魑魅魍魎が跳梁跋扈!商店街が妖怪色に染まる「百鬼夜行」を率いる、河野隼也さんの尽きぬ妖怪愛。


妖怪は、日本のキャラクター産業の元祖的なものなんじゃないかなと思いますね。江戸時代も、すごろくやお面などの郷土玩具に根付など、いろいろなグッズにもなってます。

河野さんは妖怪のどんなところに魅力を感じておられるのかが気になります。

単純に見て「わ~怖い!」って思うだけではなくて、妖怪は調べてみたら、けっこう奥が深いんです。例えば赤鬼と青鬼には、黒鬼という3種類目がいるんですよ。なぜ赤青黒なのかと言うと、これは銅・青銅・鉄の3種の色であるという説があって。山で製鉄に従事する人と里に住んでいる人は文化の違う別の民族なので、里の人たちが山奥で鉄を作っている人たちを鬼扱いした結果、3つの鬼の伝説が生まれたのかなと思うんです。鬼が金棒を持っているのも、製鉄に従事した人たちの証であるとも言われていて。

自分たちとは生活や文化が異なる人間を、鬼扱いしたと。

一説でしかないですけど、でもそういう深いところまで入っていけるのが面白いというか。どこかで飽きたらやめようとは思うんですが、なかなかねえ。調べれば調べるほどいろいろ出てくるので、終わらないみたいな感じですね。

奥が深くて、なかなか飽きさせてくれないんですね。

ぬっぺっぽうという肉の塊の妖怪が、徳川家康の駿府城に出たという話があるんですけど、その妖怪が、遼東半島に出たという話が古代中国の『捜神記(そうじんき)』という怪談本に載っているんです。日本ではその肉を食べると百人力になると言われているんですけど、中国では不吉の象徴とされていて、解釈は全然違うんですけど。そういう話がたくさん出てきて、なかなか飽きない題材ですね。

肉の塊という謎のフォルムの妖怪が日本だけではなく、中国の文献にも載ってたっていうのが面白いですね。妖怪はいろいろな背景から生まれているんですね。

河童のように、子供が川に近づかないようにするために使われたりするものもあれば、中国の古典が日本に入ってきて、ローカライズされたものもあります。江戸時代で言うと、鳥山石燕の『画図百鬼夜行』の妖怪図鑑シリーズはすごい人気があったみたいで、シリーズが4作くらい出てるんですよ。

すごい!そんなに。

シーズン3あたりからネタが無くなったのか、だいぶ創作が含まれてるんですよ。それも、当時の江戸の通な人にしか分からない元ネタがあったりして。昔の古典からきたものや、自然現象の解釈からきたものもあれば、こういう一作家が勝手に創作した物も入っていたりで、すごいごちゃ混ぜ、カオス状態です。

足りなくなったら、オリジナルも混ぜてしまう。自由ですね。

そうですね。実は僕も、妖怪図鑑を出版しているんです。

『きみのとなりにいるリアル妖怪図鑑』!

自分の作った妖怪と背景写真を合成して作るんですが、この本を制作しながら、トイレの花子さんとヤマタノオロチが同じカテゴリーにいるの、おかしくない?って思ったんですよ(笑)。学校のうわさ話と日本神話を混ぜて、1冊の妖怪図鑑に集約しているのは、極めて商用的な理由でそうなっているわけじゃないですか。江戸時代の石燕もそうですが、最初はちゃんと伝承的なものを集めて作った図鑑も、ヒットして2弾3弾になると、いろいろなネタを引っ張って作ってますよね。

河野さん自身がグラフィックも手掛けた著書。さまざまなジャンルの妖怪を掲載。

そう言われると、何でもありですね(笑)

この妖怪図鑑を出版してから、テレビ番組で妖怪のビジュアルを作ってほしいという依頼があったんです。その中で、新しい妖怪ということで、インターネットの掲示板に掲載されている怖い話をモチーフに、現代妖怪を作って紹介するみたいなことをしたんです。テレビ局や出版社がそういうものを“新しい妖怪”として作りだしていくことを考えると、日本の非常に古い風土に育まれたものでありながら、商業的なところと結びついてどんどん進化していくっていう感じが面白いなって思いますね。

なるほど、昔からそういう感覚で発展したのかもしれないですね。

そもそも妖怪が造形化されたのも、江戸時代にキャラクターとして人気があったからだと思うので。アメリカのサンタフェ国際民俗芸術博物館で開催された妖怪展に関わった際に、現地のスタッフは、年配の人は浮世絵などの個展美術に取り上げられた妖怪に興味があって、若い人はアニメや漫画に登場する妖怪に興味あると話していて。若い人が言うには、ポケモンの先祖は妖怪だ、みたいな。

ポケモンの先祖が妖怪!

擬人化とかキャラクター化したものをコレクションしていくのは、この時代から栄えてきたっていう。妖怪は、日本のキャラクター産業の元祖的なものなんじゃないかなと思いますね。江戸時代も、すごろくやお面などの郷土玩具に根付など、いろいろなグッズにもなってます。いわゆるキャラクター商品ですよね。

そう考えると、妖怪はすごく自由度の高い題材ですよね。

そうですね。ポップカルチャーと土着文化じゃないけど、両方をちゃんとカバーできる存在でもありますね。京都の昔の鬼門信仰とか御霊信仰でもあり、ゲゲゲの鬼太郎にも登場していると。歴史文化と漫画アニメ、全部ごちゃ混ぜにできる題材だと思います。

日本の妖怪は分業制なんですよ。だから、日本は妖怪の種類が多いんです。海外のお化けはマルチで、1人がいろんな事をするから、仕事がみんなにいきわたらない。
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Profile

河野 隼也

京都市伏見区出身。妖怪造形家、妖怪文化研究家、「妖怪芸術団体 百妖箱」代表。幼い頃から妖怪に惹かれ、大学では妖怪を観光資源とした町おこし企画などを研究。「一条百鬼夜行」「嵐電妖怪電車」「伏見妖怪酒祭」「三井寺妖怪ナイト」など、妖怪にまつわるさまざまなイベントを手掛ける。

現在、怖いモノを見た。幽霊に出会った。あれは妖怪だったのか。オチはないけど不思議な体験をした。など「怖い話」を募集中。あなたの 怪談 聞かせてください

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