場所が「媒体」。元『カジカジ』メンバーを中心にした中崎町STAND MAGが仕掛ける、新しい編集スタイル。


この場所自体が「媒体」。立体的な場を持つことで得た、紙の編集では実感できなかったもの。

1階のギャラリー。取材時はフリーブック『NAKAZAKI ACT』の配布スペースとして活用。

ここは1階がギャラリー、2階がコワーキング、3階がオフィスという構造になっているんですね。

名越:STAND MAGは「伝える事は全てメディア。発信方法を常に探求する次世代メディアの創設を目指す場所」がテーマなんです。この場所自体が媒体みたいになったらいいなって思いがあって。

場所自体が媒体というのは?

名越:3階のオフィスで僕らが編集をして、2階のコワーキングに来る若手のフリーランスの子たちと協力して、1階のギャラリーで発表・発信するっていうイメージですね。マグはマガジンが由来で、スタンドは立ち飲み屋みたいな。

和島:2階のスペースが、もとからなんですけど、真ん中に大きいテーブルがあって飲み屋のカウンターみたいなんですよ。

名越:だから、立ち飲み屋みたいやなって。飲んでるときって、企画とかアイデアって出やすいじゃないですか。そんなふうに、いいアイデアを出しやすい環境を作りたいっていう想いを名前に込めました。

3階オフィススペースの外には、息抜きにぴったりないい感じのベランダも。

雑誌の編集をされてきた皆さんにとって、誌面で企画するのと、リアルに発表できる場があるのとで、違うことや気付くことはありますか?

高松:去年の10月に1階で「ぬいぐるみドリーム」ってイベントをしたんですけど、誌面の企画とは違って、ダイレクトに反応がわかるのは場所がある特権だなと思います。「え、この人もぬいぐるみ好きなんや!」みたいな驚きもあって。

和島:ほんとに、お客さんの愛と熱量がすごかったんですよ。ぬいぐるみは想像以上に奥深いというのがわかったのは、こういう立体的な場所でやったからこそ。今まで紙の編集では感じられなかった部分ですね。生身の人間の熱量が。

左が高松さん、右が村上さんのデスクのぬいぐるみ。今回の撮影を担当したカメラマン・中島真美さんも「ぬいぐるみドリーム」のメンバー。

なんとなく、ぬいぐるみ愛のすごさが伝わります(笑)。1階は基本的に、メンバーさんの企画を発表する場所なんですか?

名越:僕らの企画だけじゃなくて貸出もしていて、特に学生の場合3日間無料なんですよ。学生が自分でイベントをオーガナイズしてお客さんを呼んでってなかなかできないと思うんですけど、それを経験できる場になったらいいなと思って。場所を貸すだけじゃなくて、企画をブラッシュアップしたり、成功するようにちょっとサポートしたり。

3日間無料でサポートもって、至れり尽くせりですね。

名越:僕らも、教えてもらってきたから。だから、おせっかいおじさんになって、僕らがしてもらったことを返していきたいなと。アートとかやってる学生の子たちに、中崎に行ったらなんかできる、あそこに行ったらやりたいことができると思ってもらえる場所にしていきたいんですよね。そしたら、編集とかそういう業界に興味をもってくれる子が増えるかもしれないし。

人を育てる拠点にもなっていく。すごく有機的な場所ですね。

名越:そうですね、この建物がメディアとして動いてるっていうのは特徴かなと思います。アートもあればアパレルのポップアップもやったり、フリーブックの配布場所にもなるし。いろんなことができる場所。これもすべて「編集」って言ってます。
ここの延長線上で、1月にはNu茶屋町に『STAND PARK』というスペースもオープンしました。

『STAND PARK』は、どんな場所なんですか?

