコロナがきっかけですね。売り上げが消えてしまって、人もばったりと来なくなって…。正直に話すと、売り上げが95%ダウンで完全に資金がショート。お金がなくなった状態でしたが、持続化給付金があったことで、『BANQUET』を閉めて『ラムのラヴソング』に業態変更でできたんです。
売り上げが大幅ダウンしてるコロナ禍での業態変更って、かなりのチャレンジかなと。
僕の中ではリブランディングをすごく重視してて、『BANQUET』は完全に終わりにしないとアカンと思ったんです。今だから言えますけど、お客さんが全部いなくなってもいいなと。『BANQUET』の常連さんに対しても、新しいお店ができたと感じてもらうくらいのセンセーショナルさが必要だったし、今までを何も引きずってないことをより強調したかった。2020年の5月頃に投稿したインスタでは、「お世話になりました。『BANQUET』は閉店いたします」という節目の挨拶を長文で書いて、その後にアカウントも消しましたからね。
潔く完全にリセットですね。
そこから『ラムのラヴソング』の立ち上げに着手したので、『BANQUET』は完全に終了してました。僕がやってるのをみんな知ってたけど、やっぱりイメージを引きずらないのが絶対に大事だと思うんですよ。
普通ならこれまでのお客さんを残したくなると思いますが、それよりもお店としての新たなブランド価値を重視したと。確かにただのリニューアルなら、これまでのイメージはどこかに付きまとうし、まっさらな状態で見ることができないですもんね。ちなみに、業態変更はせずに閉店し、『MAKE ONE TWO』だけに集中する選択肢はなかったんですか?
それはなかったですね。当然、『MAKE ONE TWO』もかなりダメージを受けてて、社員みんな集めて解散宣言をしかけてましたから。「売り上げが全くないから、俺に遠慮せずに就活してくれていいよ」って。でも、みんな残ってくれてるし、給料もしっかり払いたいから、自分としては絶対に引き下がれなかった。だから、『ラムのラヴソング』は最初から爆発させようって思ってましたね。普通に流行ってるだけじゃダメで、爆発させるお店にするって。
名前にも入ってる通り、『MAKE ONE TWO』に続いてラムで勝負をかけたと。
ラムを扱ってきた経験もあるし、ラムそのものにポテンシャルを感じてたので、あまり使われてない食材だからこそ自分たちの武器になるとは思ってました。でも、ラム串やラムそのものはメジャーじゃないし、イメージもそんなによくなかったので、ラムに対するブランディングはしっかりしないとアカンなと。
『ラムのラヴソング』って名前がキャッチーですし、すごく分かりやすい。ブランディングする上でのネーミングも、試行錯誤があったんですか?
立ち呑みにすることは決まってて、大衆感のある間口の広いお店にしようと思ってたので、それを前提にみんなでzoomして決めていったんです。1人20案ずつくらい出して、トータル80案くらいの中から決めた名前があったんですが、次の日の朝起きて、この名前は絶対にちゃうなと。これはスベるなと直感的に思ったから、LINEでみんなに「昨日決めたのはナシにする」って送りました。僕の独断やったから「ミーティングの意味あったんですか!?」とか、めちゃ怒られましたけどね(笑)。コロナ禍にチャレンジしてもし潰れるんやったら、俺のやりたいようにやるわと伝えたんですよ。それで、名付けたのが、『ラムのラヴソング』でした。
3店舗目の『BLACK SHEEP』を出店したのは、天満のごちゃごちゃエリア。ここがどんな場所かも知ってたけど、うちのスタッフはパワーがあるから、1個そのハードルがあった方がおもしろいかもしれへんなと。
『MAKE ONE TWO』、『ラムのラヴソング』と、ラムを軸にしたお店を作ってきた中で、今年の7月には3店舗目となる『BLACK SHEEP』もオープンしました。そこに込めた想いを聞かせてもらえれば!
