『JAPAN WALLS』が10月24日から白浜で開催!アーティストが自由に表現するミューラルで、今年も地域が一体となって盛り上がる。岡本さんと小畑さんが描く、その青写真とは。
何もない壁にゼロからアーティストさんが描き上げていく光景は、想像以上の迫力。日が経つにつれて絵の状況や街の景色も変わっていく流れを見れるのが、すごくおもしろい。
昨年までは『POW ! WOW ! JAPAN』でしたが、今年の開催から『JAPAN WALLS』に名称が変更されています。そこには何か理由があったんですか?
岡本:実は「POW WOW」という言葉は、アメリカの原住民であるインディアンがお祈りをする集会や祭りを意味する神聖な言葉でもあったんです。私自身も「POW」はアメコミなどで使われる効果音だったり、「WOW」は驚きを意味するものだと思ってたんですが、イベントが世界的に派生するにつれて弊害も生まれてきたみたいで…。
僕もてっきり岡本さんのおっしゃる意味だと思ってました。
岡本:アメリカは原住民族の地域がまだまだありますし、本土でも内陸に行くほどその言葉を守る気持ちが強いそうなんです。イベント名に『POW ! WOW !』という言葉を使っているから、原住民族を考慮してスポンサーになれないという話も出てきたので、本部の判断で全地域が名称を変更することになりました。ハワイが『WORLDWIDE WALLS』に変更したことで、それぞれの地域名の後ろに「WALLS」をつけることになり、私たちは『JAPAN WALLS』に。今年の頭くらいに、世界の全地域がその形で変更したんです。
なるほど。イベントの特性としても地域一体になって盛り上がるものだからこそ、そこは見過ごせなかったんですね。日本では今回が7度目の開催となり、「繋がる、広がる、舞い上がる」というテーマを掲げていますが、そこへの想いを聞かせてください!
岡本:昨年度もコロナ禍の中、ギリギリまで状況を見て開催を決意しました。アーティストたちもいろんなイベントが中止になっていたので、「なんとか開催してほしい!」という声がとても強かったんです。今年もコロナ禍であることは変わりませんが、負けることなく、自分の絵を自由に描ける時間を持ってもらいたい!そして、地域と一緒になって作り上げていきたい。地域の皆さん、アーティスト、サポートしてくれるスタッフ、スポンサーの皆さん、見に来てくれるファンみんなで、上へ上へと上がっていきたい。そんな想いを込めて、このテーマを掲げることにしました。
岡本さんがハワイで初めて見て衝撃を受けたあの雰囲気が、再び味わえそうですよね。アーティストが楽しんで描き、地域やスポンサー、ファンも一体となって盛り上がり、みんなでミューラルを共有していく。ほんと素敵です!小畑さんは昨年初めてサポートしたわけですが、現場を見てどんな感覚でしたか?
小畑:何もない壁にゼロからアーティストさんが描き上げていく光景は、想像以上の迫力でした。ほんの数時間後には「ここもできてる!」という驚きもありますし、日が経つにつれて絵の状況や街の景色も変わっていくんです。その流れを見れるのが、すごくおもしろいなと。
刻々と変化するその光景が見れるのは、このイベントの醍醐味ですよね。
小畑:和歌山県はワーケーションを推進してる地域でもあるので、この機会に白浜町に来てもらえるとさらに価値があると思いました。仕事の休憩に散歩しながら、ミューラルが完成していく過程を日毎に楽しむ。ロングスパンでの滞在を、ぜひおすすめしたいです。
それに、空も広くて海も近い!ロケーションも最高ですしね。こんな環境だからこそ、アーティストさんたちも気持ちいいだろうし、描くことをより楽しめそうだと思います。
岡本:事前にどんな絵を描くかはアーティストに提案してもらいますが、クライアントワークではないので、基本的には自由に描いてもらってます。普段は描いてないけど、今回はこんな絵にチャレンジしてみたいとか。私はサポートする立場なので、そのチャレンジをどんどんプッシュしてますね。だから、描き終えた時のみんなの充実感は、すごく伝わってくるんです。
アーティストさんのエネルギーが思いっきり放出されるのは、その自由さも要因の一つかもしれませんね。ちなみに地元の方々の反応はどうでしょう?
小畑:昨年度は白浜町で初開催でしたし、イベントとしても派手な印象でカルチャー感も強いため、地元にどうフィットさせるかが課題でした。海外やこれまでの事例を写真で見せても、自分たちの町がどう変わるのかをイメージしてもらうのが難しかったですが、ローカルコミュニティの方々とも打ち合わせを重ね、「まずはやってみよう!」という状態でスタートできたのが大きかったですね。
確かに、そこは一番のハードルになりますよね。
小畑:でも、実際開催してみると、生モノみたいに消えるものじゃなく、やったことがアートとして街に残っていく光景を見てもらえたので、今年は白浜町も後援についてもらえることになりました。地元の企業の方々もサポートしてくれることになり、昨年の開催をふまえてこのイベントの意義を感じてもらうことはできたかなと。だから、今年は確実にパワーアップしてます!
岡本:それに、今年は壁の提供もありました。私たちとしては、やはり壁がないとイベント自体が成立しませんからね。
描いてもOKな壁を探すのは決して簡単なことじゃないですもんね。
岡本:最初によく聞かれるのが、「そもそも、なぜ壁に描く必要があるの?」ってことなんです。その部分を丁寧に説明して納得してもらい、ようやくスタートラインに立てるんですが、「うちの壁を使っていいよ!」と言っていただけると、工程的にもすごく助かります。今年は4件ほど壁の提供を申し出ていただいたので、これも昨年の功績なのかなと。とてもありがたい話ですし、地元の皆さんのサポートがあるからこそ実現できるイベントだと改めて実感してます。
地元の皆さんもアーティストが描く姿を間近に見ていたからでしょうし、描かれた壁がずっと残ってるから、イベントへの想いが深まっているんじゃないでしょうか。今年は、どんなアーティストの方々が参加されるんですか?
岡本:ハワイからはKRIS GOTO、国内からはWHOLE9やCOOK、GRAVITYFREE、大阪芸術大学。さらに、ミューラル初挑戦のERI2WIN、和歌山ローカルのYOSSY、彫刻のインスターレーションを行うAIKO KIM。そして、昨年一番大きな作品を残したYOSHI47は、タイルのミューラルにチャレンジします。他にもギャラリースペースでは、100作品を展示します。
錚々たるメンツですし、チャレンジングな内容も相まって、まさに昨年以上の展開。これは、絶対に現地で見て体感するべきですね!!
岡本 絵美里
『JAPAN WALLS』のディレクターとして、2015年に同プロジェクト(旧POW ! WOW ! JAPAN)を立ち上げ、日本国内でのミューラルカルチャーの普及を目的に活動。ミューラルを軸に、多彩なアーティストとタッグを組んだプロジェクトも仕掛けている。また、神戸のインターナショナルスクールの教員も務めている。
小畑 菜月
マーケティングやプランニングを行う株式会社AIDAMAの代表。『JAPAN WALLS』には2021年からプロデュースサポートとして参加し、地域のコミュニティやスポンサー企業、自治体とのマネジメント業務などを行う。AIDAMAでは、ミレニアル世代に向けたオンラインのメンタルケアサービス『Being-Home』なども立ち上げている。