3月4日(土)から心斎橋PARCOでGOMA EXHIBITION『ひかりの地図』が開催!grafの服部さん、写真家のMAIさんとの鼎談から見えてきた、GOMAさんの描く“ひかり”とは。
僕の描いてる“ひかり”の世界は、いつか誰もが体験する世界。その時に『ひかりの地図』を覚えてたら、戻って来やすくなるんじゃないかなと。
“ひかり”の世界からUFO、宇宙、哲学…、すごく広がって深まってきましたが、今回のエキシビジョン『ひかりの地図』についても伺っていきたいと思います!
服部:この『ひかりの地図』というタイトルは、観る側に対してはどんな感覚で名付けたタイトル?
GOMA:いつ誰があっちの世界に行く過程を体験するかは分からないけど、この『ひかりの地図』を覚えてたら、こっちの世界に戻りやすくなるんじゃないかと思ったんです。
服部:それは、すごい。片道切符ではなく、『ひかりの地図』があることで往復切符になると。
MAI:みんな絶対に観ておいた方がいいですね。
GOMA:臨死体験を研究してるお医者さんとの会話で知ったんですが、あっちの世界に行った時に“ひかり”と人だかりが見えた場合、こっちの世界に戻って来た多くの人が“ひかり”の方に進んでたそうです。この『ひかりの地図』を一回でも観ておけば、あっちの世界に行っても道をちゃんと選べるし、「この“ひかり”は見たことある!」って思えるかなと。
アートではありますが、もうアートとは呼べないものになってます。
GOMA:昨年、渋谷PARCOで『ひかりの地図』を開催した時の話だけど、小さい子が作品を観て「僕、ここから来た!見たことあるよ、知ってる」と言い出して…。その作品は“ひかり”の発光体を描いてたんだけど、「僕もここにいたよ!」って。多分、2歳くらいの子だったと思う。
服部:マジで!?うちの息子にも絶対に観せたい。
GOMA:その言葉を聞いた時、やっぱりあるんだなと。だから、何かあった時のためにも、この『ひかりの地図』を観といてほしい。戻って来やすくなるかもしれないから。僕自身そう思うようになったのはここ何年かで、今はまだ戻って来れてるけど、何があるか分からないし、この先どれだけ描けるかも分からない。そういった状況で『ひかりの地図』をこれからも残していくことが使命のような気がしてる。いつか誰かの役に立つんじゃないかなって。
MAI:すごい意義があることですよね。
GOMA:今までたくさんの人に助けられて生かされてきたから、自分が社会に貢献できること、誰かの役に立つことって何があるかをずっと考えてた時があったんです。でも、点描と棒を吹くことしかやってきてない。その点と棒で何ができるのか…、考えても考えてもハードルが高いなと思って何年かを過ごしてて…。
その高いハードルを超えるきっかけがあったわけですね。
GOMA:ちょうど2018年くらいかな。NHKの番組でアメリカにある最先端の脳科学研究所に行って、僕の脳を診てもらった時に言われた言葉があってね。「この脳のパターンになると、元に戻るのは絶対に無理だ」と。日本の病院では薬で脳内のエネルギーを抑えるべきだと言われてたけど、アメリカは真逆で、抑えたらあかんって。抑えることでそのエネルギーに呑み込まれて精神が崩壊するから、逆に解放しろ。そして、そのエネルギーを伸ばす生き方を考えろって言われた。その時に『ひかりの地図』のイメージが一気に湧いてきたんですよ。僕の脳は世界でも100人くらいしかいないらしく、誰かに理解してもらいたいとか、そんなレベルで生きてたらあかんなと。僕からしか見えない景色は絶対にあるから、作品を通して社会に役立たせたくて、このタイトルになったんです。
服部:なるほど、GOMAちゃんの脳内にはすごい世界があるんや。これは絶対に観とかないと、戻って来られへんやん(笑)
GOMA:若い人はもちろんだけど、僕らの親世代にも観てもらいたい。
