【ぼくらのアメ村エトセトラ vol.5】 扉を開ければ、そこは…。『FARPLANE』のロビンさんが街と人と築いた、自分のコンプレックスから生まれた異世界。


おもろいことして死んでいきたい。ワクワクするもんが常に欲しいというか、かっこいいと思う瞬間を自分自身が味わいたいのかも。その時の人間って、ダサいねんけどね。

アメ村にオープンして18年目を迎える『FARPLANE』ですが、今では海外のお客さんもよく目にします。これまで築いてきた世界観が広く認知されてきてる中、ロビンさん自身もお店の進化や成長を実感することってありますか?

ゴシックやフェティッシュはファッション的にはおしゃれなものだと思ってましたが、そこを目指してたわけじゃないし、お店を続けるうちにいろんな繋がりが生まれ、そこで形成されていったのが今の『FARPLANE』の世界観。日本って、ある種の世界観に対する価値がそこまで高くない反面、お笑いに対する文化水準は異常に高いじゃないですか。ファッションや音楽などの既に完成された世界観を感じ取ってる人はこの街にも多いけど、自分たちの世界観への認識はまだまだですよ。ずっとがむしゃらにやってきて、いろんなカルチャーを受け止めながら自分らのカルチャーを発信し、最初は「何やコイツら!?」と思ってた人たちも受け入れてくれるようになった。そうやって興味をもってくれた人たちが発信してくれたおかげで今があるし、海外のお客さんに好まれてるのもそうした側面があるからかな。

その姿勢が、『FARPLANE』という異世界をより複合的なものにしていったと。

それで、自分たちとしてガラッと変わったきっかけで言えば、2021年3月の心斎橋PARCOの出店ですね。アメ村で自分たちのカルチャーを築けたと思ってたけど、世の中に対しては何もできていないというもどかしさも湧いてた頃で、そのコンプレックスを打破する機会にもなった。「おもろいことやろうぜ!」という想いでやってきたことがビジネスに傾く瞬間でもあり、別にそれが悪いことじゃないし、やってることは変わらんけど線引きが難しかったのは覚えてます。

アンダーグラウンドから一気にオープンな場所に出ることになりますもんね。

「FARPLANE NIGHT」のイベントも続けてて、味園ユニバースでも開催してたけど劇的な変化は起こってなかったし、それ以上に大きくもなってなかった。集客も500人、1000人と増えていく中で、みんなで「おもろいことやろうぜ!」だけじゃなく、上手にしないと広がっていかないなと。次の一手をどうするべきか、ずっと考えてた時に声をかけてもらったんですよ。

心斎橋PARCOへの出店を決断する時、悩んだりもしました?

まぁ多少はありましたけど、世の中に何かを残すことができてないからチャンスやん!って感じで。それに担当者もおもろい人でね。変な壺を買わされるんかなってくらいのノリで話も弾み、これは進むしかないなと。

実際、出店してからの手応えはどうでしょう?

『FARPLANE』としても、会社としても、心斎橋PARCOに出店できた信頼値は大きいですね。自分たちがずっと向き合ってきたアメ村という世界や関係から、さらに一歩踏み出すことはできたかなと。

コロナ禍もようやく落ち着きましたし、さらに『FARPLANE』のカルチャーを世の中に発信していく機会はどんどん増えそうですよね。『FARPLANE』としてさらに一歩踏み出すことができたということですが、改めてアメ村ってロビンさんにとってどんな街なんでしょうか?いろんな想いも聞かせてもらえればと。

今までの自分を形成する一部ではあるし、ガキの頃に体験した憎しみも含めて(笑)、他の街にはないおもろさはある。カルチャーを発信する側として、街をもっと復活させるために動いてる側面もあるけど、簡単にはいかないなと思ってる面もあって。

それは?

