“伝説のハガキ職人”による自伝小説『笑いのカイブツ』が映画化!ツチヤタカユキさんが「笑い」にぶつけた狂おしいのほどの情熱を、滝本憲吾監督はどうスクリーンに描くのか。
作る物ももちろん面白くありたいんですけど、生き様とか存在としても面白くありたいんで。そんなふうに生きていきたいって感じです。(ツチヤさん)
ツチヤさんは劇中の大喜利や、漫才シーンの台本もお書きになられたんですよね?
ツチヤ:そうですね。監督が家に来て、大喜利をここのシーンで挟むからこういう感じのを、みたいに打合せして。いくつかは、以前書いたやつも混ざってますけど。
漫才は、劇中で仲野太賀さんと板橋駿谷さんが演じておられました。
ツチヤ:そうですね。役者さんがやりやすいように、ただしゃべくりじゃなく漫才コントを入れるとか、誰がやってもいいようにはしましたね。スベるのだけちょっとキツいなと思って、ウケやすい感じで作りました。
滝本:台本をツチヤさんに書いてもらって、令和ロマンさんに漫才を監修してもらって。仲野さんと板橋さんが演じるのを見て、ここで客に絡んで、ここをギャグにしてとか、セッションしながらブラッシュアップしていきました。やっぱり僕らだけじゃなくて、芸人さんのフィルターを一度ちゃんと通したかったんで。
きっちりひとネタ、披露されてましたもんね。
滝本:ちゃんと提示したかったんです、ツチヤタカユキの漫才の形を。本人からしたら、僕の勝負はこんなんじゃないって思うかもしれないですけど、僕はあのコンビを通してツチヤさんが書く漫才をちゃんとお客さんに届けたいと思ったんです。
ツチヤさんは、漫才のシーンも映画になってからご覧になられたんですか?
ツチヤ:そうです。試写会で初めて。ライブシーンだったんで、スベってたらもう見てられなかったですね(笑)
いや、ちゃんと面白かったです! ツチヤさんの近況というか、最近の活動についてはどのような感じなんですか?
ツチヤ:今は、海外にいっぱい行ってる感じです。196ヵ国あって、全部まわりたいなと思って。僕そんなに長生きしないと思ってて、40代は無いと思ってるんですよ。だからあと5年以内にまわろうと思ったら、めっちゃ数行かなあかん。だから、空いたらもう海外。で、ちょいちょいくる仕事を死なない程度にやりながら、海外いっぱい行くみたいな感じです。
なぜ海外なんですか?
ツチヤ:ディズニーランドの乗りもの全部乗りたい!みたいな感覚で、世界中の国全部行きたい!って感じですね。
今はお笑いのお仕事は、依頼が来たらされるというスタンス?
ツチヤ:依頼が来たらやったり、勝手に作りたくなる時は作ったり。この前も落語を書いて応募して、佳作みたいなのはもらいました。
この映画の頃のような、1日2000個ボケを考えるみたいなことは?
ツチヤ:いや、もうないです。仕事来たらそこに向けてガーっていきますけど、勝手に何か作るのは、たまにほんまにやりたいってなった時、疼いた時にバーって衝動的に書いて、出す場があれば出してみたいな感じです。
これからやってみたい事はありますか?
ツチヤ:面白いなーと思い続けたいです。ちょっと離れたところから引きで見てる俺が、俺の事を面白いと思い続けたいんで。だから生き方とかも、海外にバーっと行くのも面白いなと思ってるんです、どっかで。こんな事してるやつおらんやろみたいな。どっかで面白いと思っていたいし、作る物ももちろん面白くありたいんですけど、生き様とか存在としても面白くありたいんで。そんなふうに生きていきたいって感じです。
ツチヤタカユキをもう一人のツチヤタカユキが後ろから見て、面白いことやってんなと思えるような。
ツチヤ:そういう状態をずっとジジイになるまで、生きてるんやったらそうありたいですね。
では最後に、映画『笑いのカイブツ』の見どころを、滝本監督とツチヤさんにそれぞれ教えていただけたらと思います。
滝本:僕は岡山天音くんという役者に釘付けになる2時間だと思います。ツチヤタカユキというキャラクターを演じてますけど、でももう岡山天音であると思ってるんで、その壮絶な人生への向き合い方を一緒に体験していただいて。
お客さんがどういう風に思うか、僕は楽しみです。元気をもらうのか、勇気をもらうのか、それともクソだなと思うのか、そこはお任せしますけど、何かを受け取ってもらえる熱量を映画に入れ込んだので。僕としては、これでも食らえ!という熱を込めて作っているので、それを存分に味わってもらえたらと思います。
確かに、すごい熱量でした。
滝本:そう感じてもらえるなら、成功してるというか、作った意味があるなと思います。原作にそのパワーがあったので、それを僕らがちゃんと消化できてるんかなって。
では、ツチヤさんはいかがですか?
