大阪のインディーズお笑いライブが観てみたい!大阪・ミナミで『舞台袖』&『楽屋A』を営む加藤進之介さんにその実態を聞きました。


フリーや兼業芸人さんの本拠地を作りたくて『楽屋A』をスタート。“がんばる意味”を見出してもらえるよう、さまざまな形でサポートしています。

こんなことを伝えるのも申し訳ないのですが、私自身大阪のインディーズシーンに明るくなくて。こちらのようなライブハウスは他にもたくさんあるんですか?

芸人さんの数の違いもありますが、東京に比べると圧倒的に少ないです。大阪吉本が所属芸人の自主ライブをNGにしていることが理由の1つ。5upよしもと時代はライブができたんですけど、よしもと漫才劇場ができて以降、吉本主催以外のライブにほとんど出演できないことになったんです。関西人って吉本以外お笑いの事務所がないって思っている人もいるくらい、やっぱり吉本が一大勢力で。そのぶん観に来るお客さんも少なくて、インディーズライブを主催しても商売にならないからハコが少ないんですよね。新宿とかやと1日10カ所くらいお笑いライブをやってる劇場があるんで、「今日はどこへ行こうかな」みたいな楽しみ方ができるんです。大阪も少しずつそうなっていけば嬉しいなと思います。

大阪に10年ほど住んでいるのですが、お笑いといえば吉本というイメージは私にもあります。やっぱり吉本強しですね。

僕の体感だと、大阪で活動している9割くらいの芸人さんは吉本に所属していて、その他が松竹芸能や無所属やと思います。東京には吉本以外にも事務所がたくさんあるし、劇場の数もめちゃくちゃ多いので、比例してお客さんの総数も多いんじゃないのかなと。しかも、東京の事務所は芸人の自主性に割と寛容なので、東京にいれば苦労せずにライブに出られてネタを磨ける。そのぶん、おもしろい芸人が見つかりやすい状況ではあるんですよ。それで今、大阪の芸人がどんどん東京に行ってしまっているんです。その状況を変えるために、お笑いのライブハウスを始めました。

インタビューをさせていただいた『楽屋A』はこんな感じの雰囲気。

『舞台袖』とその系列の『楽屋A』の棲み分けはありますか?

最初に作った『舞台袖』は、お笑い好きとお笑い芸人が集まるバーで、2022年にスタートした『楽屋A』は、フリーはもちろん兼業芸人や学生など、舞台に出たいと思う芸人さんが全員出られる劇場です。今は『楽屋A』を吉本のような本拠地劇場を持っていない芸人さんの本拠地にしたくて、彼らをサポートするためのシステムも少しずつ導入しています。

ライブは持ち込みと自主企画、どちらが多いんですか?

大半は持ち込み企画で、一部はうちが主催しています。うちは会場の費用がタダで、スタッフもこっちで用意するから、企画を持ち込んでくれさえすればあとはなんとかするっていうスタンスです。条件が良いから使ってくれている芸人も多いのかもしれません。大阪のインディーズライブって環境的に集客が難しい面があるので、芸人さんが赤を被らないようにしたくて。うちに赤字が出ることもあるけど、そのリスクはこっちで被ればいいかなと思っています。

本当に芸人さん思いですね。どうしてそこまで大阪のお笑いにこだわるんですか?

昔は東京の方がテレビが強いからっていうので、売れたら上京する人が多かったけど、今はライブシーンに関しても東京の方がずっと良くなって。大阪でやる意味が正直あんまりなくなってきてるんです。スタートに大阪を選ぶ芸人が1人もおらんくなったら、大阪からお笑い文化がなくなってしまう。大阪出身で大阪への愛が深いっていうよりは、大阪おもんないって言われるのが寂しくて。うちは学生芸人の利用も多いんですが、学生お笑いも東京の方がずっと盛んですし。

確かに、東京には大学のお笑いサークル上がりの芸人さんが多いですね。

なぜか関西にはお笑いサークルがある大学が少なかったんですが、ここ2、3年で各大学にサークルができ始めて、うちも学生が出演できるライブをたくさん打つようになりました。たぶんラランドさんが出てきてからですかね。僕自身も大学時代たくさんライブに出たかったけど、学生が出られるものがほとんどなくて、あったとしても吉本などのプロが出るライブだったからビビって出られなかったんです。そんな状況を打破したいという思いもあって、学生や社会人だけが出られるライブを意識的に増やしました。そうするうちに、少しずつ結果が出るようになったんです。関西で唯一人口が増えて盛り上がってるのが学生芸人かもしれない。

答えづらいかもしれないんですが、大阪で吉本以外の芸人さんが売れるのは難しいんですか?

う〜ん、フリーの芸人さんが大阪で売れた事例がないんですよね。吉本に所属していると、このルートを辿れば売れるっていう指標があるけど、フリーでやっているとその先が見えてこないんです。関西は吉本制作の番組も多いから、テレビに出るとかはどうしても難しいんだと思います。もちろんM-1優勝!とか目に見える結果があれば全部ひっくり返せるので、言い訳といえばそうなっちゃいますが……。

そんな実情があるんですね。

何かがんばる目的があった方がいいのかなというのもあり、『楽屋A』に選抜メンバー制度を設けて、定期的に入れ替え戦を行っています。「この人がおもしろいんです」という指標があれば、テレビ局にもプレゼンしやすくなるのかなと。あとは、誰もお笑いで飯を食えないのは夢がないから、トップ3の人たちにだけうちからお金を渡しています。今はまだ本当に微々たる額なんですけど……、がんばって上がればバイトを辞めれるとか、そういうモチベーションのために制度を作りました。その積み重ねとテレビ局の方の熱いサポートがあって、今まで出場できなかった賞レースにフリーの芸人さんが出場できるようになったんです。『楽屋A』の劇場メンバーからいいところまで進出する芸人も出てきて、ここでがんばる意味を少しずつ見出してもらえるようになったかなと思います。現に先日のytv漫才新人賞のROUND1ステージに、うちの看板芸人のボニーボニーが出場したんです。無所属の芸人さんがあの舞台に立つのは初めてだったので、本当に嬉しい出来事でした。

長堀通りから入って四つ橋筋沿いを歩いていると現れるこの看板が目印です。
僕らの課題は、若手と学生芸人の強化と、吉本以外の芸人さんを人気者にすること。今後は、関西の学生お笑いシーンをもっと盛り上げたいです。
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Profile

加藤 進之介

1992年生まれ、大阪府出身。大学4回生の時に37期生としてNSC大阪校に入り、一度は芸人を志すも一般企業に就職。3年ほど働いたのち、アルバイトで芸人の人脈と企画・運営のノウハウを身につけて2019年に『舞台袖』をスタート。22年にはライブに特化した『楽屋A』をスタートし、日々たくさんのインディーズライブを行なっている。

Shop Data

楽屋A

住所: 大阪市西区新町1-6-23 四ツ橋大川ビル B1F
電話: 080-6176-0467
営業時間: 公演に準ずる
休日: 不定休

Youtube:@gakuya_a
ライブ予約:https://tiget.net/users/441684

Shop Data

舞台袖

住所: 大阪市中央区西心斎橋2-14-16 D.T.2ビル 3F
電話: 080-6176-0467
営業時間: 公演に準ずる
休日: 不定休

Youtube:@gakuya_a
ライブ予約:https://tiget.net/users/1011091

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