憧れの大舞台を経て劣等感が自信に変わった。松竹芸能に所属する注目の若手コンビ・オーパスツーの覚醒の始まり。
今まで何となく、吉本が1軍、松竹が2軍みたいなイメージがあったんですが、ytvの決定戦を経て自信と度胸がつきました。

デリートエンターテイメントさんを退所して、松竹芸能さんに所属したきっかけは?
大ちゃん:僕らインディーズ界隈では割と知られてて、デリートエンターテイメント時代にデカめのインディーズライブで優勝したりしてたんですよ。頑張って売れるぞって思ってた矢先、若手芸人の登竜門的な位置付けでもある『ABCお笑いグランプリ』の動画審査にエントリーさせてもらえなくて。このままやと売れる道筋が見えないっていうので退所して一旦フリーになりました。
しんじょう:退所後の半年〜1年くらいは、インディーズライブに出ながらフリーで活動してました。当時は何も考えてなくて、頑張ってやってりゃいつか売れるやろくらいしか思ってなかったです。そんな時、「自分ら松竹入らへん?ネタ見せの機会作るからおいでや」って松竹の先輩である森田GMさん(元絶対的7%)が声を掛けてくださって。マネージャーさんにネタを2本ほど見てもらって、「声が出てるからOK!」っていうので松竹に入ることになりました。
声の大きさ大事って言いますもんね(笑)。そこに吉本さんの選択肢はなかったんですか?
大ちゃん:ですよね(強めに)。
しんじょう:ほんまに何も考えてないアホやったんです(笑)。やけど吉本さんはNSCの入学金40万円払って1年間通わないと所属できないので、お金と時間がもったいないと思って無しにしてました。今考えると全然ありな選択でしたけど。
マネージャーさんが後ろで笑ってらっしゃいます。
大ちゃん:この話、今まで死ぬほどしてきたんで(笑)
しんじょう:でもほんまに松竹でおれて嬉しいです。
大ちゃん:吉本さんもいいけど、僕は松竹が好きです。

『ytv漫才新人賞(以下、ytv)』の出場者記者会見で優勝賞金100万円の使い道を聞かれた際、「角座にサンパチマイクを買いたい」「角座に喫煙所を作りたい」と言われてたのがすごく印象的でした。松竹芸能さんへの愛が垣間見えたというか。
大ちゃん:そりゃ拾ってもらってここまで育ててもらって……。まぁ正直育ったのは自分たちの力もあるけど、育てる環境作りをしてもらったことに感謝は尽きないです。ほんでサンパチマイクは絶対あった方がいいでしょ!漫才師といえばサンパチマイクですし、これから入ってくる松竹の後輩にも使ってほしい。今回はあかんかったけど、いつか角座にサンパチマイクがほしいです。
しんじょう:松竹はアットホームな事務所でもありますね。僕らが1位で決定戦に進出できたytvのROUND2にブルーウェーブとハスキーポーズも松竹から出場していて、自分たちは負けて悔しいはずやのに、「めっちゃ嬉しいです」って駆け寄って来てくれたんです。俺らは仲間なんやなぁってめっちゃ感じました。松竹は所属芸人が少ないぶん仲間思いなところがあって、それが事務所全体のアットホームな雰囲気につながっていると思います。
ytvの記者会見、オーパスツーさん以外は吉本の芸人さんばかりでした。緊張されていましたか?
しんじょう:めっちゃ緊張したよな。
大ちゃん:人生で5本の指に入るくらい緊張しました。記者会見に出ること自体初めてだったので、どこまでボケていいのかわからなくて。先陣を切ってフースーヤさんがボケた時、「好きにやっていいんや」って吹っ切れました。そこからはあんまり緊張しなかったですね。

しんじょう:僕はコメント振られた時、大ちゃんがボケた後に回ってくるのがめっちゃ嫌やって。ボケるなら先に喋らせてくれって後から大ちゃんに言いました。
大ちゃん:今日も午前中に記者会見があったんですが、前回の反省を踏まえてしんじょうに先を譲りったんです。そしたら僕が言いたいことを全部言ってもうて、何も言うことが無くなりました。
しんじょう:いや、俺が喋ってる間にボケを考えんねやろ。でもほんまに喋ることが無くなったみたいで、記者会見の最後の方は小説家くらい声がちっちゃくなってました。あれは反省点ですね。これからベストな形を模索していこうと思います。
でもytvの記者会見は、あれだけアウェイな状況でいっぱいボケてた勇気はすごいです。めっちゃハート強いと思います。
大ちゃん:おもろいとか発想とかじゃなく、勇気1本でやってるんで。
しんじょう:お前が手挙げて言うたの何やっけ?
大ちゃん:「変態新聞です」。
しんじょう:あのコメントはほんま震えた。大したもんや。めっちゃ面白かったなぁ(笑)
大ちゃん:良かったよな。そんな姿を見てくれたからなのか、僕らをフィーチャーしてくれた記者会見の記事が多かったのもありがたかったです。
今年3月に開催されたytvの決定戦を経て、感じたことや変わったことはありますか?
しんじょう:むっちゃ自信がつきました。今まで大阪のお笑いシーンって吉本が1軍、松竹が差のついた2軍みたいなイメージがあって、何となく負けてる感覚があったんです。今回決定戦に出場して色んな人との絡みも経験できて、吉本とも対等に戦える、全然負けてないやんって思えました。あれ以来、どこの現場に行っても自信満々でおれるようになりました。