『ラムのラヴソング』は特にラム料理をプッシュした業態でしたが、あの1店舗だけでは表現できない部分があったので、そこをさらに深掘りしたり、派生させるために作ったのが3店舗目の『BLACK SHEEP』なんです。それともう1つ理由があって、キャラが強くて個性的なメンバーが揃っているから、僕もみんなと働きたかった。プレイヤーとして現場に入るのが元々好きだし、スタッフから学ぶこともたくさんあるので、この時期を逃すのはすごくもったいないなと。シンプルに僕が現場に立てるお店を作りたかったんです。
なんか、そう思えるのって、めちゃ素敵ですね。
ラムでもっとおもしろいことしたかったし、プレイヤーとして楽しめる場所が欲しかったんですよ。
場所は、あえて天満を選んだんですか?
僕はギャップがあるのが好きで、『MAKE ONE TWO』は生駒ビルヂングでエスニック料理の立ち呑みだし、『BANQUET』は生まれ変わってラム串で飲むお店になった。結局、「えっ!?」と思われるのが好きなんですよね。『BLACK SHEEP』も最初は南森町、中崎町、肥後橋辺りで探してて、決まりかけてたけど決まらずで、最後に話があったのが今の場所なんです。
THE天満的な場所ですよね。
いわゆる天満のごちゃごちゃエリアでここがどんな場所かも知ってたけど、うちのスタッフはパワーがあるので、1個そのハードルがあった方がおもしろいかもしれへんなと。それが、この場所に決めた理由ですね。お店もいっぱいあるし、激戦区っぽいイメージですが、僕らの行きたいお店ってのは意外とない。逆に言えば、僕ら世代にとったらお店がないのと一緒やから、ブルーな場所だなって思うんですよね。
なるほど。お店が密集してるのは問題じゃななかったと。逆に『BLACK SHEEP』でやることが明確だからこそ、ブルーオーシャンに見えたんですね。でも、出店場所に紆余曲折はあったとは言え、また天満でお店を構えることになったわけですが、この街への思い入れって?
僕、天満で生まれて、小学校まではこの街で育ってるんですよ。僕がきっかけってわけじゃないですけど、いい感じの大人がフラッと飲みに来るお店ができたことで、そんな大人たちも増えて、ノリの近い人のお店もさらにできて、この街に新しい流れができてほしいなとは思ってます。今はまだ違いますけどね(笑)。でも、うちのお客さんに限って言えば、北浜かなって思うくらいのいい感じな大人の方が多いんです。まぁ、僕らは僕らのやりたいこと、できることを地道に続けていくだけなんですけどね。
新しい流れを生み出せるくらいのパワーはあるんじゃないですかね。働いてるメンバーのことにも触れてましたが、確かにみんなすごく個性的ですし。
そうですね、みんなキャラが立ってますからね。僕自身、会社は採用が一番大事だと思ってるんです。変なヤツを入れないのが、ある意味で最も重要なテーマ(笑)
めちゃ分かりやすい(笑)
商売を始めて9年になりますけど、スタッフの募集広告とかは出しことがないんです。知り合いからの紹介だったり、自分が好きと思った人にだけ声かけて今までやってきました。あとは、感覚的にこんな人と仕事したいなと思えるかどうかだったり、基本的に好きな人間だけと働きたいんですよね。乱暴な言い方にはなりますけど、僕の会社やし。みんなの幸せももちろん大事ですが、僕の幸せも大事ですから。好きな人間、価値観の近い人間と仕事したいという想いを持ち続けてきた結果、今のメンバーが揃ってるんですよね。
高橋 裕基
天満の『ラムのラヴソング』、北浜の『MAKE ONE TWO』、そして今年の7月に新たなにオープンした『BALACK SHEEP』を運営するスコンクワークスの代表。ラムを軸にした立ち呑みスタイルの店舗展開で、各店ともにエリアを代表する大人気店としてたくさんのお客さんに愛されている。自身もプレイヤーとして『BLACK SHEEP』に立ち、接客からDJまで行いながら日々奮闘中。
ラムのラヴソング :Instagram(@ramusong)
MAKE ONE TWO :Instagram(@make_one_two)
黒羊羊肉串店 BLACK SHEEP :Instagram(@blk_sheep2)