いま会いに行ける「推し」を作るなら、噺家さんがいいんじゃない!?と思った「上方落語若手噺家グランプリ」予選会の夜。
正統派と個性派が、しのぎを削る後半戦。
後半トップの六人目は、桂ぽんぽ娘さん。下ネタ満載のピンク落語でおなじみの方です。今回の演目「シングル・デブ」は、クリスマスイブに不倫相手にふられて街をさまよう女性の話。めちゃくちゃ面白かったです。途中で予想外にしんみりしたりして。こんなに上手な人やったんや!と驚きました。
そして七人目は、昨年準優勝の桂二葉さん。演目の「がまの油」は、縁日で口上を述べ立てて、がまの油を売る男が主人公。前半の立て板に水のようになめらかな口上もお見事ながら、後半の酔っぱらいパートがすごくて、酔いっぷりがリアルなうえに愛嬌もあって、めっちゃくちゃ笑いました。余計なことを考える暇もなく、隅から隅まで面白かった。
八人目は、桂九ノ一さんの「正月丁稚」。商家の正月を舞台に、丁稚がいろいろやらかす話です。古典を丁寧に演じる正統派な印象。ベテランさんかと思いきや、2006年入門の26歳と後で知ってびっくりしました。
九人目は、林家染吉さん。演目の「借家怪談」は、長屋の住人たちが空き部屋を借りに来た人を幽霊話でビビらせて、借り手がつかないようにする話。語り口がこなれていて粋さもあって、古典でも現代的なノリがあって好きでした。
そしてトリを飾るのは、桂治門さん。ふだんは前のほうに出るので、最後は緊張しますとのこと。演目は「ん廻し」。“ん”がつく言葉をひとつ言うごとに田楽が1本食べられるという話です。素人目にも、上手な人なんやな、というのがわかります。聴いてるうちに、田楽が食べたくなりました。
2022.07.08
Writing
金輪際セメ子
Photo
依藤 寛人