【私的録-MY PRIVATE SIDE】 お茶しながら愚痴ったり、MBIT診断で盛り上がったり。『週間マガリ』小西亮さんと歩く、天神橋筋商店街。
もはやコンテンツすら不要。2026年のマガリは「概念」がテーマ。

ここからは、小西さんへのインタビュー編をお届け。ご自宅と店舗、そして喫茶店を舞台に、この3年間を振り返ってもらいました。
前回2022年に取材したときは「マガリは仕事というより、ライフワークみたいな感じ」とお話されていましたよね。その頃とくらべて、マガリとの向き合い方に変化はありましたか?
そんなこと言ってましたね…。当時は生活の一部という感覚だったんですけど、2年ほど前からまたイベントをやるようになって。コロナ禍が明けた流れで、2023年にグランドサロン十三で10周年イベントをやったら、キャパ200の会場に400人来たんですよ。それで味を占めました。

私も行きましたが、本当にすごい人でしたね。
普段マガリに来ない層が来てくれたのが大きかったですね。その人たちが店にも来てくれるようになって、イベントが集客につながるって10年目にして気づきました。そこから劇場版マガリっていう名称で、2024年は京都のHOTEL SHEで11周年、2025年は喫茶マヅラで12周年をやりました。味園ユニバースでも2回やっていて、2025年だけで3回ですね。
すごい、めっちゃハイペース!
味園ユニバースの閉館ブームに便乗させてもらいました。6月にやった「劇場版マガリ〜軽食&ビアホール味園ユニバース〜」はゲストが竹内力さんで、来場者が延べ1,500人だったんですよ。入れなかった人も含めると多分2,000~3,000人が来たんです。この人数は味園ユニバースの閉館関連のイベントで、いちばん多かったらしいです。

有名アーティストのイベントもいろいろありましたけど、それより多かったんですね。
いや、これには理由があって、味園ユニバースのキャパは1,000人なんです。だから普通はそれ以上チケットを売らないんですけど、僕はそんなに来るとは思わず予約不要にしてしまって。結果、入れない500人の行列ができました。入口で対応に追われてたら、そこにちょうど竹内力さんが到着したんです。竹内さんいい人なんで、「主催者くん、ケチくさいこと言わずにみんな入れてあげましょう」って言うんですよ。竹内力さんと会場側の間で、完全に板挟みでした。
すごい状況(笑)。それにしても、どうやって竹内力さんに辿り着いたんですか?
伝手も何もなくて、普通にリキプロジェクトの問合せフォームから連絡しました。大阪の夜を照らしてきた味園ユニバース最後のイベントに、ミナミの帝王よりうってつけなビッグゲストが思い浮かびません!みたいな感じで。そしたら、マネージャーさんから連絡が来て、出てもらえることになりました。僕もびっくりしましたね。

1,500人も来場したら、それはもう新しいお客さんも増えますよね。
やっぱりある程度は人を選ぶ店なので、入りにくいと思うんですよ。でもイベントだとそれが薄まるから、気軽に来れるみたいで。今日の日替わり店長は<なぞなぞバー>なんですけど、なぞなぞに興味ないとしんどいじゃないですか。日替わり店長っていうスタイルは訴求力もあるけど、障壁にもなってるなと。
それでも日替わり店長スタイルで13年続けてこられましたが、振り返ってどうですか?
これも今年気づいたことなんですけど、もう日替わり店長でもないなって。味園ユニバースのイベントも、今日のなぞなぞバーも、コンテンツというより概念なんですよね。いわば、日替わり概念。
概念?
他の日替わり店長の店って、店長本人を前に出すじゃないですか。インフルエンサー的な人を呼んで、「今日は●●さんが店長です!」みたいに。でもそれって毎日は難しいから、ガス欠を起こすんです。でも概念は使い放題なんですよ。
例えばこの間の『劇場版マガリ~ジェネリックステーション~』は、「“っぽい”人大集合」がテーマでした。来場者が名札に、似てると言われたことのある有名人やキャラクターを書くんですけど、別になんでもいいんですよ。サプライズゲストに、野沢雅子っぽい人ということでお笑い芸人のアイデンティティさんに出てもらったんですけど、もはや当日まで誰が来るかも告知してませんでしたし、ステージをメインコンテンツにしてないんです。今までがんばってコンテンツを組んでましたが、添えるぐらいがいい温度感なんだと。

