すごくポップ、なのにシニカル。国内外で活躍するアーティストbuggyさんが、セレブの鼻血にこめたもの。
今描いてみたいのは「北のあの人」。表現したいものが溜まってきたら、それを表に出す感じ。
最近の鼻血シリーズは顔が逆さまになったものもありますが、どんなきっかけがあって表現が変化していくんですか?
特に逆さまにすることに意味はないんですけど、もうちょっと、ただ顔を描くより、違和感のあるものにしたいなと思って、いろいろスケッチしてたんです。それで、思い切って逆さまにしてみたら、意外と逆さまっぽくなくて。なんかパッと見、ちょっと変……ぐらいの違和感だったんです。
言われて見れば、逆さまでもちゃんと顔として成立してますね。こういう表現をしてみたい、これを描いてみたいっていうのは、常にあるものですか?
そうですね、溜まっていく感じですね。溜まっていくものから、次はこれを形にしていこう、表に出して行こうみたいな。
描きたいものがなくなったり……ってことはないんですか?
今のところはないですね。
今buggyさんが気になってる人はいますか?
誰かな……。描こうと思ってるのは、北朝鮮のあの人。もういくつか描いてるんですけど。NORTH FACEのステンシルを組み合わせた作品とか。そんな感じのシリーズをいくつか描いてみようかなと。怒られるかもしれないけど。
鼻血、似合いそうですね。でもセレブや政治家に鼻血を出させるのって、ドキドキしませんか?
SNS的なやつでわーっと言われたりはありますけど、面と向かってはないですね。意外と直接は言われないです。
みんなが知ってる有名なあの人の違う面を見せるというスタイルは、ご自身がそういう面を見たいと思っておられるから、ですか?
それもあるし、そういう面もあるんちゃうかな、こんなふうに思ってそうやなっていうのもありますね。それを絵にしたら面白いなっていう。違う一面に光を当てるというか、知らない表情を引き出すみたいなのは、昔からずっと。
これから挑戦してみたい作品ってありますか?
立体造形物はやってみたいなと思ってます。ポートレートを描いてる延長で、人の顔を立体化してみたいなって。
作品を発表する場が圧倒的に少ない大阪は、「活動の拠点というより、過ごしやすくて好きな街」。
buggyさんは過去にFM802のオーディションに参加されたり、南堀江のdigmeout で展示されたりしてますが、その頃(2002年)は大阪のアートシーンは元気があった頃かなと思うんです。ずっと大阪を拠点にされているbuggyさんから見て、いま大阪のアートシーンはどんな感じでしょうか?
とにかく、発表する場が少なすぎるんですよね。ギャラリーとかないでしょう。大阪に遊びに来た人に、今日一日ギャラリー回りたいからいいとこ教えてって言われても、難しいんですよ。こことあそこやったらいつ行っても面白い展示やってるでって言えない。東京だと、原宿だけで一日中で回りきれないぐらい、小さくていいギャラリーがあるんですけど。
そういえば、どこって言われても思いつかないですね。
発表する場所もないし、発表してる人もないから、アートシーンが盛り上がってるかどうかもわからない。カフェの壁面を使ったカフェギャラリーとかはありますけど、そういうところは結局友達が来て終わり、みたいなことになりかねない。ギャラリーにお客さんがついてないと絵も売れないし、自分でプロモーションして自分でお客さんを呼ばないといけない。そりゃみんな、東京でやるよなって。
大阪と東京で、そんなに違うんですね……。
僕も大阪でちゃんとした個展って、もう5年ぐらいやってないですね。最後は、堀江のたちばな通りにある友達の服屋の2階。
この状況は、ここ20年で元気がなくなってきたんでしょうか?
いや、昔からあんまり変わってないと思います。
でもその中で、buggyさんが大阪を拠点に活動を続けてこられたのはどんな理由があってですか?
制作の拠点は大阪ですけど、活動の拠点が大阪とはあんまり思ってないですね。ちゃんとした展示をやろうと思うと、どうしても東京ってなってしまう。大阪にもそういう場所があればやるんですけどね。東京から大阪に巡回展しようと思っても、同じ感じのところがないんです。
大阪のアートシーンはだいぶ弱ってる感じですか?
いい作家はいっぱいいるんですけどね。ちょっと名のある人が展示したら、大阪のギャラリーもハクがつくんでしょうけど。
ちなみに、東京に行こうと思ったことはなかったですか?
若い時は一瞬迷いましたけど、でも大阪が好きなんで。アートシーンとかそういうのは置いといて、過ごしやすい。東京で一位を目指すより、大阪で一位を目指したほうが早そうやなって思って。
大阪で好きな場所とか、よく行く場所ってありますか?
もう今はどこも行かないですね。コロナもあるし、子供もいるし。家とスタジオ、南堀江と北堀江の往復だけ。昔は味園とかよく飲みに行きましたけど、もう行きつけにしてたところもみんな変わってしまって。今は自転車で、なにわ筋を行ったり来たりする毎日ですね。
buggy
大阪府出身。2002年より活動を開始。『VOGUE JAPAN』『Numero TOKYO』など女性ファッション誌のアートワーク、CDジャケットやTシャツのデザイン、グローバルブランドとのコラボレーション、ライブペインティングなど幅広いシーンで活躍している。誰もが知っているセレブリティや政治家、キャラクター、企業の「違う一面」を描き出す、ポップでありながら批評性のある作品を発表。その独特な表現は国内外で高い人気と注目を集めている。作品はbuggy lab project Official shopにて購入可能。