大ちゃん:僕の中では、勇気が勇気(声を大きくして)になりました。
しんじょう:お前それ記事に書くねんで。太字にするってこと?
大ちゃん:2回目の勇気を太字にしといてください。勇気だったのが勇気になって、あまりに自信がつきすぎて、角座のライブで空気が読めなくなる弊害も出ています。「あ、俺前に出すぎてるかも」って我に変える瞬間があったりとか。場面は選ばんとあかんけど、度胸はめっちゃつきました。
楽屋Aさんにもよく出られてますが、フリー時代からのつながりでしょうか?
大ちゃん:そうですね。楽屋Aの前身である舞台袖時代、松竹に入る前から良くしていただいていて。楽屋Aのピラミッドライブにもメンバーとして出させてもらっています。
楽屋Aや舞台袖は大阪のお笑いを盛り上げたいという思いでスタートしたハコなんで、インディーズライブで結果を残していた僕らにも目を掛けてくれていて。にぼしいわしやボニーボニーさんにも当時から仲良くさせてもらっています。
しんじょう:楽屋Aメンバーとして東京でライブをさせてもらったりとか。普段はあまり東京に行く機会がないのでありがたいです。
それはいい刺激になりそうです。大阪と東京で、お客さんの反応に違いはありますか?
大ちゃん:東京の方があったかいイメージです。
しんじょう:でもおっきい声を出しただけじゃ東京のお客さんは笑わないですね。何を言って落とすかまで見られてる気がする。大阪の人はおっきい声出して変な顔したら笑ってくれるんですけど。
大ちゃん:僕らおっきい声と変な顔でやってるコンビなんで。あったかいけど難しい部分でもあるよな。
しんじょう:僕、R-1グランプリで準々決勝まで進んで東京の会場でネタをやったことがあるんです。一生意味のわからないことをやってるネタなので、お客さんが心の中で「何してんねん」ってツッコめないと楽しめない構造なんですよ。大阪ではウケたんですが、東京で同じネタをやったらみんなポカンとしてて。たぶん大阪は自分の心の中でツッコめる人が多いんでしょうね。やから声がデカいだけで、「声デカすぎるやろ」って心の中でツッコんで笑えるのかもしれないです。
大阪のツッコミ文化ってすごいでもんね。一理あるかもしれません。しんじょうさんは困り顔も印象的ですが、表情はかなり意識してらっしゃるんですか?
しんじょう:よく言ってもらえるんですけど、そこまで意識してるわけじゃないですよ。
大ちゃん:でも鏡の前で練習してるやろ。僕に意見を求めるわけでもなく、これか、いや違うかみたいな顔の鍛錬をずっとやってて、1人で納得して「今日はこれでいくわ」とか言うてる。
しんじょう:まぁそう考えたらやってるか。
それは漫才前のルーティーンだったりするんですか。
しんじょう:ルーティーンってほどではないけど、ボケやツッコミのシーンでどの表情が正しいか試してる感じですね。

大ちゃん:しかも1日3ステ以上こなすと、眉間にアザができる時があるんです。
しんじょう:これ嘘みたいやけどほんまなんすよ。表情筋の使いすぎかわからんけど、眉毛の間に赤い溝ができてチャクラみたいになる。
大ちゃん:それを鏡で見て「顔使い過ぎたか〜」って聞いたことないこと言うてます。


オーパスツー
共に大阪府出身の大ちゃん(左)、しんじょう(右)によるお笑いコンビ。大阪・堺のインディーズお笑いプロダクション・デリートエンターテイメントで2018年に結成。その後はフリーとして活動し、2020年12月に入竹。2025年3月の『第14回 ytv漫才新人賞』では、松竹芸能から初めて決定戦に進出。4月に開催された『第60回上方漫才大賞』(カンテレ)新人賞にもノミネートされるなど話題を集める。大ちゃんの好物は韓国風の冷麺で、しんじょうは27歳の頃から痛風を発症している。