【ぼくらのアメ村エトセトラ vol.7】 街のみんなが憧れる、あのファッションアイコンに会いに行く。『JAMMRU』のyu-coさんが見てきたアメ村のこと。
アメ村はたくさんの友達がいるホームであり、常におしゃれに気の抜けない戦場でもありました。いつの時代も若者が楽しめる街であってほしい。
yu-coさんが遊んでいた頃のアメ村にはどんな人がいたんですか?
yu-co:漫画に出てくるような髪型をしているパンクスの人が三角公園にたくさんいました。この人たち1回のセットでスプレー何本使うんやろって思うような(笑)。見た目はイカついけどみんなめっちゃ優しくて、礼儀正しい良い人だったんですよ。アメ村=怖い場所っていうイメージがあるかもだけど、そういう怖さはあまり感じてなかったですね。
そもそも論かもしれませんが、アメ村はそんなにもおしゃれをして行く場所だったんでしょうか?
yu-co:絶対そうです。
それはどうしてですか?
yu-co:答えになっているかわからないけど、ナメられたくないからかな。最初に働いた『DIG IT』の先輩に、「なんでオーナーが自分みたいな子を採用したんかわからんわ」って言われたことがあるんです。暗にダサいって言ってるようなもんですよね。それにめっちゃムカついて、絶対おしゃれになろうって強く誓いました。きっと自分らしいおしゃれをすることが、その人のステータスになっていたんです。
なるほど。とはいえ、なかなか怖い先輩ですね。
yu-co:高校を卒業してすぐに働いた店やったんで、ずっとアメ村の服屋におる人に比べたら、全然おしゃれじゃないし垢抜けてなかったと思います。しかも、めっちゃ可愛い同世代の子が系列店で働いてたんで、比較されたのかもしれません。だけど、そんなこと面と向かって言わなくてもいいですもんね。そのおかげで、おしゃれになって見返したいっていう気持ちが強くなりましたけど。
闘争心が掻き立てられたんですね。
yu-co:私がもっとおしゃれになれるよう、旦那さんが仕事中フライヤーの裏に絵を描いて、「こんなんいいんちゃう?」ってコーディネートを考えてくれたこともありました。「ロックでポップな感じがかわいい」とかっていうコメントも付いていて(笑)。嬉しくて大事に取っていたんですが、さすがにもうどこかに行っちゃいました。
可愛すぎるエピソードです。まいふぉんさんにも聞いたんですが、仕事の休憩時間も古着屋に行っていたとか……。
yu-co:もちろん。お昼ご飯はほとんど食べてなくて、食べたとしてもコンビニで買ったおにぎりをパッと食べて、残りの時間は古着屋に行ってとにかく服を見ていました。だけど使えるお金も限られていたので、休憩時間にいいのがあったら取り置きして、給料日になったら回収して。で、また取り置きして……っていうのを続けていました。だから給料日が来ても、すぐにお金が無くなってしまっていたんです。
おいくつくらいまでアメ村で働いていたんですか?
yu-co:『RAIN』に入社するまで、18歳からの5年間はオン・オフ問わずアメ村にいました。みんなの中で私は“アメ村の人”というイメージが強いのかもしれないけど、実際に働いていた期間はそこまで長くないんですよ。
当時のyu-coさんにとって、アメ村はどういう場所でした?
yu-co:めっちゃホームって感じでした。街を歩けば知り合いに会って、ひっきりなしに「お疲れ〜」って挨拶してました。今は「すみません、お邪魔します」みたいなスタンスです(笑)
今のアメ村に対するyu-coさんの見解を知りたいです。知らないお店も増えて、ホームではなくなったという感覚でしょうか?
yu-co:最近行けてないからわからないけど、たまに歩くと昔より自由になったなぁと思います。古着屋だけじゃなく、色んなお店がごちゃ混ぜになっていて。昔はアメリカ買い付けの古着屋が大多数だったけど、今はアメリカにわざわざ行かなくても店を始めることができる。アメカジ以外にも幅広いジャンルのお店があって、店の名前もめちゃくちゃ自由ですし。私たちがいた頃よりずっと自由にやれてると思います。
(ここでyu-coさんの旦那さん・蒲谷実景さんがお店に到着)
ちょうど現在のアメ村に対する見解をyu-coさんに聞いているところでして。同じ時代をアメ村で過ごした実景さんにも、このことについてお伺いしたいです。
実景:僕も店が暇やったらフラッと様子を見に行く程度で、前みたいに古着屋を巡ることはほとんどなくなりました。今のアメ村は完全に観光地化が進んで、正直おもしろくないなって思います。歳を取ったせいもあるけど、僕らが10〜20代の頃はホンマにカッコいい人しかいなくて。今は街を歩いていても、カッコいいと思う人を見かけることがないんですよね。
実景さんの思うカッコいい人ってどんな人ですか?