名越:SDGsというのがテーマになっていて、リサイクルやゼロ・ウェイストを絡めたイベントを展開します。最初は古着のイベントをやったんですが、古着って昔からあるエコなシステムですよね。おしゃれやから、ブランド好きやからって古着を買ってる子たちにも、古着を通じてSDGsを知ってもらえたらっていうので企画しました。ゼロ世代の子たちってすごく意識が高くて、エコバッグ持ってきてね!って発信すると、ちゃんと持ってきてくれるんですよ。

「今は昔みたいな師弟関係とかはないけど、若い子に僕らがしてもらったことを返していきたい」と名越さん。

みんな素直なんですね。

名越:いっぱい買う気でめっちゃ大きいバッグ持って来てる子とか、部活引退したばっかりで髪伸びかけの子とか、おしゃれ始めたばっかりの子とか、みんな可愛いですね。今後はファッションに絡めたものだけじゃなくて、八百屋さん(代官山青果店)呼んだり、ワークショップやったり、いろいろやっていこうと思ってます。

もはやスタイリストさんの範疇の仕事ではないですね(笑)

名越:そうですね。自分でも何屋なんだろうって思います。STAND MAGを始めてから、スタイリストとかディレクターとかの依頼じゃなくて、あの場所でなにかできないかっていうご相談だったりとか、圧倒的に問い合わせの種類が変わりましたね。

まずは、ぬいぐるみドリーム第2弾、そして納豆!?これからやりたいことは、まだまだたくさん。

新しい拠点ができて、発信の場もあって、これから皆さんがやっていきたいこととか、この先例えば10年後こんなふうになっていたいとか、ありますか?

村上:今はこれまで培ってきた編集を軸に動いてはいるんですけど、そこに別にとらわれなくてもいいのかなと思ってて。その時々で興味のあることは変わっていくから、10年20年先にどうなってるかはわからない。楽しいこと興味のあることを形にしていって、楽しんでやっていけたらいいのかなって。

いま的には、やっぱり納豆ですか?

村上:可能性を感じるのは納豆ですかね。納豆マガジンの次も出したいし、納豆メーカーとコラボしてイベントもやりたいし。神戸で古着屋もやってるんですけど、関西以外のところにも行きたいし、いろんなこと、やりたいこと全部やりたいですね。

村上さんのデスクの前に貼ってあるのは、現在企画中と言う納豆柄の壁紙のサンプル。

栗山さんはいかがですか?

栗山:いくつかあるんですけど……。いろいろありすぎるので、ゆっくり考えていきます。

『カジカジ』編集歴19年の栗山さん。「青春を全部ささげたような感じです」

高松さんはどうですか?

高松:10年後とか考えたことないなあ…。ごはんが食べれてたらいいかな。もし『カジカジ』が続いてたとしても、「50歳になって『カジカジ』やってんのかな?」って思ったこともあったんですよ。それはないやろうって、いつかは『カジカジ』やめるんやろなって気持ちがありました。でもだからと言って、何がやりたいわけでもなかったけど。村上とかぶるけど、何かに常に夢中になってたいっていう希望ですかね。

今夢中になってるものってあります?

高松:麻婆豆腐がちょっと落ち着いて、今はぬいぐるみですかね。42歳になりますけど、ぬいぐるみ。

好奇心を失わずにいたいという高松さん。今年の書き初めは「ぬ活」としたためたそう。

「ぬいぐるみドリーム」は、高松さんの企画だったんですね。

高松:いや、和島さんとカメラマンの中島さんとの企画で。

和島:「ぬいぐるみドリーム」は、ほんとにもう1回やりたいですね。終わったあとに、ロスになるぐらい楽しかったから。みんなぬいぐるみに、すごく愛情を注いでるんですよ。

高松:なくても生きていけるからね。むしろ愛しかない。

和島:それってすごい、大事なことじゃないかなって。人生で大事なことをぬいぐるみが教えてくれました。

ぬいぐるみドリームは、「最初は冗談みたいなノリだったんですけど、やってみたら結構奥深くて」

ぬいぐるみ、深いですね(笑)。第2弾を楽しみにしておきます!

名越:そうですね、ぬいぐるみドリームとか村竜の納豆とか、1階のギャラリーではまたいろんな企画を動かしていきたいし、『STAND PARK』でも新しいことにチャレンジしていきたいので、楽しみにしてもらえたら。

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Profile

STAND MAG

中崎町を拠点に編集活動を行う、元『カジカジ』編集部を中心としたクリエイタークルー。フリーディレクター・エディター・ライターとして活躍しながら、ヘア、納豆、古着、麻婆豆腐など各々の「好き」をさまざまなカタチで発信中。2022年1月には、中崎町を1冊まるごと特集した『NAKAZAKI ACT』を3000部限定で発行。拠点とするアパートメントに併設するはギャラリースペースでは、多様なイベントも展開。

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