ツチヤ:ラストの3つのシーンが見どころかなと思っていて。これは、2回出会う映画やなと思ってるんです。前半に出会う人達とは、お笑いの事を考えまくってる状態で出会っているんですけど、後半はお笑いを辞めた後にもう一回再会していくんですよ。その時は人間に戻ってるというか、そこで初めて歯車が噛み合っていく。ラスト3つのシーンは試写会でまわりの人達の反応がすごかったですし、そこかなと思って。2回目に初めて出会う、人間になって。
なるほど、2回出会う映画。それは、ご自身の経験としても、そういう実感というか感覚はあったんですか?
ツチヤ:ありました。お笑いを辞めた後のほうが、人間同士の会話ができる。お笑いやってる時なんか、もう会話すら成立しないぐらい。ボケが浮かぶ、なにを聞かれてもボケがバーッと出るみたいな。
その時はお笑いの事しか考えてないから、会話にならない。
ツチヤ:もう喋りたくもないみたいな。おもんない時間やみたいな。おもんない時間を費やしたくないから。
滝本:そらまわりは大変ですよね。
ツチヤ:ほんまに。一回お笑いを辞めて、やっと人と喋れるようになりました。作品の中でも「人間関係不得意」って言ってますけど、お笑い辞めたらちょっと治ったんです(笑)
<INFORMATION>
『笑いのカイブツ』
何をするにも不器用。人間関係も不得意なツチヤタカユキの生きがいは、「レジェンド」になるためにテレビの大喜利番組にネタを投稿すること。5秒に1本。狂ったように毎日ネタを考え続けて6年。その実力が認められ、念願叶ってお笑い劇場の作家見習いになる。しかし、笑いだけを追求し、他者と交わらずに常識から逸脱した行動をとり続けるツチヤは周囲から理解されず、志半ばで劇場を去ることになる。自暴自棄になりながらも笑いを諦め切れずに、ラジオ番組にネタを投稿する“ハガキ職人”として再起をかけると、次第に注目を集め、尊敬する芸人・西寺から声が掛かる。ツチヤは構成作家を目指し、意を決して大阪から上京するが─。
情熱や努力だけでは上手くいかない現実。不器用にしか生きられないもどかしさを抱えて傷だらけになりながらも、自分の信じる道を猛進するツチヤとその熱量に突き動かされていく人たち─。観る者の魂に突き刺さる、圧倒的な人間ドラマが誕生した。
劇場公開は2024年1月5日(金)から!
出演:
岡山天音
片岡礼子 松本穂香 前原滉 板橋駿谷
淡梨 前田旺志郎 管勇毅 松角洋平
菅田将暉 仲野太賀
監督:滝本憲吾
原作:ツチヤタカユキ「笑いのカイブツ」(文春文庫)
公開:2024年1月5日(金)
配給:ショウゲート、アニモプロデュース
https://sundae-films.com/warai-kaibutsu/
🄫2023「笑いのカイブツ」製作委員会
滝本 憲吾
1979年5月3日生まれ、大阪府出身。『ゲロッパ !』(03)で初めて劇映画の監督アシスタントとして参加。以後、上京しフリーの助監督として多くの作品に携わる。2007年ドキュメンタリー『サディスティック・ミカ・バンド』(監修: 井筒和幸)で監督デビュー。監督としてCMやPV、テレビドラマを多数制作しており、現在は2024年配信予定のアクションドラマを撮影中。
ツチヤタカユキ
1988年3月20日生まれ、大阪府出身。高校時代からテレビやラジオ番組にネタを投稿。圧倒的な採用回数を誇り、“伝説のハガキ職人”と呼ばれるようになる。芸人による招聘で上京し、ラジオの構成作家を志すも、“人間関係不得意”のため挫折。帰阪後、自伝小説『笑いのカイブツ』を出版。近年は小説の執筆や新作落語の創作、吉本新喜劇の作家としても活動。