アメ村にはいろんな歴史や奇跡があるけど、結局はルールのないところにカルチャーが生まれたから流行ったんやろなと思う。日本における2ちゃんねるとかニコ生とかも同じで、今でも当時のアメ村を体験した人らはずっとそこを引きずってる部分もあってね。ここは伝説の街、的な感じで。でも、今までの良さは残しながら新しいアメ村を作っていかないといけない。あの時の価値観で考えたら、あの時を超えれるわけないし、新しい価値観でチャレンジするのはもちろんやけど、失敗を許容する街にもならないとあかんと思うんですよ。そうなっていけば、アメ村の可能性はもっと広がる。ただ、やるなら圧倒的なエネルギーが必要やなと。

なるほど。アメ村をそう分析しながら、ロビンさん自身もどうにしかしていきたい想いはあると。

あるのはあるし、ある方がおもろいやろなって。アメ村って無駄の塊というか、趣味の街であり、情熱の街。「何でそんなことにまでこだわってんの?」みたいな人が圧倒的に多い。俺が言うのもアレですが、不器用やけど自分の芯だけをもって生きてる人ばっかりし、人間としてかっこいい人が多い街なんですよね。だから俺も、おもろいことして死んでいきたいんですよ。与えられたもんで楽しむのが下手な人間で、すぐに飽きてしまう。それやったら、自分が関わってちょっとでもおもろくなる方がええやんって思うから。

人間としてパンク!アメ村の中の人たちって、やっぱりそれぞれに独特の“濃さ”をもってますし。

それこそAIが発達して人間のいろんな仕事を奪い始めたら、こうやって無駄なことに情熱を注げる人の方が残るはず。インバウンドも徐々に戻って来て、万博とかIRとかも動き出したら、海外の人らはこっちサイドの方が興味をもつ人が多いんちゃうかなって思うんですよ。そのためにはしっかりと残して、広める作業が本質的に必要。金を上手に稼ぐのって、誰かのためと言いつつも本人が気持ちよくなってる部分もあるやろうし、そうじゃなくて、人間ってこんな感じやで!っていうのを実感できるのがアメ村やから。まぁ、そう思ったり思わんかったりしながら…、おもろいことしていきたいんですわ(笑)

中学生の時に抱いた憎しみが、すごい深い愛に変わってますね。アメ村に身を置く当事者としての葛藤も伝わってくるし、やっぱり街と向き合ってるなと。そんなロビンさんが考えるおもろいことの、最終目標とは?

そこに向かって着実に進んでるかと言えばそうでもないし、絵空事でもあるんですけどね。『FARPLANE』としてのゴールは、大人の遊園地を作ろうと思ってます。そのためなら業態も別に関係なくて、いろんな経験をしてきた人が純粋におもろいことに目を向けて事業したり、仲間を集めたりする。おもろいことに向かって進んでる会社というのを、カタチにしたいなと。そうなればめちゃうれしいですね。万博やIRでどれだけおもろいことが起こるかは分からんけど、海外の人の価値観が入ってくるのはおもろくなるはずやし。

大人の遊園地、それを会社の中でも実現するってええですね。先ほども、おもろいことして死んでいきたいって言うてましたけど、おもろさに貪欲になるモチベーションってどこから来てるんですか?

ワクワクするもんが常に欲しいというか、かっこいいと思う瞬間を自分自身が味わいたいのかも。その時の人間ってダサいねんけど、やっぱあると思うんですよね。心斎橋PARCOに出店する瞬間も、自分の中ですごいやん!って思ったし(笑)。偏ったことしてんのに、認められたぞって。そんな連鎖が欲しいんかなぁ。それがなかったら、気持ちとか貪欲さも薄れる気がする。

自己陶酔しちゃう瞬間、大事やと思います。人に褒められるのもいいけど、自分で自分を褒めるというか。それが自信にも繋がることですし、次のハードルを上げることもできるだろうし。