服部:そう考えると、例えばホスピスとか終末医療の病院とか、生死さまようような環境に飾られると、すごいことが起きそう。「あの人、戻って来た!」みたいなことになるかもしれない。
GOMA:マヤ文明とかピラミッドとかでも、ココロとカラダ、生と死を描いたものが残されてるし、意識はどこから来てカラダはどこに行くのかというテーマは、昔から追い求めてる人がいたんですよね。そんな人たちが祭壇や死者の書を作り、そこから派生して信仰が生まれてきた。僕が描いてるものも、実はすごく普遍的なテーマかもしれないし、遥か昔からの営みとしては同じような気もする。
服部:特に壁画は、こんな生活をしてました、こんなものを食べてこんなファミリーで生きていたという記録。僕らは記憶を記録しながら表現してる。記憶を定着させることができないから、何とか記録という形で残してきたわけ。でも、記録した途端に人が見ることで、人が伝えていくものに変わるから、その交換作業を何千年何万年も続けてきてるんじゃないかな。GOMAちゃんの作品は、記憶の中にある世界かもしれないし、これを記録という言葉にするとあまりにも簡単だけど、記憶と記録の間にあって、アートという領域以上のもの。『ひかりの地図』というタイトルを聞いて思うのは、“ひかり”が記憶で、地図が記録やなと。
GOMA:すごいなー、確かに!その言語力が欲しい。
服部:いやいや、何回言うんよ(笑)
GOMA:でも、本当にそう思う。記憶の記録。『ひかりの地図』は、まさにそう置き換えられる。
MAI:服部さんが話されてた、赤ちゃんの表現にも通じてきますよね。
服部:そうそう、表現力って身体記憶だと思う。カラダが記憶してるからイメージを形にできるわけだし、GOMAちゃんはカラダから出てくるものをそのまま表現できるようになってる。この短期間で赤ちゃんから成人になって、次は成人から利他的に人のために生きるようになり、このエキシビジョンに繋がってるんよ。
全てが繋がってる。今だからこそ言えることですが、あらゆることが必然だったと。
GOMA:僕自身、二回目の人生を生きてる感じはあるんです。前に戻りたいと思ってたけど、アメリカでもう戻れないことを確信して、二回目の人生にエネルギーをシフトしていかないともったいないと実感した。その時、自分の作品を見て思ったのは、これを社会に提示していくにはアートと呼べるものの力が必要だなと。そこからですね、僕がアートに興味を持ち、いわゆるマーケットを意識し始め、そこにどんな人たちが動いてるのか気にするようになったのは。正直、それまではアートを観に行ったこともなかったし、触れる機会も少なかった。音楽ばかりの毎日だったから、本当に見るものの意識が変わったかな。
服部:GOMAちゃんの見てる世界を覗いてみたいな。ゴーグル装着したら同じ世界が見える、そんな時代が来ないかなー。
GOMA:僕が見てる“ひかり”の世界にあるゲートは、いつか体験できるはずですよ。
MAI:確かに(笑)。GOMAさんが意識をなくして“ひかり”の世界にいる時間って、体感的な長さはどれくらいなんですか?
GOMA:長く感じる時もあるし、短い時もある。実際に意識が回復するまでの時間も毎回違うから、そこは読めないかな。
MAI:“ひかり”の世界にいる時間は、現実世界とも比例してます?
GOMA:全く比例してない。時間の長さというよりも、深さみたいな感じでね。こっちの世界に戻って来るまでの深さをすごく観察して、そこで見た世界を描いてる。意識して観察するようになってからは、物事の見え方も変わってきたと思う。例えばコップでも、ただ見てるのと、観察するのでは違うから。この曲線はなぜこうなってるのかとか、違う見え方が生まれて来るので、作品もより緻密になった。
GOMAさんの作品には、“ひかり”、“ひかり”の珊瑚、雪、水、闇という世界がありますが、今回のエキシビジョンの空間構成はどんな感じになってるんですか?
