【ぼくらのアメ村エトセトラ vol.5】 扉を開ければ、そこは…。『FARPLANE』のロビンさんが街と人と築いた、自分のコンプレックスから生まれた異世界。
田舎では人気者。ガキの頃は勢いでなんとかなったし、アメ村も勢いの街ではあるけど、その中にも異常なこだわりをもった真っ直ぐな人間がいる。そんな人間と対峙した時、自分には何も無いなと。
ロビンさんがアメ村に初めて足を踏み入れたのは何歳の時だったんですか?
京都の舞鶴市出身で、初めてアメ村に来たのは中学生の頃。でもね、いきなりトラウマになったんですよ。
どんな事件が?(笑)
お年玉でもらった7万円を握りしめてアメ村に来たんですが、30分で無くなった。ファッションのこともそんなに分かってなかったけど、最初に入ったお店で「これ似合うから買いやー」「これもつけとくわー」って言われて無理やり買わされて…。全然いらんと思いつつも断りきれず、30分で7万円が…。
当時はそっち系のお店もまだまだありましたよね。
みんなは買い物楽しんでんのに俺だけスッカラカンやから、一人で三角公園に座ってたりしてた。だからね、アメ村に対しては憎しみからスタートしてるんですよ(笑)
切なすぎます(笑)。で、そんな憎しみを抱きつつ、大阪にはいつ出てきたんですか?
17歳ですね。地元で一緒に音楽やってた先輩が「ギターおらんからバンドに入らんか?」って誘われて。高校も辞めてたし、大阪に出るのもええかなと思ったんです。
それで大阪に出て来てからは、音楽活動を精力的に?
音楽活動はほどほどに、ナンパばっかしてましたね。アメ村のいろんな服屋さんに行ったり、ティッシュ配りのバイトもしたりして、知り合いはどんどん増えていくんですが…。
誘惑に流されたりもしますよね。
でもね、大阪に来て1〜2年経つと、心を閉ざすようになってしまって。田舎では人気者やったのに、こっちでは誰も知らんし、音楽シーンはめちゃくちゃハードやし。勢いだけで生きていけると思ってたから、それだけでは足りないんやなと痛感して。圧倒的に自分の中の深みがないことに気づいて、そこから家にこもるようになって陰の方に傾いていったんです。
マジですか!?先ほど言ってたコンプレックスにも繋がっていくと。
人間としての圧倒的な自信が足りてなかったんです。ガキの頃は勢いでなんとかなったし、アメ村も勢いの街ではあるけど、その中にも異常なこだわりをもった真っ直ぐな人間がいる。そんな人間と対峙した時、自分には何も無いなと。
自分自身で、自分の現在地とか中身を再確認する時間やったんですね。ちなみに家にこもって何してたんですか?
本は異常に読んでましたね。多分、自分の知識とかをいろんな方向に向けて蓄えようとしたり、磨こうとしてたんやと思います。ただ、大層な想いはなかったし、「バンドで飯を食う!」と言ってるかと思えば、オンラインゲームに夢中になってたりもして(笑)。ちゃんと仕事もせずに女の子の家を点々としてたし、考えてることとやってることが全然違う。
ある意味で強いハートもってますね。その時期が、ヒモ生活だったと(笑)
ですね。マジでクソみたいな生活してましたよ。まぁ、今思うと大したもんやなと(笑)
で、結局のところ、音楽活動の方はどうなったんですか?
2005年にお店を始める前に、一旦見切りをつけたんです。ベースをしてて、いろんな曲も作ったりしたけど、ガキの頃から本気でやってたかと言えば違う。知識も感性も全然足りてないし、ホンマにかっこいい領域までは届いてなかったので。
いろいろ話を聞いてて思うんですが、ロビンさんって「これでええやん」ではなく、常に自己分析してますよね。陰の方に傾く時もあるけど、自分を知ろうとするからまた前進もできるんやなと。
音楽の話で言えば、バンドだけじゃなくて、ゲームのサントラを作ってる人とかいっぱいいるじゃないですか。無いものをありそうに魅せるテクってすごいし、そんなのを形成できる域ではまだない。俺の音楽から何を感じられるか考えた時、これって俺が気持ちいいだけやんって思ったのが、見切りをつけた大きな理由。でも、音楽はまたいつかどこかで再チャレンジしたいなって気持ちはあるんですよ。
それは楽しみ!これまでの人生経験とかが加味された音楽、聴いてみたいです。後、ファッションの話も少し聞かせてください。僕がロビンさんを他者と比較するのもおかしいですが、いつもすごく個性的だし、世界観があるなと。ファッションは昔から今のようなスタイルなんですか?
昔から服は派手でしたね。音楽とかと一緒で、ファッションも何かしらの世界観を形成するものと思ってるから、その名残が今もあるんかもしれない。みんな見てほしいとか、かっこええやろ?っていう、誰かに対する意識が向いてる部分もあるし。その反面、自分で自分を褒めるツールでもあるのかなと、ファッションって。普段あんまり褒められることもないので(笑)
確かに、自分で自分を褒めるツールではありますよね。「今日の俺、イケてるで!」って感じで。
俺の場合、田舎の人気者が大阪に出て来て18〜19歳で心を閉ざし、自分には何かが足りない、まだまだ薄い人間だって気づかされた。今だってまだまだ薄いから、もっと強くありたいと思って生きてる。結局は、その繰り返しなんかなって。
ロビン
株式会社FARPLANE代表。2005年にアメリカ村に『FARPLANE』をオープンさせ、独自のカルチャーを発信しながら街のナイトシーンを牽引。多様な在り方と、人の強いこだわりと、相反するような心の在り方に働きかけ、「人に迷惑を掛けないならば好きに生きるべきだ!」の想いをコンセプトに、新機軸の世界観を表現する。2021年3月には心斎橋PARCOにも2号店を出店。今年11月25日(土)には、17回目を迎える「FARPLANE NIGHT」が味園ユニバースで開催されることが決定している。