知れば知るほど、世界の見え方が変わる!怪談師ユニット『おばけ座』が誘う、“怖い”を超えた実話怪談の魅力。

ここ数年、空前の盛り上がりを見せている怪談界隈。全国各地で大小さまざまな怪談イベントが行われているだけでなく、怪談の「語り手」による賞レースも開催されているんです。その中で注目を集めているのが、誰かが実際に体験した「実話怪談」というジャンルで活動する怪談ユニット『おばけ座』。それぞれが語り手として活躍している伊勢海若さん、チビル松村さん、深津さくらさん、ワダさんの4名の怪談師に、ビジュアル等のディレクションを行うグラフィックデザイナーNZM110さんを加えた異色のユニットです。今回は、語り手のみならず作家としても活躍する深津さくらさんと、怪談大好き建築家・ワダさんにインタビュー! 実話怪談の魅力や怪談に魅せられたきっかけなど、お話を伺ってきました。「怪談=怖い話」という思い込みがくるりとひっくり返り、異世界への扉が開きます!

ユニット名を決めるとき、候補が100個ぐらいあったんですけど、その中から『怪談マスター烈伝』に決まりかけて(深津)。それはキツいなって(ワダ)。

『おばけ座』は2023年2月結成とのことですが、まずは結成のきっかけからお聞きしてもいいですか?

深津:メンバーそれぞれが怪談師としてけっこう長く活動してまして、仕事の現場で一緒になることがよくあったんですね。気が合うので友達みたいな感じだったんですけど、ユニットを組むことになったのは、私がチビル松村に「仲間をつくって活動したい」という話をしたことがきっかけなんです。怪談師の中にはコンビやグループで活動している方がいて、同じ目標を持って仕事をするのは楽しいだろうなっていう憧れがうっすらとあって。ちょうどその頃、チビルくんも私も怪談のYouTubeを始めてほしいという声をたくさんいただいていて、でも個人でやるのは難しいよねっていう話をしていたところだったんですね。だから、みんなで集まってやれば、お互いの仕事をやりくりしながら動画配信できるんじゃないかってことになって。それで、チビルくんが発起人になって怪談師4名が集められて、そこに怪談イベントの企画もされていたグラフィックデザイナーのノゾミ(NZM110)さんを加えて、5人でスタートしました。

深津さくらさんは京都の美大出身で、メンバーの伊勢海若さんは大学時代の後輩。「伊勢くんは当時から怪談好きとして有名でした」

個人で活動していた怪談師さんによるユニットなんですね。皆さんお付き合いは長いんですか?

ワダ:知り合ったのはもう6~7年前になりますね。

怪談師さん同士の横のつながりとかは、けっこうある感じなんですか?

深津:ここ数年で語り手はすごく増えたんですけど、それまでは本当に限られた人しか表に出てなかったので。イベントになると、ほぼ決まった人が顔を合わせる感じだったので、みんな仲は良かったですね。

お二人が怪談に魅せられたきっかけや、怪談師として活動するに至った経緯を教えてください。

ワダ:設計事務所で働いていた当時、夜中に画面を見ながら仕事をすることが多かったんですけど、音楽よりもラジオとか、人の声や会話を聞きながら手を動かすとすごくはかどったんですよ。それでいろいろ試した結果、怪談が集中するのにちょうどよくて。作業用BGMとして怪談を聴くようになって、そこからどんどんハマりました。

怪談を作業用BGMに!

ワダ:最初の頃は稲川淳二さんとかを聴いてたんですけど、実話怪談というものがあることを知って。誰かの体験を取材して、そのままドキュメンタリとして話すっていうジャンルなんですけど、本当にあった話というのがすごく面白かったんですね。それで、そういうものを集めて話す人がいることを知って、自分もやってみようかなと思ったのが発端です。

建築設計事務所ランチ!アーキテクツの代表でもあるワダさん。現在、河童との共存を目指す「KPD(カッパディメンション)」をテーマに古い町家をリノベーション中。

作業用BGMから入って、実話怪談に出会って怪談師になられたんですね。深津さんはどんなきっかけで?

