Interview & Writing
六車 優花
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中島 真美

不定期開催のポップアップからスタートした『MEKEARISA』が、大阪・枚方公園駅近くの古民家をリノベーションし実店舗をオープン。こちらはファッション誌の編集やライターを経て海外に移住し、昨年帰国した松尾愛理紗さんが手がけるショップ。シンガポールとその周辺国の可愛いライフスタイル&アンティーク雑貨、そして着心地にこだわったオリジナルウエアに出合えます。おすすめは、アイコンバッグとして知られる “メケアリバッグ”。現地ならではのカラフルな配色と、使い勝手の良さが話題となり、2021年4月のオープン以来、街のおしゃれっ子の間で根強い人気を誇っています。現在はコロナの関係で休業中とのことですが、次の仕掛けを色々計画中だそう。今回はMARZEL編集部が自宅にお邪魔して、愛理紗さんとその夫・ブライアンさんに、お店を始めたきっかけやこれからのことを伺いました。センス溢れるインテリアにも注目して!

30歳までに彼氏ができなかったら海外に住もうと。シンガポールの会社で内定をもらい、現地で3年間働きました。

まずは愛理紗さんがお店を始めるまでのことを教えてください。海外で働かれていたとお聞きしましたが、どのような経緯があったんですか?

愛理紗:新卒で大手企業に入社し、24歳で『関西ガールズスタイル(15年休刊)』の編集部に転職。3年ほど働いてフリーランスのエディターになりました。フリーランスの時期は、『OCEANS』や『mamagirl』、『関西Walker』など雑誌の仕事をしつつ、企業の採用ツールの取材や社長さんへのインタビューなども行っていました。忙しいのはありがたかったけど、締め切りに追われて朝まで仕事をすることも多く、なんだか「氣」の巡りの悪さを感じ始めたんです。そこで生活を整える意味も込め、29歳手前くらいで関西のデザイン会社にライターとして就職しました。漠然とではありますが、30歳までに彼氏ができなかったら海外に住もうと決めていたんです。それで、その就職先が海外に支社を持っていたので、ちょうどいいかもしれないなと。だけど働き始めてすぐに、実際は難しいことが分かって。ワーホリはお金がないとキツイし、この歳で留学はさすがに資金面でもったいないなと。結果、お金を稼ぎながら生活できる方法は現地採用しかなかったので、自分が旅行で行ったことのある国の中からシンガポールを選びました。

シンガポールを選んだ決め手はなんですか?

愛理紗:本当はハワイが良かったけど、当時はあんまり英語に自信がなかったんです。シンガポールなら言語もある程度通じそうだし、同じアジアと言う意味で日本と文化も似てるだろうと思って。行くと決意してからは、本当に秒速で動きました。「シンガポール 出版社 編集」の検索で引っかかった会社に片っ端から履歴書とポートフォリオを送り、現地で面接をしていただいて内定をもらいました。それが29歳と11ヶ月の頃で、その後30歳と3ヶ月のときにシンガポールで就職しました。30歳は少し超えちゃったけど、内定をもらったのはギリギリ29歳やったからまぁ目標は達成できたかなって。

夫のブライアンさんとは、シンガポールでお知り合いに?

愛理紗:彼はシンガポール人なのですが、私が現地で就職する前に働いていたデザイン会社で出会いました。私はそこに半年ほどしかいなかったけど、ちょうど彼が日本へ研修に来ていた時期と被っていて。当時は全然喋らなかったし、私のこと怖い人って思っていたみたい(笑)。

ブライアン:最初は彼女に対して、“冷たい”、“怖い”というイメージがありました。

愛理紗:(笑)。私もブライアンはオープンマインドな感じがしなくて、全然仲良くありませんでした。だけど、私がシンガポールの面接を受けに行くタイミングで、彼もシンガポールに帰国することがわかったんです。心細かった私に、すごく良くしてくれました。内定が出てからは、向こうでの家探しのことでいろんな情報を教えてくれて、毎日スカイプでコニュニケーションを取っていましたね。それから向こうに行ってすぐお付き合いが始まって、そのまま結婚しました。

愛理紗さんはシンガポールでどんなお仕事をしていたんですか?

