それは“お店屋さんごっこ”から始まった。インディーズ出版&ギャラリー『シカク』店主・竹重みゆきさんの14年。
母親がちょっと変わった趣味があって、猟奇殺人の本とか、オカルトっぽい本とか。

ちょっと昔のこともお聞きしたいのですが、先ほどかつてはオタクだったとお話されてましたが、子供の頃はどんなお子さんでしたか?
目の前にある楽しいことに夢中になって、そればかりやっているような子でした。両親がわりと本を読む人だったので、家にも本がたくさんあって。昔は体が弱くてあんまり外で遊べなかったので、図書館に入り浸ってずっと本を読んでました。当時はさくらももこさんのエッセイが好きで、図書館にあるのは全部読んで、何回も借りて。文章とかも影響を受けてるような気がします。
ご両親の影響もあって、たくさん本を読むお子さんだったんですね。
母親がちょっと変わった趣味があって、猟奇殺人の本とか、オカルトっぽい本とか。あんまり子供に読ませないほうがいいような本もあったんです。それは本棚の一番上の奥のほうに隠してあったんですけど、子供ってそういうの見つけるじゃないですか。椅子に登ってこそっと取って、親がいないときに読んでました(笑)

子ども時代からクセのある読書体験をされてたんですね(笑)
良かったのか悪かったのかわからないですけど。でもちょっと偏った日陰の部分というか、マイナーなカルチャーには昔から興味があったような気がします。
同人誌も作っておられたんですよね?
それは中高生の時ですね。コンビニでプリントしてホッチキスで留めたコピー本でしたけど、地元の小さい同人誌イベントに出展してました。近くにあった「アートセンターハヤカワ」っていう文房具屋さんの2階で、同人誌イベントをやってたんですよ。
そんなローカルな同人誌イベントがあったんですか?
そうなんです。たまたま思い出してちょっと前に調べたら、今もイベントは続いてるみたいで。ホームページに「漫画を描くことに興味を持った中高生が初めて出展できるイベントをやりたいっていう想いでずっと続けてきたので、これからもがんばります!」みたいなことが書いてあったんですよ。今思ったらすごくいいお店だなって。

地元のカルチャーを支えてくれる存在だったんですね。
本当に。中学では漫画部だったんですけど、部活のみんなはハヤカワに出すためにコピー本を作るみたいな感じでやってました。お店は樟葉にあったんですけど、近隣の中高生はわりとそういう人が多いんじゃないかなと思います。
竹重さんのような方が出てこられというのは、そのお店の願いどおりですよね。ちなみに、当時はどんな作品がお好きだったんですか?
ベタにジャンプに載ってる漫画だったりとか。その頃に流行ってたのは『シャーマンキング』とか『テニスの王子様』『鋼の錬金術師』とかですね。
王道の人気作品ですね。その頃は、将来何になりたいと思っておられたんですか?
ぼんやりと漫画家とかに憧れてはいたんですけど、投稿とかはしてなくて。でも絵を描くのは好きだったので、美術系の高校に進学しました。そこで工芸とかデザインとかを一通り体験して、2年生からはグラフィックのコースを選択して、手に職をつけることもちょっと意識して、専門学校に進みました。

専門学校に進まれた頃は、ミニコミ誌や出版とかへの興味は?
全然なかったです。元パートナーの元店長と知り合って、そういうものがあることを知ったので。

竹重 みゆき
大阪府枚方市出身。インディーズ出版&ギャラリー『シカク』店主。
専門学校卒業後、就職せずに“お店屋さんごっこ”感覚で、住居兼店舗の1Kからミニコミ誌ショップ『シカク』をスタート。中津商店街への移転を経て、2017年より千鳥橋に拠点を移し、ミニコミ、リトルプレス、CD、雑貨、衣類など、普通のお店に置いているけど普通の人は買わないようなニッチなアイテムを集めたセレクトショップとして営業中。展示やイベントも開催し、出版レーベルとしても活動。