ホンマはめちゃくちゃ楽したい人間やったのに、おかしい状態になってるんですけどね。どっかで満足したら、猫撫でながらゆっくりしよかなって思いつつも、なかなかそういう環境には身を置けそうにもない(笑)。気持ちよくなりたいから、死ぬまで駆け抜けなあかんのですわ。

SとMが完全に共存してる状態すね。ちなみに、ロビンさんが何も考えずに無になる時ってあるんですか?例えば何かでリフレッシュする時とか。

それがヘタクソでね。家で音楽聴いたりとかベタなんはあるけど、無になるのはあんまりないかな。あるとすれば、興味のないアプリゲームをずっとやったりとか。明日に繋がらんことをするのも気持ちよかったりするし。まぁ、それも無駄なことにこだわってるってことかな(笑)。頑張らなあかんと思ってたら、人間って摩耗してまうでしょ。後は、無になるというか、毎日お酒を飲んでるから記憶が無くなるのもざらにありますよ。

“無”のジャンルがちょっと違うかもですね(笑)

昨日もうっすらした記憶で生きてましたし。多分、生きてきた歳と記憶の量がマッチしてない人生を送ってますわ(笑)

仕事柄もありますけど、毎日楽しくお酒が飲めるのもおもろいことしてるからじゃないですかね。25歳で『FARPLANE』という場所を作り、これからも自分たちのカルチャーを発信していくわけですが、最後に一つ聞かせてください!このお店をやっててよかったなって、ロビンさんが感じる瞬間は?

そりゃ多々ありますよ。こんな人も来てくれるんや!とか、こんなことが起きるんや!とか、奇跡みたいな瞬間はいっぱいある。自分らの意味の分からん価値観を共有して、お酒があるから楽しいのかはよく分からんけど、そうやって実感できることが大事やなって。建設的なことが全ての世の中やったら、脳みそボカさずに明日のために頑張れよってなるかもしれんけど、人間それだけでは無理でしょ?まぁ、できる人はしたらいいだけの話で、俺はできへんから(笑)。『FARPLANE』という空間から生まれる世界観を大切にして、これからもおもろいことしていきたいと思ってます。


<ロビンさんのお気に入りのお店>

LOCK STOCK(大阪市中央区西心斎橋)
三ツ寺会館にあるバーで、飲み屋の先輩でもあるヤスさんがオーナーのお店。いつもいろんな話をさせてもらってます。

BAR-K(大阪市中央区西心斎橋)
こちらも三ツ寺会館にあるバー。アメ村のハードコアシーンの中心にいた清美君のお店で、ヒップホップやレゲエなどいろんなアーティストが夜な夜な集まって飲んでます。

Neighborhood Social Club(大阪市中央区西心斎橋)
バーバーショップとタトゥースタジオ、カフェ&バーが融合したお店。『FARPLANE』のすぐ近所にあるので、フラッと飲みに行ってます。


FARPLANE

住所:大阪府大阪市中央区西心斎橋2-8-19 イーストビレッジビル4F
営業:20:00〜翌3:00
休み:無休
Instagram:@barfarplane
Twitter:@barfarplane

FARPLANE 心斎橋PARCO

住所:大阪府大阪市中央区心斎橋筋1-8-3 心斎橋PARCO B2F
営業:17:00〜23:00
休み:無休(施設に準ずる)
TEL:06-7711-7400
Instagram:@farplane.parco
Twitter:@farplaneparco

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Profile

ロビン

株式会社FARPLANE代表。2005年にアメリカ村に『FARPLANE』をオープンさせ、独自のカルチャーを発信しながら街のナイトシーンを牽引。多様な在り方と、人の強いこだわりと、相反するような心の在り方に働きかけ、「人に迷惑を掛けないならば好きに生きるべきだ!」の想いをコンセプトに、新機軸の世界観を表現する。2021年3月には心斎橋PARCOにも2号店を出店。今年11月25日(土)には、17回目を迎える「FARPLANE NIGHT」が味園ユニバースで開催されることが決定している。

https://farplane.jp/

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