何もない人間でも、ガマンして努力してがんばれば、舞台に立てる。会社員から喜劇役者になった曽我廼家桃太郎さんが描く、松竹新喜劇の未来。
5人体制という形も想像してなかったです。最初はやっぱり、藤山扇治郎さんが次の代表みたいな感じで、僕らはまわりで支えていくのかなと思ってたので。
渋谷天外さんの付き人時代から松竹新喜劇の舞台に立たれていていましたが、正式に入団されるのはまだその後なんですか?
そうですね、付き人を卒業してちょっとしてから入団やったと思いますね。2017年です。
入団する前と後では、いただく役が変わったりしました?
いや、あんまり付き人の時と役の違いはなくて。入団したからって、何か変わったわけじゃなかったですね(笑)。天外さんの付き人をしなくなったっていうだけの感覚でした。
意外とそんな感じなんですね。入団当初は本名で、それから曽我廼家桃太郎に改名されたと伺っています。歴史ある曽我廼家の名前を受け継ぐことになった時は、どんなお気持ちでした?
いただけるなら、ありがたく頂戴しますっていう感覚で。けど、期待はありました。というのも先輩方が「あなた曽我廼家っぽいわ」って言ってくれたりとか、天外さんもそんな話をしてくれたりとかがあったんで。だから、その話を聞いた時に「ついに来たか」って。
曽我廼家を名乗ることに対して、プレッシャーというのはありますか?
持たなければいけないんですけど……そんなに大きくは(笑)。ただ単に、またこれで人生が楽しくなるな、また想像のつかない新しい人生になるなっていう、そういうワクワク感のほうが大きかったです。
ハートが強い(笑)!でも、2021年に改名されて、そして2023年には天外さんが代表を勇退されて、桃太郎さんを含む若手5名体制になりましたよね。どんどん重圧が増すというか……
そうなんですよ、どんどん勝手に、劇団内で曽我廼家桃太郎が上がって行くんです。だから、何なんやろなって思ってますよ。すごく不思議です。
5人体制になるとお聞きになった時は、どんな感想だったんですか?
それはびっくりしました。5人体制という形も想像してなかったです。最初はやっぱり、藤山扇治郎さんが次の代表みたいな感じで、僕らはまわりで支えていくのかなと思ってたので。
次の松竹新喜劇を担う若手5人に自分が入っている事に対しては、どう感じておられますか?
賑やかさないといけないなって思いましたね。僕以外の4人は関西出身で、それぞれすごい人ばっかりですし。松竹新喜劇という関西弁をすごく大事にしてる劇団に、岡山出身で関西弁100%じゃない人間が居させてもらうのが申し訳ない気持ちもありましたけど、でも普通の人間でもがんばってればこうなれるんやなっていう思いもありました。こんな人間でも、地道に続けていれば、認めてもらえるようになるのかなと。
役者になるために「大阪 劇団」で検索されてきた頃からすると、本当に大出世ですよね。その当時からご自身は、どんな役者になりたいと思っておられたんですか?
役者さんでいうと、竹中直人さんとか、阿部サダヲさんとか、八嶋智人さんとか。僕も小柄ですから、小ささを武器にしつつ、面白さを出してっていう。面白みは絶対に必要で、笑いがあるところに生きていきたいっていうのは昔からありましたね。
でも、役者を目指した当時は、あんな芝居がしたいとか、そういうのはなかったんです。ただ、見てて面白い役者さんであればそれでいいっていう感じでしたね。
松竹新喜劇のスタイルというか方向性みたいなものは、ご自身には合ってました?
合ってたのもありますし、松竹新喜劇ならではの面白さを感じたんです。松竹新喜劇の芝居って、普通の話なんですけど、何か面白いなっていう不思議な面白さを感じたんで、そこは新しい笑いを見つけれたっていう感じでしたね。
曽我廼家桃太郎(そがのや・ももたろう)
岡山県出身。松竹芸能養成所にて演劇を勉強したのち、劇団代表であった三代目渋谷天外の付き人となる。その後2017年に松竹新喜劇に入団。竹本真之として活動後、2021年大阪松竹座「松竹新喜劇 錦秋公演」にて曽我廼家桃太郎に改名。松竹新喜劇以外にも、2023年に南座をはじめ全国三都市で上演された舞台『歌うシャイロック』では歌やダンスにも挑戦し、芸の幅を広げている。