そういえば、味園ユニバースのイベントも、軽食&ビアホールってすごくざっくりしたテーマですよね。
そのおかげで、一度味園ユニバースに行ってみたいっていう人が来てくれたんですよ。ユニバースのイベントってけっこう感度の高いのが多いじゃないですか。だから、逆に何もしないほうが集まったんです。ユニバースの人もびっくりしてました。予約のときに言われたんですよ、コンテンツもうちょっと用意したほうがいいですよって。でも、コンテンツがあることによってハードルが上がるので。
例えばそこでメインを竹内力さんにしてしまったら、全然違うイベントになってしまいますよね。
竹内力さんがゲストで歌うとかってなったら、ちょっと違うじゃないですか。そうじゃなくて、もうすぐ閉館する味園ユニバースに、竹内力さんが来るっていうだけ。大きい“ミナミ”の概念の中に、竹内力さんがいるっていう。
概念があれば、場が成立すると。
インフルエンサー的な「誰がやる」「誰が来る」イベントって、正直1時間くらいで飽きちゃうんです。でも、いい概念はみんな好き勝手にしゃべります。だから最近は、店長の名前も出さないです。●●さんの××バーってやると、どうしても内輪ノリというか文脈芸になってしまうので。

でもやっぱり、何もコンテンツがないっていうのも不安というか、難しそうな気がします。
そうなんです、すぐDJイベントとかスパイスカレーとかしちゃうじゃないですか。サブカル偏差値が高い人ほど、コンテンツをやろうとするんですよ。でもコンテンツいらないんで。
新しい発見ですね。しかも、日替わり店長をやる側のハードルもすごく下がりますね。
だから、やりたい人が増えました。集客ノルマとかもないですし、告知もうちでしますし。来週店長どうですか?って声をかけたら、いいですよみたいなノリで。

最近ではどんな日替わり店長が印象的でした?
<シール交換BAR>ですかね。すごかったです、お客さんも多かったけど、テレビ局とかの取材もめっちゃ来ました。でも『Meets Regional』は来てくれなかったですね、『Lmaga.jp(エルマガ)』は来てくれましたけど。
エルマガは来てくれたんですね。
エルマガさんはたまに来てくれるんです。でもほんまにMeetsさんは来てくれないですね。毎月買ってるんで、もう許してほしいです。

お客さんの感じはどうですか?
BRAHMANみたいな感じのいかついお兄さんと常連のアニメオタクが隣り同士になって、どうなるかと思ったけど、最後ゴールデンカムイの話でめっちゃ盛り上がってました。ほんまいろんな人が来てくれますね。わかり合えないことのほうが多いですけど、それはそれでネタになるので。仲裁もエンタメになるというか。だからなにがあっても大丈夫です。
12年カウンターにいると、いろんな人間模様が見えそうですね。
いろいろ起こるんですけど、自分で対処せんとこうと思って。僕こんな感じなので、例えば話題に何度も出てくるスパイスカレーのことをちょっといじったりすると、普通に怒る人がいるんですよ。「スパイスカレーやってる人ら、俺よく知ってるし」みたいな。いや、そういうとこやでって思います(笑)。スパイスカレーやってる人らはすごいけど、自分はそうじゃないでしょって。

(笑)。なるほど、余計な軋轢を生まないためにも、小西さんが出てこないほうがいいんですね。
どんな人にも嫌な思いはしてほしくないので、うまくまとめてくれそうなお客さんに行ってもらいますね。ポケモンバトルみたいな感じです。
以前はアルバイトは雇わないとおっしゃってましたが、最近は?
今はアルバイトさんもいます。僕だけじゃなくて、いろんな人のカラーがあったほうがいいかなと思って。先生のいない教室のほうが盛り上がることもあるじゃないですか。バイトだけの日に、途中から僕が行ったら自習中に先生入ってきたみたいな目で見られますね。

その感じ、なんかわかります(笑)。以前よりますます多様性を極めているような気がしますが、これから先はどんなふうに考えておられますか?
ベタですけど、ちゃんとしたイベントをやりたいですね。ちゃんと、利益の出るイベントを。これまで趣味みたいなイベントをやってきて、全然儲かってないので(笑)。イベントと店、両輪でやってきたいですね。
概念という新たな武器も手に入れたことですし。
そうですね。でもやっぱりわからないかもしれない。毎年考えていかないといけないので。来年はイベントとか全然やってないかもしれないです。

小西 亮
『週間マガリ』オーナー。大阪府豊中市出身。甲南大学卒業。2013年に24歳で、一日店長が日ごとに店を「間借り」するカフェバー『週間マガリ』を立ち上げる。“ヘンな出会いがきっとある”のコンセプトどおり、日々さまざまな変な出会いを提供。日常営業から味園ユニバース、グランドサロン十三などでの大規模イベントまでを横断しながら、大阪のカルチャーシーンに独特の距離感で関わり続けている。