GOMA:意識をなくしてから、意識が脳の中で安定し、目が開いて喋って動き出す、その通り道に見て来た景色の順番で構成してます。
MAI:まさに戻って来るまでの道順ですね。
GOMA:その景色を一つずつ部屋にして、順番に体験してもらうようになってます。映像の部屋は東京よりも一つ増えて二つになり、作品の数も増えてる。最初の部屋は、意識をなくした世界だから闇を表現していて、「旅立ち」という名前をつけてます。
GOMAさんの体験を、僕らも作品を通じて追体験できるわけですね。服部さんは渋谷PARCOでのエキシビジョンも観られてますが、その時はどんなことを感じました?
服部:GOMAちゃんの作品をじっくり観るのも久しぶりだったけど、あんな時間軸の中で作品を観ていく展示は初めてやったかも。お世辞抜きで、本当に素晴らしいと思った。過去・現在・未来のような構成にも感じるし、暗い闇の世界の中に一つずつ点のディテールが見えて、現在・未来になると点の集合体がいろんなものを表現するようになっていく。僕が行った時は欲しい作品が売れまくってたから、悔しかったなぁ(笑)。“ひかり”の世界の中には、温かくて手を伸ばしたくなるような桃源郷のような世界もあるし、水のような表現も素敵。どっちが未来なのか、現在なのか、そんな考察もできるからおもしろかった。どう、いい感じ?
GOMA:やっぱり、その言語力が欲しい(笑)
MAIさんから見た、GOMAさんの作品の印象はどうでしょう?
MAI:すごく宇宙っぽさを感じましたし、エネルギーや生命力にあふれてるなと。一つ一つは点ですが、そこから生まれる曲線も美しくて、強さと柔らかさも共存してる。作品を間近で見ると、本当に揺れ動いてるみたいですよね。この点が記憶の証だと思うと、改めてすごく引き込まれます。
GOMA:うれしいなぁ。最初に描いてた頃は、まさに消えていく記憶の代わりで、消える記憶の記録。そのためだけに描いてた。朝起きて、絵を描いた痕跡がテーブルにあることで、昨日もちゃんと生きてたんだと安心できたしね。作品は、僕の生きてる証でもあるから。
では最後に、今回のエキシビジョン『ひかりの地図』は、GOMAさんの地元である大阪で行われるわけですが、来場者の皆さんへのメッセージをお願いします!
GOMA:僕が唯一、みんなのために貢献できるのがこの作品たちです。事故前の人生と今の人生が合体して、映像の部屋では新録で音も入れてるので、音楽好きの人も楽しめるし、アート好きの人も満足できる展示になってます。難しいことは考えず、「こんな世界があるんだ」と、楽しんでもらえたらうれしいです。
GOMAさんの人生そのものである音楽とアートが合体し、誰でもいつか体験する世界が垣間見える。すごく大切な機会になると思います。
GOMA:僕みたいな体験はしてほしくないから、すぐに“ひかり”を追いかけられたら戻って来れるはず。あっちの世界の滞在時間が長ければ長いほど戻りにくいだろうし、後遺症もデカくなる。分かりやすく言えば、記憶がブッ飛んだりするので、戻って来た時にそこを埋める作業が必要になるしね。いつ何が起きるか分からないけど、前と同じじゃなくても新しい形で生きていける、そんな人生の楽しみ方もあるということを提示していきたい。世界にこれだけの人間がいるんだから、人の数だけ人生があるし、いろんな人生があって当たり前。生きてると、必ず壁にブチ当たる時だってあるんです。でも僕は、アートに出会って人生が救われた。芸術には、人の人生を変える力があると思ってます。それこそが、芸術だなと。
服部:いい!今のでキレイに締まった!!
MAI:言語力ですね!
GOMA:(笑)。会期中は基本的には在廊予定なので、ぜひ会場でお会いしましょう!
いろんな話が交錯しながら、鼎談を通じて見えてきたGOMAさんの描く“ひかり”の世界。アート表現としても凄まじいエネルギーと美しさがありますが、その本質の部分は人間という生命体に通じ合い、一人、一人の人生にも密接に関わっていくもの。GOMA EXHIBITION『ひかりの地図』は、今この目で見て感じて、脳に焼き付けておいてもらいたいと思います!