愛理紗:日本人向けフリーマガジンの編集・ライターをしていました。今まで比較的自由に企画ができる媒体に携わってきたから、フォーマットが決まっていたり自分のやりたいことができなかったり、読者とクライアントのことを考えた企画を練ったりするのが結構ストレスでしたね。シンガポールに住むのは3年と最初から決めていたこともあり、そこできっちり3年間働きました。

こちらは、お店をオープンした当初の愛理紗さんとブライアンさんの写真。
海外のアンティークとアジアの雑貨を組み合わせた素敵なインテリアに、思わず惚れ惚れ。

帰国資金を稼ぐために雑貨を買い付けて、ポップアップをスタート。私、実はめちゃくちゃ現実的で冷静なんです(笑)。

『MEKEARISA』はもともとポップアップからスタートしたお店ですよね? スタートしたきっかけを教えてください。

愛理紗:シンガポールでは、仕事面でストレスフルな生活を送っていたから、休日はリフレッシュのために東南アジアのいろいろな場所へ旅行をするようにしていました。仕事では思い通りにもの作りができないから、休日を使って自分の好きなものを集めた書籍をつくっていたんです。フリーマガジンではできない企画や、私の目線から見た“可愛い”を盛り込んだ一冊。この取材を通して、ローカルに触れる機会が多くなってからは地元の人がよく行く場所や、その土地ならではの暮らしに興味を持つようになりました。インドネシアはさほど興味がなかったのですが、ブライアンの兄弟が仕事をしているということで、「挨拶がてら会いに行こか〜」と足を運んでみたんです。そのときに、『MEKEARISA』の看板商品になっているバッグを市場で見つけて。当時はこんな未来が待っているなんて、思ってもなかったです(笑)。

これが『MEKEARISA』の看板でもあるメケアリバッグ。カラフルな色味だけど、派手すぎずお洋服に馴染んでくれるところがポイントです。
愛理紗さんが手がけた「POCHI BOOK」。シンガポールのローカルの魅力がたっぷり詰まっています。

当時シンガポールと日本の往復で、飛行機代だけで15万円くらいかかってたんかな。私は独り身の現地採用やったから、めちゃくちゃお金にシビアだったんです。往復15万円って、帰国するだけなのにすごい金額だと思いません?(笑)。有給も貯金も使って一時帰国するわけだから、15万円を単に使うだけではなくて、何かを得たいと考えたんですよね。もちろん一時帰国することで、家族や友人とかけがえのない時間が過ごせたり美味しい日本食を食べたりできるわけですが、それでもやっぱりもったいないなと。

それで、日本でポップアップストアというかフリーマーケットのような規模の小さなイベントを始めることにしたんです。そこから旅行に行くたび雑貨やバッグを買い溜めて、一時帰国のときに小さなポップアップストアをするというルーティーンが出来上がりました。

そういうことなんですか! まさに大阪人ならではの商人魂……(笑)。

愛理紗:当時はマーケティングなんて考えてもなかったけれど、振り返ってみると実際に店頭に立つので、お客さんの反応が見えるのも良かったんです。私はこれがいいと思うけど、みんなはこっちの方がいいんやとか。現地に住んでいると、日本の“可愛い”という感覚が鈍ってきちゃうんですよね。だけど日本で定期的にポップアップをするうちに、日本のおしゃれやかわいいに対するスタンダードがすごく高いことに気付きました。現地の空気感が伝わる良いものをと思って買い付けても、やっぱり日本の生活やファッションに馴染むものの方が好いてもらえる。自分の感性に刺さるものにこだわることも大事だけど、それが必ずしも売り上げに繋がるわけじゃないんやなと。結果、シンガポールに滞在した3年間で、現地の日本人向けに2回、日本で3回のポップアップを開催しました。徐々に期限の3年が近づいて、帰国後もう一度就職するのかフリーランスの編集をするのか真剣に悩んだんです。だけどポップアップでの手応えを信じて、帰国後に自分のブランド『MEKEARISA』を立ち上げることに。日本を選んだのは、シンガポールよりビジネスチャンスが多いと思ったから。ブライアンには生活拠点を日本に移してもらうことになるので、私が生活の基盤を作らなあかんと思って腹を括りました。

最近はオンライン通販だけのお店も増えていますよね。そのような流れの中で、実店舗を構えたのはどうしてですか?

