翻訳業から「なりゆきで」料理家に。飲食業に興味のなかった桑原亮子さんが、予約のとれない料理教室SPICEUPを主宰するに至った理由。
今回取材に伺ったのは、豊中にある料理教室「SPICEUP」。スパイスやハーブを家庭料理に取り入れるスタイルが話題を呼び、レッスンは予約開始してすぐに満席という盛況ぶり。そんな超人気の料理教室の主宰者でありながら、「飲食の仕事をするとは思ってもなかった」という桑原亮子さん。実は料理教室は出会いとなりゆき、前職は通訳・翻訳業という意外な経歴と、そのドラマチックすぎる人生について、たくさんお話聞いてきました!
夫が南インドカレーを食べたいと言い出して。そしたら、南インド出身の女性とたまたま知り合ったんです。
桑原さんが料理教室を始めたきっかけを教えてください。
最初は、知り合いの料理教室を手伝ってたんです。翻訳ボランティアで知り合った南インド出身のプリヤという女性がいて、私はもともと彼女にスパイスやハーブを使った料理を教えてもらってたんですね。そこから、彼女の料理教室を私の家で開くことになって。プリヤは日本語が話せなかったので、私が彼女の英語を日本語に訳したり、レシピを日本語に書き換えたりしてました。
もともとは、生徒さんだったんですね。
そうなんです。ある日夫がカレーにハマりまして、南インドカレーが食べたいと言い出したんです。南インド料理って7〜8年前は全然情報がなくて、でも料理も好きだしなんとかやってみようと思っていたときに、翻訳ボランティアで仲良くなったプリヤがなんと南インド出身だったんですよ。それで、プリヤに料理を教わるようになったんです。
それから、一緒に料理教室を?
私の家を使って料理教室を始めることになりました。教えるのはプリヤで、私は通訳とかレシピの翻訳のお手伝いをして。それはそれで楽しかったんですけど、冬になってプリヤがインドに帰ってしまったんです。寒いって言い出して。
寒さが理由!?
そうそう、寒くて帰っちゃったんです。それで、料理教室を続けるか迷ったんですけど、スパイスやハーブって面白いし、せっかく始めたんだから1年ぐらいは続けてみようと思って。そのまま自宅でご近所さんに教える感じでやっているうちに、1年たって2年たって……と言う感じです。
桑原さんご自身が主体的に始めたわけではなく?
なりゆきで(笑)。1年ぐらい続けてみようの延長線上に今がある感じなんです。すごい情熱を持って始めたわけでもないし、この仕事で絶対成功してみせるって思惑も全くなくて。断れなくて続けているうちに、今に至りますね。
もともとエスニックなお料理はお好きだったんですか?
好きでしたね。タイ料理、ベトナム料理、インド料理なんでも。食べることも作ることも好きで、料理教室もたくさん行きました。以前はホームパーティーが趣味で、よく人を招いて料理を食べてもらってたんです。でもレストランで修行したとか、調理師の資格を持ってるとかそういうのは全然ないし、そもそも飲食を仕事にしようなんて全く思ってなかったですね。
何がきっかけになるかわからないですね。スパイスやハーブってふだんの料理には難しい印象があるんですが、レシピを考えるときに大切にしていることってありますか?
作りやすいことですね。シェフは自分が作った料理を食べてもらうのが仕事ですけど、私は皆さんに作ってもらうことが仕事なので。スパイスも手に入りやすいものにしたり、ハーブだけじゃなく大葉や三つ葉、セリを使ったり。使い方に正解があるわけでもないので、私自身が難しく考えないようにしています。
生徒さんが家で再現できないといけないですもんね。
たまにはマニアックなこともしますけど、基本は家庭で取り入れやすいものを意識してます。スパイスやハーブを使いたいけど、旦那さんや子供たちにも食べてほしいって方にはちょうどいいかもしれないですね。いきなりザ・インド料理を出しても、家族は「今日お母さんどうしたの!?」ってなりますよね(笑)。
たしかに! 子供とか戸惑いそうですね(笑)。レシピのアイデアはどうやって出てくるんですか?
食べたものを再現することもありますし、寒くなってきたから生姜が効いたカレー食べたいなとか自分の中から湧いてくるものもあります。あとはインテリア雑誌のテーブルコーディネートを見て、そこから献立を考えることもあります。
桑原 亮子
料理家・SPICEUP主宰。広島県出身。スパイスやハーブを家庭料理に生かす料理教室が好評を博し、大阪・豊中にあるアトリエのほか、オンラインや東京でもレッスンを開催。そのほか、レシピ提供、商品開発、テレビ出演など幅広く活躍中。2022年はエプロンはじめ、オリジナルプロダクトをさらに充実させる予定とのこと。