翻訳業から「なりゆきで」料理家に。飲食業に興味のなかった桑原亮子さんが、予約のとれない料理教室SPICEUPを主宰するに至った理由。


子育てしながら英検一級を取得して就職、それからシングルマザーになって、再婚して…。忙しいですね、私の20代(笑)。

料理教室を始める前は、何をされてたんですか?

大学を卒業してすぐ結婚・出産をして、しばらくは専業主婦でした。子育てをしながら英検一級を取得して、そこからは就職して翻訳や通訳の仕事をしてました。

子育てをしながら英検一級って、すごくないですか?

時間があったんですよ、その頃は。まわりはみんな就職して忙しそうにしてるし、夜も残業とかしてるけど、私はわりと暇だったんです。当時子供は1歳ぐらいで、今だったら絶対無理だけど、その頃は若いし体力もあったんでしょうね。

そこから、英語を生かしたお仕事に就かれたと。

子供2人を保育園に預けて就職して、働きだしました。産業翻訳とか、海外の特許申請の書類とか、英語の事務関係の仕事でした。そのあと離婚して、子育てしながら会社員を続けて、ご縁があって再婚して30代で第三子を出産して……っていう感じですね。

めちゃくちゃ波乱に満ちた20代ですね。

たしかに改めて振り返ると、忙しい20代ですね(笑)。

「子供たちが小さい頃はバタバタしてましたけど。今はもう洗濯畳んでもらったり、ご飯炊いてもらったり、チームとしてやってます」と桑原さん。

お子さんが2人いて、シングルになった不安とかはなかったですか?

不思議とそんなになかったんですよ。若かったせいか、なんとかなるかって感じで。大変だったんでしょうけど、あんまり覚えてないんですよ。広島の父母もしょっちゅう来てサポートしてくれましたし。当時は、仕事をして子育てもして、忙しいのが楽しいぐらいの感じでした。いろんなところに子供と一緒に出掛けたり。今はもう上の2人は大きくなってそれも少なくなりましたけど。

料理教室は、3人目のお子さんが生まれた後ですか?

しばらくは専業主婦をしてたんですけど、落ち着いたらまた勤めようと思ってたんですよ。英語の仕事でも違う仕事でもいいけど、会社員になろうと。それが、子育ての合間に翻訳ボランティアを始めたことで、プリヤと知り合って料理教室を引き継ぐことになって。

まさかの飲食業に(笑)。でも、英語が縁をつないでくれたんですね。

そうですね。人生どこで何がつながるかわからないですね。大学院に進んで留学する予定だったんですけど、そっちの道じゃなくて良かったのかもしれないなって今は思います。

大切なのは、他人と比べないこと。目の前にあるやるべきことを全力で、淡々とやるだけです。

これまで仕事を続けてこられた中で、大変なことってありました?

もういっぱいあります、大変だったこと。でも、すぐ忘れるんですよ。なにが大変だったかな、100人分のカレーを徹夜で作ったとか、法人化の手続きが面倒だったとか……?

物理的な大変さですね(笑)。大変だったことと、その乗り越え方をお聞きしようと思ったんですが…。

乗り越え方かぁ。ひとつ思ってるのは、他人と比べないっていうことかな。それはずっと自分の気持ちの中にありますね。誰かと比べるよりも、目の前のことを一生懸命やろうっていうのは思ってます。大変なことって、自分と他人を比べてあんなふうになりたいって思ってるから、そこに届かない自分を追い込んでしまうんじゃないかなって。

他人と比較するのではなく、目の前のことに集中すると。

それは仕事だけじゃなくて、早いうちに子供を産んで遊べなくて残念だねって言われたり、離婚して不幸だねって言われたこともあるんですけど、私の中では別にそれほどのことでもないんですよ。そうじゃない人と比べたら大変かもしれないけど、大変だと思うと大変になっちゃうし。

目の前のことに全力で取り組むうちに、いつの間にか乗り越えてきた感じですか?

その時その時でやらなきゃいけないことを全力で、淡々とやるしかないですよね。仕事で大変なことが起きるときは大概自分が悪いのですみませんって謝るしかないし、子供が家出したら夜通し探さなきゃいけないし、そのあとは寝てなくても仕事しなきゃいけないし(笑)。もう目の前にあることに全力投球するだけですよ。

イベントの主催やレシピ監修、プロダクトの企画など多岐にわたる仕事を、「なんとか帳尻を合わせながらやってます(笑)」

その局面ごとに全力で向き合うのが、仕事と家庭の両立の秘訣でしょうか?

両立は……できてるかな? そもそもしようと思ってないかもしれないです。両立ってなにをもって両立なのか、どのレベルを目指すのかっていう話だと思うんですよ。子育ても基本的なことしかしてないし、家の中もそんなにきちんと片付いているわけでもないし。みんなが元気で、それぞれのことをがんばってくれてれば、それでいいかなって。そう考えると、私が仕事をしていることを理解して助けてくれる、夫が一番大変かもしれない(笑)。

ご主人はお仕事を応援してくださってるんですね。

徐々に、ですね。最初は主婦業の範囲内でって思ってたんじゃないかな。彼自身の仕事が忙しかったこともあったから。でも今は私が頑張ってることも知ってるし、やっぱり仕事として成り立ってるので、家事も半分ずつ、経済的にも半分ずつぐらいの感じにできていて、お互いに良いバランスだと思います今は。

ハレの料理ばっかりじゃ疲れちゃう。手をかけたものも、そうでないものも、いろんな食事があっていい。
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Profile

桑原 亮子

料理家・SPICEUP主宰。広島県出身。スパイスやハーブを家庭料理に生かす料理教室が好評を博し、大阪・豊中にあるアトリエのほか、オンラインや東京でもレッスンを開催。そのほか、レシピ提供、商品開発、テレビ出演など幅広く活躍中。2022年はエプロンはじめ、オリジナルプロダクトをさらに充実させる予定とのこと。

https://spiceup-world.com/

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