愛理紗:地元が枚方で今も住んでるんですけど、ここに引っ越したばかりの頃、バッグの在庫が家の2部屋分を占領していたんですよ(笑)。ベッドもカバンに占領されて、私は床で寝ていました。床から天井までバッグが山積みになってたから、これでは人間らしい生活ができないと思ったんです。商品を保管することを考えるとなかなか良い倉庫が見つからず、それならば店舗を借りて販売をしつつ、きちんと管理できた方がいいじゃないかなと。私の地元も枚方やし、以前から店舗を持つならこの場所でと考えていました。私、実はめちゃくちゃ現実的で冷静なんですよ(笑)。その時々の流れもあるけど、大事な決断をするときは、しっかりと見極めて物事を選択しています。

お話を聞いているとよく分かりました(笑)。夫のブライアンさんから見た愛理紗さんってどんな方ですか?

ブライアン:すごく情熱的で、やりたいことがあると真っ直ぐに突き進める強さがあって、決して後ろを振り返らない人。3歳年上だから人生経験も豊富だし、いつも僕のサポートをしてくれることにも感謝しています。彼女を見ていて学べることはとても多いですね。

自由に生きてるように見えるけど芯の強さを持っていて、惹かれるのも納得です。私もなんだか憧れちゃいます。

枚方といえば『MEKEARISA』と言われるようなショップに。来年春の再オープンに向けて、楽しい仕掛けを計画中!

実店舗はコロナ禍の今年4月にオープンしたにも関わらず、すごく話題になっていましたよね。ご想像されてましたか? ※現在は休業中。

愛理紗:お店の準備をしていたときは、可愛いショップになりそうってテンションが上がってたんですが、いざ完成すると冷静になっちゃって。大阪の中心からは少し距離があるし、みんな枚方まで足を運んでくれるのかなって。だけど、私たちもびっくりするほどたくさんの人が遊びに来てくれて、本当にありがたかったです。メケアリバッグを街で見かける機会が増えてきたのも、やっぱり嬉しいですね。

来春まで休業とのことですが、オープンに向けて何か準備されていることはありますか?

愛理紗:現在は、来年春からスタートするオンラインストアの準備中。新たにWEBチームを立ち上げるので、スタッフの採用をしています。まさか自分が人を雇うなんて考えもしませんでしたが、ブライアンと大切なスタッフを支えるためにもがんばらなきゃと思っています。今までやってきたことと全然違うから悩むことも多いけど、みんなが気持ちよく働ける場所にできたらいいですね。

「最近はこんな本を読み始めました(笑)」と、初めてのお店の経営に奮闘中のご様子。

今後の目標やチャレンジしたいことはありますか?

愛理紗:枚方の人って枚方愛がめちゃくちゃ強いんですよ。もちろん私もその一人です。だけど、そうだからこそ、なんだか惜しいんですよね。枚方名物とかもあまり聞かないし、古着屋さんやおしゃれなカフェももっと増えたらいいのにと思います。まずは、枚方といえば『MEKEARISA』と言われるようにがんばりたいです。充実した枚方トリップを楽しんでもらえるような仕掛けも考え中なので、ご期待ください! 来年はニュースがいっぱいだと思います!

あとは、大好きな犬・猫のための活動をしていきたい。もともとInstagramのアカウントを作っていたんですが、忙しくてなかなか着手できてなかったんです。今後は、そのプロジェクトを動かしていくのも目標。実家にいるワンちゃんたちが私の癒しで、この子たちを見ると本当に嫌なことを忘れられるんです。犬や猫のグッズを作ってその売上金を寄付できたらいいなぁと。とはいえ自分の生活も大切にしていきたいし、そのバランスを考えつつ、色んなことにチャレンジしていきたいです。

実家に住んでいる愛犬の(右)グーフィーと(左)まわし。2匹は母親違いの兄弟だそう。
お部屋の随所にワンちゃんグッズがてんこ盛り。愛理紗さんの深い愛情が伺えます。
Profile

松尾 愛理紗

大学卒業後、大手企業に務めたのちファッション誌の編集に転身。フリーランスエディター、デザイン会社のライターなどを経験したのちシンガポールへ移住。日本人向けフリーマガジンを手がける会社に就職し、仕事をしながらセレクト雑貨のポップアップを不定期で開催。3年後に帰国して自身のブランドを立ち上げ、枚方に実店舗『MEKEARISA』をオープン。現在は、シンガポール人の夫・ブライアンとともに『MEKEARISA』の運営に奮闘中。

Shop Data

MEKEARISA

大阪府枚方市堤町5-25
※実店舗は休業中。2022年春営業再開予定。

https://mekearisa.com/

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