すごくポップ、なのにシニカル。国内外で活躍するアーティストbuggyさんが、セレブの鼻血にこめたもの。


アラレちゃん、キャプテン翼が好きだった子供時代。描きたくなるのは「なんか変だな、面白いな」と感じる人。

buggyさんの作品はすごくポップな印象があるんですが、何か影響を受けたものはありますか?

いちばん古くで言えば、アニメとか漫画ですね。明確に覚えてるのはアラレちゃん。鳥山明の。小3のときにドラゴンボールが始まったから、アラレちゃんはたぶん、幼稚園ぐらいの時から見てました。 

たしかに、鳥山明の絵柄はめっちゃポップですね。真似して描いたりとかされてました?

描いてましたね。でも子供の頃は漫画家になりたかったんですよ。小学生の時は、キャプテン翼の丸パクリの漫画を描いてました。キャラクターをクラスメイトの名前に変えて、ストーリーは、ただサッカーして勝つだけっていう。

友達には喜ばれそうですね(笑)。コラージュやドローイングの作風は、昔からずっとですか?

そうですね、コラージュは雑誌のかっこいい写真とか集めてて、それをスクラップブック的に作ってた延長ですね。写真とドローイングを混ぜる作品も昔から。でも別にこれでやっていこう!って思ってたというより、好きでやってたことがそのまま今のスタイルになってる感じです。

「載ってる人がみんなふくよか」な昭和のエロ本は、コラージュ用に四天王寺の骨董市で購入。

現在発表されている作品の多くは、セレブのポートレートを題材にされていますが、モチーフはどうやって見つけるんですか?

自分の中では、現代を切り取るって気持ちなので、時代性のある人で、なるべくみんながわかる人。パロディにしたときに、元ネタがわからないと伝わらないじゃないですか。その点でトランプさんとかは、知らない人があんまりいないから。 

描きたいなと思うのは、どんな人ですか?

ニュース見てたり、ネット見てたりして、なんか面白いな、変だな……って思った人とか。基本は顔かな。元首相の安倍さんはすごく描きたくなる顔でした。でも菅さんはそうでもなかったんですよ。なにか地味というか、キャッチーさが足りなくて。

わかる気がします(笑)。岸田さんはどうですか?

これから次第かな。でも、描くのは描けそうな感じがします。 

顔と、本人のキャラクター性も大事なんですね。

そうですね。菅さんは顔もそうやし、キャラもちょっと薄かった。菅さんから鼻血を出させたりすると、なんか見てられない感じになりそうで。その点やっぱり安倍さんは触りやすいというか、いろいろあったので、絵の題材にできることが多かったですね。

作品に込めた意図の伝わり方と、「静かに観て後でインスタに上げる」日本、「買う金ないからキャップあげる!」海外の反応の違い。

いま鼻血のお話が出ましたが、鼻血シリーズはどうやって誕生したんですか?

最初は超有名セレブのみんなが知ってる有名な写真を描いて、それを鼻血だけじゃなく、腫れさせたり青タンを作ったりして、汚してたんですね。そうすることで、みんなが大好きなあの人の見え方を変えるってことをしてたんです。そこからだんだん要素をそぎ落としていって、最終鼻血だけになりました。コンセプトは変わらないんですけど、汚す量を減らして、もうちょっとブラッシュアップしていった感じです。

表現が洗練されて、鼻血だけでも伝わるようになった?

でも途中から僕の意図とは違って「鼻血かわいい!!」みたいな受け取り方をされ始めたんですよ。

もともとは人の見えない部分、淀んだ部分みたいなのを見せるという意図だったのに。

そう、だからこそ、みんなが知ってるポートレートを汚すことに意味があったんですけど。反ミーハーというか。でも結果鼻血だけにしたら、ミーハーな人からかわいい!って反応がきてしまって、なんか変な皮肉になったみたいな。

ほんとですね、事象自体が皮肉になってる。ご自身が意図しない解釈をされることもあるんですね。

それは結構あると思いますね。そうとるか!って。でも日本で展覧会しても、作品の意図とか聞かれることってあんまりないんですよ。アメリカとかでやると、めちゃめちゃ聞かれるんですけど。なぜこの作品を作ったんだ?みたいな。

日本は直接意図を聞かずに、作品を見て感じるとる、理解するみたいな感じですか?

