魑魅魍魎が跳梁跋扈!商店街が妖怪色に染まる「百鬼夜行」を率いる、河野隼也さんの尽きぬ妖怪愛。
日本の妖怪は分業制なんですよ。だから、日本は妖怪の種類が多いんです。海外のお化けはマルチで、1人がいろんな事をするから、仕事がみんなにいきわたらない。
先ほどアメリカの展示のお話もされていましたが、海外での妖怪の注目度はどうなんでしょう?
ニューメキシコ州にあるサンタフェ国際民俗芸術博物館で開催された「YOKAI:GHOSTS & DEMONS OF JAPAN」に関わったんですが、そこは民芸品の博物館で、お客さんのアンケートで日本の妖怪をやってほしいという意見がたくさんあったみたいです。それでキュレーターの方が日本に来て、いろいろ調べたら僕の名前が出てきたらしくて、メールが来て、次の日に会って、その日に監修することが決まりました。
話がめっちゃ早い!どんな感じで関わられたんですか?
一部監修とオブジェなどの作品提供、図録への寄稿をご依頼いただきました。夫婦で現地に滞在して制作もしたんですよ。日中は監修作業をしつつ、夜は作業場に帰って妖怪を作ってみたいなのをやってましたね。
外国にも妖怪っていうのはいるんですか?
アメリカにいた時に、ここでも妖怪的な話ってあります?って聞いたら、ラ・ヨローナというのがいると。スペイン語で「泣く女」っていう意味らしいです。サンタフェという街は雨季と乾季が分かれていて、雨季に川に水が流れた時にだけ出てくるのが、そのラ・ヨローナ。誰も居ないはずの川辺でシクシク女の人が泣く声がするとか、子供が川で遊んでる時に足引っ張るとか、子供に目印つけて夜中にさらいに来るとか。
怖いですね!
それを聞いて思ったのは、誰もいない川辺で泣くのは、日本では川赤子という赤ちゃんの妖怪なんです。川で子供の足を引っ張るのは河童、目印をつけてさらいに行くのは産女。日本の妖怪は分業制なんですよ。小豆を洗うだけとか、砂かけるだけ。だから、日本は妖怪の種類が多いんです。海外のお化けはマルチで、1人がいろんな事をするから、仕事がみんなにいきわたらない。
専業性だから、日本はこんなに妖怪のラインナップが増えてしまったと。
あとはやっぱり商業と非常に強く結び付いていますよね。ただの文献の記録ではなくて、今だに現役でゲームやアニメで見られるので。だから忘れ去られる事なく、ずっとみんなが知ってる存在ですよね。触れる機会が多いっていうのは、一つの特徴だと思います。
「妖怪」は、外国の人には、どうやって説明されるんですか?
幽霊とか怪物の総称で、日本人はこういう異風とか不思議なことを何でも擬人化していくのが好きなので、その結果こんないろいろな種類のものがいます、みたいな説明をしますね。でも最近は、“Yokai”で通じるようになってきています。
妖怪もグローバル化されつつあるんですね。「一条百鬼夜行」も海外からたくさん来られますよね?
インスタとかで海外の人にすごい情報がいきわたってるみたいで、いろいろな国からめっちゃ来るんですよ。僕たちの知らないところで、「今エジプトで話題になってます」とか。欧米圏の人が、「日本人がオリジナルのハロウィンやってて、俺らよりすげー!」みたいな感じで拡散してくれたり。妖怪が好きなのと、ハロウィンの仮装文化が重なったのかもしれないですね。
すっかり京都の観光コンテンツのひとつになってますね。
でも、少ない予算でやっているこの小さい商店街のイベントに、そんなたくさんの人が来るなんて想定してないじゃないですか。これは人が集まりすぎて危険だなと思ったので、毎年10月に開催していたのを4月に延期して、安全に開催できるようにクラウドファンディングで予算を集めました。
そんなにたくさん来られるんですか?
妖怪が通れないくらい来ます。妖怪通るんであけてください!とか言って。終わってからSNSを見たら、「子供が楽しみに行ったけど、人だらけで見えへんかった」とか書いてあるんです。これが悲しくて。子供たちが見られないのは絶対にダメなので、その辺のルールもちゃんとしていきたいなと。
コロナ禍の間はどうされてたんですか?
休止してました。大々的にイベントが打てない期間に、ライブハウスとかで怪談話をするのが流行ったんです。知り合いの人から声が掛かって、そこから人から聞いた不思議な話を人前で話すという怪談イベントもやり始めました。今は、妖怪のイベントと怪談会のセットみたいな企画もしてますね。
いろんな人から聞いた怪談話をライブで披露されるんですか?
そうそう。体験談とかを聞いて、それが嘘か本当かは置いといて。でも、昔の妖怪話と似ているものがけっこうあったりするので、それが面白いですね。昔の人と感性は似てるんだなって思ったりします。
これから河野さんがやってみたい事って何かあったりしますか?
百鬼夜行をもう20年近く続けていて、最近はインバウンドのお客さんも非常に増えて来ています。何とかこの日本の妖怪を、外国の人にもわかりやすいような媒体、動画なり何なりで発信して、それぞれの国の人がご当地妖怪で参加する、インターナショナル百鬼夜行ができたらいいなと思いますね。
インターナショナル百鬼夜行!
それをいつか、京都でできたらいいなと思いますね。
<河野隼也さんのお気に入りのお店>
BAR OVERGROUND B1F(京都市右京区西院坤町)
妖怪電車を運行している嵐電の西院駅から歩いて数分のBarです。店内はアンティーク調でほどよい暗さで、一人でもふらっと入れるとても心地の良いお店。賑やかなときもあり、しっとり静かな時もある。良い怪談が集まりそうなとても雰囲気のあるお店で、私も時々足を運びます。
クレープ屋さん mantis(京都市上京区多門町)
じつは無類のクレープ好きでして、色々なお店でクレープを食べまわった結果、このお店が一番のお気に入りです。生地の食感、具のバリエーションの豊富さ、量、どれをとってもNo.1です。ランチもあり、近所のおじさんから学校帰りの小学生まで、幅広い人に愛されています。
Thai Terrace(京都市左京区田中関田町)
京都は中華料理やインド料理などのアジア料理の美味しいお店がたくさんあるのですが、最近の一番のお気に入りはこのタイ料理屋さんです。多い時で週3日行くこともあります。麺料理のバリエーションが豊富で、麺の種類や辛さも選べるのでオススメ。カフェメニューも美味。
<INFORMATION>
一条百鬼夜行
妖怪たちの大行列「百鬼夜行」を再現する妖怪仮装行列。
日時: 4月20日(土) 18:30~19:30
場所: 大将軍商店街 妖怪ストリート
モノノケ市
全国から妖怪作家が集まってオリジナル妖怪グッズを販売。
日時: 4月20日(土) 17:00~21:00
河野 隼也
京都市伏見区出身。妖怪造形家、妖怪文化研究家、「妖怪芸術団体 百妖箱」代表。幼い頃から妖怪に惹かれ、大学では妖怪を観光資源とした町おこし企画などを研究。「一条百鬼夜行」「嵐電妖怪電車」「伏見妖怪酒祭」「三井寺妖怪ナイト」など、妖怪にまつわるさまざまなイベントを手掛ける。
現在、怖いモノを見た。幽霊に出会った。あれは妖怪だったのか。オチはないけど不思議な体験をした。など「怖い話」を募集中。あなたの 怪談 聞かせてください