「夢も希望もないスノードーム」を作るAto1snowさんが小さなドームに閉じ込めるのは、見てはいけない裏側の世界。

ウエディングドレスを血に染めた花嫁、今まさに首をくくらんとする男、赤い縄で縛り上げられた裸婦……そんな不穏な情景を小さなガラスの中に描き出すのが、スノードーム作家・Ato1snow(アトワンスノウ)さん。自ら「夢も希望もないスノードーム」と称する作品は、ファンシーなスノードームのイメージを粉々に壊します。禍々しくも美しく、そして人間の愚かさをどこかユーモラスに表現する世界観は唯一無二。『祝祭の呪物展』をはじめ、全国各地のギャラリーやショップに出展し、注目を集めている作家さんです。今回は、心斎橋PARCOで開催されていた『モののケ ART CIRCUS』にお邪魔して、作品に込めた想いや背景を伺いました。思わず覗き込まずにはいられない、その抗いがたい魅力の秘密とは。作品の写真とともに、たっぷりご堪能ください。
可愛いものは手に入るし、キラキラしたものを作れる人はたくさんいるので。

まず、Ato1snowさんがスノードームを作るようになったきっかけからお伺いしてもいいですか?
もともとスノードームのコレクターだったんです。いろいろ集めるうちに、自分でも作れるのかな?と思って。小さい頃から、水とかオイルの入ったものが好きで。実家がおもちゃ屋だったのもあって、ウォーターゲームってわかります?あれでずっと遊んでました。
ウォーターゲーム、懐かしい!ボタンを押して、水の力で輪っかを棒に入れるんですよね。
そうそう。あれが好きで。近所にあった水族館もよく行きました。水に関するものというか、ゆらゆらゆっくり動くものが好きで。
スノードームそのものと出会ったのはどんなきっかけが?
ひとつは、東京ディズニーランドに行ったときに、スノードームがついたペンライトを買ってもらったんです。小学生ぐらいの時ですね。もうひとつは雑誌で見た、パトリック・コックスのサンダル。ヒールの部分がスノードームになっていて、中にエッフェル塔とか自由の女神とかが入ってるんです。それがもう欲しくて欲しくて…でも学生だったから買えなくて。実物はまだ見たことないんですけど、カナダの博物館みたいなところにあるらしいです。

ペンライトとサンダルがきっかけだったんですね。
そこから、旅行先で買って帰ったりとか、ちょっとずつ集めるようになりました。
集めるだけでなく、作ってみようと思ったのは?
作れるのかなと思って調べてみたら、作れるやん!ってなって。一応スクールも受講したんですけど、結局自分でいろいろ調べながら作るようになりました。ほぼ独学ですね。
独学でできるものなんですか?
私が師匠と呼んで尊敬しているコレクターの方がいるんです。たまたま本で見かけて、連絡をとって友達になってもらいました。キットの監修もしている方なので、困ったときには相談したりしてます。たぶん今、日本でいちばん多く集めているコレクターさんで、「マツコの知らない世界」にも出演してました。

すごい師匠がいらっしゃるんですね。スノードームを作り始めたのはいつぐらいから?
2013年頃ですね。それまでは普通に集めるだけだったんですけど、自分でも作れるってわかって、じゃあ普通に買えないものを作りたいなと思ったんです。自分の趣味の世界をカタチにした感じですね。最初は、こんな悪いもの作っていいのかな?と思ったんですけど、やってみたら意外と血と雪って相性がよくて。
たしかに!赤と白のコントラストが効いて、すごく映えますね。ということは、最初からダークな作風だったんですか?
そうですね、ほとんど。可愛いものは手に入るし、キラキラしたものを作れる人はたくさんいるので。手に入らないものを作ろうと思ったらそうなりました。

ちなみに、いちばん最初の作品はどんな?
連作で、ひとつ目はひざまずいて命乞いをしてる人で、ふたつ目は切り落とされている人なんですけど。
命違いしたのに、むなしく切られてしまった…!すごい、最初の作品から面白いですね。
そこからテンションが上がってしまって。これはいける、気持ちいいと思って(笑)。まわりの評価も悪くなかったので、じゃあ遠慮なくやっていこうと。
でも不思議と、怖いけど可愛いですよね。幻想的な美しいホラー映画のような。
そう言ってもらえることもけっこう多くて。あんなものを世に出したらもっと怒られたりするのかなと思ってたんですけど、意外と誰にも叩かれたことがない(笑)。狙ってるわけではないんですけど、ホラー映画を見たあとのスッキリ感みたいなのがあるのかもしれないです。

Ato1snow(アトワンスノウ)
大分県別府市出身、堺市在住。実家は戦後から約70年続いた玩具店。大学進学を機に大阪へ移り、2013年からスノードーム制作を開始。クリスマスや観光地のモチーフにとどまらず、ある情景を切り取り、前後のストーリーを想像させる作品を手がける。従来のスノードームとは一線を画す作風で、コレクターからアート愛好家まで幅広く支持されている。