理解……してもらえてるのかはわからないけど、静かに観て、写真を撮ってスーッと帰っていくっていう。で、あとでインスタに上げるみたいな。

自身の作品について「いろいろ考えてやってるけど、伝わってるのかな?って思うこともあります」

インスタに(笑)。海外と日本では全然違うんですね。

もう全然違いますね。一回LAでやった時に、若い20歳ぐらいのスケーターみたいな男の子が来てくれたんですよ。僕の絵ちょっと高いんですけど、その子が、すっげーかっこいい!けど買うお金はないからって、キャップくれました。かぶってた汚いキャップ、これあげるって(笑)

買えないけど、気持ちは伝えたい!っていう思いがキャップに(笑)

なんかすごい、いいなと思って。対等というか。

反応が素直ですね。いい!好き!キャップあげる!みたいな。日本ではないですか?

ないですね。しませんよね(笑)。日本は話しかけられることもあんまりないし。こっちから話しかけるとわりとしゃべってくれるんですけど。

そう言えば私も話しかけずに、そっと見てすっと帰りますね……。

日本で話しかけるてくる人は、自分でも作品を描いてる人が多いかな。アメリカで一度、すごい話しかけてくる人がいて、一生懸命答えてたんですよ。いっぱい喋って、美術関係の人やったんかなと思って後でまわりに聞いてみたら、学校の先生やって。美術関係者でもなんでもなくて、純粋にアートが好きな学校の先生でした(笑)

熱量がすごいですね(笑)。ちなみに大阪と東京では、お客さんの反応が違ったりしますか?

それはあんまり変わらないですね。買うか買わないか、かな。大阪と東京でやると、東京の方が売れますね。東京の方が人口も多いし、日本在住の外国人も多いから。

海外のコレクターさんも購入されるんですね。

コロナになってからはなかなか難しいですけどね。でも去年東京でやった展覧会は、韓国のコレクターさんが作品を直接見ずに買ってくれたってことがありました。もともとそのギャラリーについてたお客さんやったんで、そこが薦めるならっていうので。

コロナがお仕事や作品に影響した部分はありますか?

仕事自体はそんなに変わらなかったですね。お店の壁に描く壁画の仕事が多いんですけど、コロナになって新規オープンは少なかったかな。でもリニューアルは多かったので、結局はそんなに影響はなかったですね。
作品は、マスクしてるのとか、オリンピックがらみのとか、2020にしか描けないようなものはいくつかあります。あの、モナ・リザがマスクしてるやつとか。

コロナ禍ならではの作品ですね。

2020年は、作家はみんなやったんじゃないですかね、マスクがらみの作品は。あとは、アベノマスク。送られてきたやつを、樹脂で固めてます。なんか有効な使い方ないかなと思って。これも15年ぐらいしたら、ちょっと価値が出るんちゃうかなって。

マスクをしたモナ・リザは「今見るともう古い感じしますね」。右は樹脂で固めたアベノマスク。

さすが安倍さんは、いろんなものを提供してくれますね。やっぱり時代を切り取る、残したいという思いが働くんですか?

それはありますね。すごく意識してるわけではないですけど。普段自分が見聞きしているものから着想を得ているので。

今描いてみたいのは「北のあの人」。表現したいものが溜まってきたら、それを表に出す感じ。
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Profile

buggy

大阪府出身。2002年より活動を開始。『VOGUE JAPAN』『Numero TOKYO』など女性ファッション誌のアートワーク、CDジャケットやTシャツのデザイン、グローバルブランドとのコラボレーション、ライブペインティングなど幅広いシーンで活躍している。誰もが知っているセレブリティや政治家、キャラクター、企業の「違う一面」を描き出す、ポップでありながら批評性のある作品を発表。その独特な表現は国内外で高い人気と注目を集めている。作品はbuggy lab project Official shopにて購入可能。

https://blp.base.shop/

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