実景:全身で自分の信じるおしゃれを体現してる、個性の塊みたいな人。僕らが過ごしたアメ村ってホンマにそういう人しかいなくて、とにかく全員が突き抜けていた印象でした。パンクスもいればサーファーもいて、ゴリゴリの70'sの人もいるみたいな。鋲ジャン着てマーチン履いてパンツをロールアップして……、そういう尖った人たちがわんさかおる街やったんです。今は同じような格好をした大学生か観光客しかいないイメージです。
若い人の間では古着がブームになっていて、最近増えている大型の路面古着屋に通っている人も多いみたいです。
実景:確かに、路面のでっかい古着屋が増えてますよね。それも少し残念に感じていて、僕は路面にこそおもしろい店があるべきやと思うんですよ。やけど、おもしろい店ほど隠れた場所にあるんですよね。<Carhartt>に<RALPH LAUREN>、<TOMMY HILFIGER>、大型店舗のラインナップって結構似通っていて、若い人たちはそういう店をハシゴするから、自ずとスタイルも似てくるのかなと。僕としてはもっと自分の色を出して、突き抜けたファッションを楽しんでほしいです。
街自体の活気があるとはいえ、物足りなさも感じてらっしゃるんですね。ちなみにyu-coさんは、以前はホームのように感じていたアメ村が変わったことに対する寂しさはありますか?
yu-co:寂しいとはちょっと違うかな。私自身年齢も重ねたし、若い子たちが楽しい街やったらそれはそれでいいのかなって思います。
良くも悪くも、いつの時代も若い子たちが楽しい街なんですかね。
実景:それはそうかもしれないですね。
yu-co:うちらの世代が同じような格好してるって思う大学生でも、1人ひとりは自分のできる1番のおしゃれをしてアメ村に来てるやろうし、私たちもそうやったんやから同じなんじゃないかな。だからその若い子たちがアメ村に来て楽しいなら、それでいいんじゃないかなと思います。
以前よりストリートスナップも減ってきたように感じます。それこそyu-coさんのことは雑誌でよくお見かけしていました。
yu-co:『カジカジ』の「街の眼」や『Boon』には何度もお世話になりました。私もスナップが減ったと思ってたけど、最近インスタを見てるとスナップをしてる人がめっちゃ出てくるんです。それをチェックしてたら、こんなカッコいい人が今もアメ村にいてんねやって思います。
TikTokのストリートスナップ動画ですかね。私もよく出てくるのでわかります。
yu-co:そうです。発信の仕方も時代に応じて変わってるんやなぁと思いました。
実景:でもSNSで発信するのって、そこに行き着くまでが大変ですよね。雑誌やとみんな手に取れるけど、SNSになると辿り着くまでの過程が必要になるから、自分と同じチャンネルの人じゃないと届けるまでが難しい。
雑誌もかなり少なくなりましたもんね。発信しやすくなって興味が細分化されたぶん、大衆に届けることがより難しくなっているのかもしれません。
yu-co:実は私も『グラマー』で働いてた時にストリートスナップを撮っていたんです。色んなお店に取材の連絡をして、おしゃれな人の一週間コーデとかを撮らせてもらって、今でいうZINEみたいなのを作ってました。一眼で撮った写真をコンビニでせっせとカラーコピーして、切って貼って作るっていうアナログなやり方だったんですけどね。
ご自身で発信もされてたんですね。
yu-co:当時は友達のお店に置いてもらっていたんです。自分が思う“おしゃれな人”を撮るのはすごくワクワクすることでした。
yu-co
1978年生まれ、大阪府出身。18歳からアメ村の古着屋で働き始め、33歳で夫の実景さんと共に独立しセレクト&ヴィンテージショップ『JAMMRU』をオープン。自身が手掛けるブランド<ENDLESS NAMELESS>のディレクターも務める。愛犬の名前は小鉄。
JAMMRU
住所: 大阪市中央区東心斎橋1-19-23 尾形ビル 2F
電話: 06-6226-8612
営業時間: 13:00〜19:00
休日: 不定休