すごくポップ、なのにシニカル。国内外で活躍するアーティストbuggyさんが、セレブの鼻血にこめたもの。
セレブの肖像画からは鼻血がツーっと流れ出し、アメコミヒーローの体形は無残にも崩れている……。時代を象徴する有名人や政治家のポートレートをモチーフに、ポップかつシニカルな作品を発表しているアーティスト・buggy(バギー)さん。コラージュとドローイングの技法を駆使したその作品は、アート業界だけでなくファッション誌などでも取り上げられ、アパレルブランドとのコラボも多数展開されています。海外のコレクターからの注目度も高く、国内外に多くのファンを持ちながらも、buggyさんの活動拠点は現在も大阪。今回はそのスタジオにお邪魔して、作品に込めた意図、海外での反応、地元・大阪のアートシーンのことなど、お話を伺ってきました。
絵を描きたくて会社を辞めて、デザイナーから転身。売り込みをして、もらえた初仕事が『STUDIO VOICE』。
buggyさんがイラストレーターになったきっかけをお聞きしようと思ったんですが、そもそも肩書はイラストレーターでいいんでしょうか?
今はあんまり、いわゆるイラストレーター的な仕事はしてないですね。でも自分でアーティストっていうのはこそばゆいんで、ペインターかなって。口で言うときはいつも、絵描きですって言いますね。
デザイナー、アーティスト、ペインター、お仕事によっていろいろな肩書で紹介されてますが……。
自分としては、絵描きがしっくりきますね。
では、buggyさんが絵描きになろうと思ったきっかけを教えてください。
もう単純に、小さいころから絵を描くのが好きで、その流れのまま。専門学校に行って、最初は会社に勤めてグラフィックデザイナーをやってたんですけど、でもやっぱり絵を描きたいなと思って辞めて。それで絵描きになったっていう感じです。
お勤めされてたのが意外です。
一年半ぐらいデザイン会社に勤めてました。20年ぐらい前ですね。市の広報とかポスターとかを作る、わりとお堅い仕事が多い会社で、そんなに面白くなかったんです。大阪にあんまりなかったんですよ、かっこいいもの作ってるデザイン会社が。辞めてからは、フリーで友達のイベントのフライヤー作ったりとかして、まあお金はないですけど、なんとなく楽しくはやってました。
デザイナーを辞めて、どうやって絵を描くことを仕事にしていったんですか?
ポートフォリオ作って、出版社に電話して、持ち込んで……ですね。今みたいに何でもネットでサクっといく時代じゃないから、雑誌の裏にある電話番号に電話して、アポイント取ってました。『STUDIO VOICE』が昔からすごい好きだったんですけど、ポートフォリオを持っていったらすぐ仕事がもらえて。それが絵描きとしての初仕事ですね。
初仕事が『STUDIO VOICE』!!
中の小さいカットでしたけどね。最初に仕事としてもらえたのはコラージュの作品でした。ドローイングと写真を混ぜるような作品はずっと作ってたんですけど、それがファッション系と相性よかったみたいで、雑誌の仕事は多くやらせてもらいました。コスメ紹介のページで、コラージュでコスメを可愛く見せるとか。
なりたいと思ってから仕事になるまで、すごく順調ですね。
いや、でもしっかり食べれるようになるには時間かかったし、絵が売れるまでにもだいぶかかりましたけどね。
仕事になったことで、作りたいものが作れない!みたいなジレンマはなかったですか?
最初からわりと僕の作品とか作風を見ての発注が多かったから、任せてもらえてたんですよ。コラムの挿絵を描いてたときも、コラムだけ渡されて、あとはどうぞどうぞって感じで。クライアントワークでも、女性誌か男性誌かで、ターゲットを意識するぐらいです。
すごい、ある意味ラッキーというか。仕事だからと無理することはあまりない?
そうですね、まあ多少はありますけど。でも仕事でも自分の作品でも、向き合い方やモチベーションにそこまでの差はないですね。
buggy
大阪府出身。2002年より活動を開始。『VOGUE JAPAN』『Numero TOKYO』など女性ファッション誌のアートワーク、CDジャケットやTシャツのデザイン、グローバルブランドとのコラボレーション、ライブペインティングなど幅広いシーンで活躍している。誰もが知っているセレブリティや政治家、キャラクター、企業の「違う一面」を描き出す、ポップでありながら批評性のある作品を発表。その独特な表現は国内外で高い人気と注目を集めている。作品はbuggy lab project Official shopにて購入可能。