“伝説のハガキ職人”による自伝小説『笑いのカイブツ』が映画化!ツチヤタカユキさんが「笑い」にぶつけた狂おしいのほどの情熱を、滝本憲吾監督はどうスクリーンに描くのか。


俺、こんなヤバい奴なんやなって(笑)。当時は、何でこんなに職質されんねやろって怒ってたし、何でみんなそんな不審者みたいな目で見てくんねんってキレてたんですけど。(ツチヤさん)

ツチヤさんは映画化にあたって、何かアイデアを出されたりされたんですか?

ツチヤ:なにも。全任せです。

そうなんですね!

滝本:最初にツチヤさんが僕らに、何やってくれてもいいって言ってくれたんで。心置きなく、分かりましたって。それは僕らが勝手にやるんじゃなくて、ツチヤさんの想いをちゃんと僕らなりに受け取った上でですよ。

ツチヤさんは、もう完全に皆さんにお任せしますっていう感じで?

ツチヤ:はい、好きなようにやってくださいって。

滝本:何も口を出さないっていうのは、信用してくれてるからっていうか。逐一ちゃんと報告はしますけど、そこに対して「何でですか?」とか、そういう野暮なことは一切言わないですね。

ツチヤさんは作家魂がうずいて、何か言いたくなることはなかったですか?

ツチヤ:いや、それは無く。もう信頼です、絶対面白くしてくれるって。

滝本:小説と映画は別のベクトルやってご存知やから、いっぱい映画も観てはるから。

ツチヤ:むしろ書いたものがどうなるのか、楽しみの方がすごいありました。

ご本人を前にして申し訳ないのですが、劇中のツチヤさんは笑いにストイック過ぎて全く社会に適応できず、その様子がすごく生きづらそうで見ていてもどかしく感じました。ご自身の経験を映画でもう一度追体験するようなことかと思うんですが、この作品をどんな気持ちでご覧になったんでしょうか。

ツチヤ:もう、走馬灯ですね。生きてる時に見せられたっていう感じで。処理ができなくて、1週間くらい放心状態になって。でも後で考えたら、ふだんは自分を客観視する事がないじゃないですか、コックピットが自分なんで。だから映画で初めて自分の姿を引きで見て、よくこんな奴を劇場に入れてくれたなとか、東京に呼んでくれたりしたなって思いました。まわりの人にすごい助けられてきたなっていうのは感謝しましたね。

映画になって自分を引きで見たから、分かった部分って何かありますか?

ツチヤ:俺、こんなヤバい奴なんやなって(笑)。当時は、何でこんなに職質されんねやろって怒ってたし、何でみんなそんな不審者みたいな目で見てくんねんってキレてたんですけど。けど映画観たら、そらそうやなって。

映画のツチヤは、リアリティありました?

ツチヤ:ありましたね、あんな感じでしたね。

ツチヤさんの役を演じた岡山天音さんの芝居もすごかったですが、岡山さんが演じているのをツチヤさんはどうご覧になってましたか?

ツチヤ:現場に行った時、ほんとに辛そうだったんです、ダウナーな状態で。もうどうかしてしまうんじゃないかってぐらい。『あしたのジョー』の、最後の灰になった状態で立ってるみたいな。実際めっちゃしんどかったみたいなんですけど、自分をこうボコボコにどつき回しながらやってるような感じでした。

それだけ役に入り込んでおられたんですね。

ツチヤ:こんな地獄の中に行くみたいな役を、あんなに活躍されてる方が、よく引き受けてくださったなって。

ラジオ番組の伝説のハガキ職人だったツチヤさんなので、ラジオブースやCD棚の前でも撮影。

岡山さんと現場でお話される機会はあったんですか?

ツチヤ:撮影中はあいさつ程度です。撮影後に初めてちゃんと喋ったって感じです。

滝本:そこはあえてですね、両者。

監督は岡山さんに対して、細かく演出されるのか、お任せなのか、どちらでしたか?

滝本:細かくやってましたよ。お任せももちろんありますけど、投げっぱなしではなくて、合ってるからいけてるって事なんで。ここのツチヤは社会に対してのギラギラがもうちょっとあるんじゃないかとか、この優しさを受けることがツチヤにとって辛いから反抗しちゃうんじゃないかとか。そういう照らし合わせですね。

岡山さんの思うツチヤと、監督の思うツチヤを照らし合わせながら。でも、どのシーンもけっこう重いというか、簡単なものはひとつもないというか。

滝本:だから、言う方も辛いんですよ。天音くんもそういう風になってるから、細かく言われると、口には出さなくてもうるさいって思う部分もあるやろうし。だって僕がツチヤ役やったら、絶対そう思いますよ。でも彼は、こっちの思いもちゃんと聞いてくれるし、それを取り入れて芝居をしてくれる。だから本当に大変やったと思います。

公開:2024年1月5日(金) 配給:ショウゲート、アニモプロデュース
🄫2023「笑いのカイブツ」製作委員会

セリフもそんなにたくさんないから、余計に難しいように思います。

滝本:そうです。だからそれをうまく表現してくれたというか。最初はもっとあったんですけどね、セリフ。台本を作るなかで、消えました。

岡山さんのキャスティングはどのように決められたんですか?

滝本:プロデューサーと探してて、僕は天音くんを知ってたので、この人やったら面白いツチヤができるねっていう事で決めたというか。決め顔を持って無い人やから。10色ボールペンみたいな人。しかも1色ずつじゃなくて、10色同時に出せるような人なんです。それは非常に魅力的ですよね、今回の映画においては。

他の出演者の皆さんも、非常に豪華ですよね。

滝本:僕らもダメもとでオファーしてるんですけど、まさかのほんまかいな!?みたいになってます。天音くんの昔からの友達っていうのが大きいですね。天音が主演やったら、一肌脱ぎまっせっていう。天音くんが今まで頑張ってきた結果です。

え、出てくれるんや!?みたいな感じですか?

滝本:ほんまに。こんだけ豪華な人が揃ってくれて。僕的にはありがたい限りです。

僕の「面白い」より、みんなの「面白い」のほうが、面白いかもしれないじゃないですか。それが交わってひとつのでっかい芯になって、お客さんに刺さればいいわけで。(滝本監督)
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Profile

滝本 憲吾

1979年5月3日生まれ、大阪府出身。『ゲロッパ !』(03)で初めて劇映画の監督アシスタントとして参加。以後、上京しフリーの助監督として多くの作品に携わる。2007年ドキュメンタリー『サディスティック・ミカ・バンド』(監修: 井筒和幸)で監督デビュー。監督としてCMやPV、テレビドラマを多数制作しており、現在は2024年配信予定のアクションドラマを撮影中。

Profile

ツチヤタカユキ

1988年3月20日生まれ、大阪府出身。高校時代からテレビやラジオ番組にネタを投稿。圧倒的な採用回数を誇り、“伝説のハガキ職人”と呼ばれるようになる。芸人による招聘で上京し、ラジオの構成作家を志すも、“人間関係不得意”のため挫折。帰阪後、自伝小説『笑いのカイブツ』を出版。近年は小説の執筆や新作落語の創作、吉本新喜劇の作家としても活動。

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