深津:私は大学2回生のときに、大阪の怪談イベントに行ったのがきっかけです。それまではホラーが嫌いで怖いのも苦手だったんですけど、行ってみたらすごく面白くて。メリヤス会館という古いビルの地下にあるお店が会場で、蝋燭だけの明かりの中で10人くらいのお客さんが怖い話や体験談を持ち寄って話すんですけど、ひそひそ声のボリュームなんですよ。それがものすごく怖くて。でも、あとで振り返ったら、その時のことが楽しい思い出になっていたんです。

ホラーや怖いものが苦手だったのに、怪談は大丈夫だったっていうのが意外ですね。

深津:苦手だと思っていたんですけど、怪談の怖さを味わってみたら、それがすごく心地いいものだったんです。そこからハマって、まわりの友達の体験談を蒐集してみたら、たくさん聞けたんですよ。こんなに身近にあるんだなってドはまりして。話が集まったらそれを友達に話して…ということをしていて、美大なのに、卒業論文も怪談を研究テーマに書きました。

美大なのに、怪談をテーマに卒論を書かれたんですか?

深津:異例ですよね(笑)。でも、せっかく研究したのに、このまま趣味で終わるのももったいないなと思っていたところに、怖い話を競い合うライブイベント「OKOWA(おーこわ)」の関係者の方に、出場しませんかと声をかけてもらったんです。本当に思い出づくりみたいな感じで、一度だけ人前で話してみようと思って出場したのが、すべての始まりですね。そこからいろいろなイベントに出るようになって、気づいたら本業になっていたという感じです。

思い出づくりのはずが、まさかお仕事にまで。『おばけ座』というユニット名もすごく愛嬌があって素敵だなと思うのですが、名前の由来というのは?

深津:私がつけたんですけど、もともと1人でYouTubeをやろうかなと思っていた時期があって、その時の候補のひとつがおばけ座だったんです。星座みたいにいろんな話があるなかで、おばけのイメージがあったらかわいいんじゃないってぼんやり思っていて。それからユニットを組むことになって、チビルくんが100個ぐらい案を出してくれた中から、『怪談マスター烈伝』になりかけたんですけど。

怪談マスター烈伝!

深津:怪談マスター烈伝かおばけ座のどっちかだねってなって。これから「怪談マスター烈伝の深津さくらです」って言うのは、ちょっと違うかなと思って(笑)

ワダ:それはキツいなって(笑)

チビル松村さん考案の『怪談マスター烈伝』の名称は、メンバーみんなで作ったファンブックのタイトルに。

ぜんぜんイメージ変わりますね!おばけ座さんがしっくりきます。一座とか座組の座かと思っていたのですが、星座の座なんですね。

深津:星座のイメージでつけたんですけど、あとから劇団とかそういう解釈もできるなって思いましたね。なぜ星座かというと、『ぼっち・ざ・ろっく!』で「星座になれたら」っていう曲があるんですけど、その曲を聞いてバンドメンバーいいなあと思って。ぼっち・ざ・ろっく!からのおばけ座です。

わからないことを想像をふくらませて、理解するために導き出した物語が、怪談なんですよ(深津)
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Profile

おばけ座

実話怪談を取材•蒐集し、語りや文章などで発表する怪談ユニット。相互に語りあうコミュニケーションを軸にしながら、「怪談=怖い話」という観念を超えた怪談の現在地を探求している。メンバーは怪談師の伊勢海若、チビル松村、深津さくら、ワダ。ディレクションはNZM110。

https://www.obakeza.com/
YouTube:@obakeza

Profile

深津さくら

兵庫県在住。2018年『OKOWA CHAMPIONSHIP』出場を機に活動を開始。実話怪談の蒐集、語り、執筆などを行う。単著として『怪談びたり』『怪談まみれ』。『BRUTUS』にて怪談の連載などを行う。

https://www.fukatsusakura.com

Profile

ワダ

京都在住。怪談大好き建築家。 2019年よりニシ氏と共催する怪談番組「ふとしのホラーナイト」をきっかけに本格的に怪談活動を始める。 蒲田温泉で開催される6時間耐久怪談イベント「怨泉大宴会」を怪談サークルオカのじと共催し「OKOWA 〜胎動〜」「茶屋町怪談若手怪談師GP〜新鎌夜〜」などに出演。

YouTube:ニシノニシコ

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