実は、鼎談終了後にMAIさんにタロット占いもしていただきました。ここでは内容については一応伏せておきますが(笑)、GOMAさん、服部さんともに、これからの未来や社会に何かを残すために挑み続けるパイセンたちの姿、やっぱりシブいです。そして、そんなパイセンたちへ鋭くアドバイスしていくMAIさんのタロット、すごかったです!それでは改めて、3月4日(土)から始まるGOMA EXHIBITION『ひかりの地図』、ぜひぜひ会場に足を運んでください。作品はもちろん、限定グッズなどもたくさんあるので、要CHECKです!
<INFORMATION>
GOMA EXHIBITION『ひかりの地図』
日程: 2023年3月4日(土)~3月21日(火・祝)
場所: PARCO GALLERY(大阪市中央区心斎橋筋1-8-3 心斎橋PARCO 14F)
時間: 10:00~20:00(最終日は18:00閉場 ※入場は閉場の30分前まで)
入場料: 一般500円(税込) ※小学生以下無料
主催: PARCO
協力: Jungle Music
展覧会公式サイト
Instagram:@parco_shinsaibashi_official
心斎橋ネオン食堂街2周年記念 & GOMA EXHIBITION『ひかりの地図』SPECIAL EVENT
日時: ①2023年3月3日(金)19:00~ ②2023年3月10日(金)18:00~
場所: TANK酒場(大阪市中央区心斎橋筋1-8-3 心斎橋PARCO B2F)
DJ: ①Guest DJ:DJ DYE(THA BLUE HERB) / DJ:Jun Takayama(speedometer. / ASANOYA BOOKS) / Kunio Asai ②DJ:GOMA & THE MAD RAVERS PARADISE
FOOD: tamutamucafe
Instagram:@shinsaibashi_neon_shokudougai
Instagram:@tanksakaba
GOMA
オーストラリア先住民アボリジナルの伝統楽器「ディジュリドゥ」の奏者、画家。1998年にオーストラリアで開催されたバルンガディジュリドゥ・コンペティションにて準優勝を果たし国内外で広く活動。2009年交通事故に遭い高次脳機能障害の症状により活動を休止。一方事故の2日後から緻密な点描画を描きはじめるようになり、現在ではオーストラリアBACKWOODS GALLERY(2016)、新宿髙島屋美術画廊(2018・2019)など多数の個展を開催。2012年本人を主人公とする映画『フラッシュバックメモリーズ3D』に出演し、東京国際映画祭にて観客賞を受賞。2021年TOKYOパラリンピック開会式にてひかるトラックの入場曲を担当。2022年舞台「粛々と運針」の音楽監督と劇中のアートを手掛ける。千年の歴史を持つ古社常陸国総社宮に青華曼荼羅が収蔵された。
服部 滋樹
1970年生まれ、大阪府出身。graf 代表、クリエイティブディレクター、デザイナー。暮らしにまつわるさまざまな要素をものづくりから考え実践するクリエイティブユニットgraf。1993年から活動を始め、異業種が集まる環境と特性を生かした新たな活動領域を開拓している。建築、インテリア、プロダクトに関わるデザインや、ブランディングなどを手掛け、リサーチからコンセプトワーク、デザイン、設計、プログラムへとソフトからハードまで持続可能な形態を生み出す。地域や社会基盤もその領域として捉え、仕組みの再構成と豊かな関係性を生み出すコミュニケーションをものづくりからデザインしている。コンセプターとしてデザインやディレクションを行い、あらゆる領域の視点から社会を翻訳するようなアウトプットを行う。京都芸術大学 情報デザイン学科 教授。
MAI MURAKAWA
ヨーロッパの紙ものなどを中心に扱うアンティークショップやお菓子屋さんを運営する会社のカメラマン、クリエイティブディレクター、キュレーターなどを経て2019年独立。また、13歳の頃から"はじめての感情を忘れたくない"と教科書の隅に詩を書きはじめ、詩人「月森文」としても活動中。2022年4月に京都・修学院に拠点を移し、写真・詩・タロット、古道具の販売ほか、祇園で月2回スナックマイのママも。