『excube』で⾒るアートって、どうしてアーティストの濃度も純度も⾼いんだろう。
みんな、アート好きですか?キャンバスに描かれたものもあれば、プリントにステッカーにTシャツ、街の壁⾯などなど、そもそも表現のアウトプットに制限なんてない。ひと昔前と⽐べてSNSがどんどん普及して、みんなもタイムラインでアートを⽬にする機会は、かなり増えてると思うんです。扉をドキドキしながら開けて、背筋がピンとしちゃうギャラリーもあるし、フラッと寄って気軽に楽しめるギャラリーもあるけど、今回紹介する『excube』は、完全に後者。有名無名なんて関係ナシのボーダーレスなキュレーションでいつも驚かせてくれる、そんな『excube』の⻘野さんに、アートや服の話を聞いてきました。
キュレーションの軸は、アーティストさんと⾃分の波⻑が合うかどうか。
個性的な展⽰が多くて、いつも驚かされてます。
アングラを狙ってるわけじゃないですが、濃い⽬ですよね(笑)。展⽰されるアーティストさんの作品を、知り合いのアーティストさんが⾒にくるので、⾃然とつながりも増えていって。でも、オープン当初は国内の⽅とのつながりがない状態だったので、まずは知り合いのヨーロッパのアーティストさんにお願いしていたんです。
いきなり海外の⽅だったんですね。
ホントにつながりがなかったんですよ。もともとは、愛媛の松⼭でヨーロッパのハイブランドを扱うショップのバイヤーを10年して、半導体業界の会社で5年働き、『excube』をオープンしたので。
ビジネスマンをしてたんですか?
はい(笑)。でも、そのおかげで今があるというか。転職して3年⽬に⼤阪へ転勤して、この街が好きになったし、⾃分でショップ&ギャラリーも始めることになったし。アーティストさんの知り合いはいないけど、まぁ何とかなるだろうってね。
何とかなるだろう精神は⼤切ですもんね。ちなみに、ヨーロッパの⽅の次は、どんな展⽰を?
今はしてませんが、当時はギャラリーのレンタルもしてたんです。⼤阪でも最安って⾔えるくらいの、リーズナブルな価格で。だから、すぐ埋まるだろうと思ってたんですが、全然埋まらず…。ヨーロッパのアーティストさんの展⽰も延⻑して、「どうしようかな〜」と思ってるときに、kurryくんが来てくれたんですよ。当時はkurryくんもアーティストとして⾛り始めたタイミングで、いろいろ話すうちに、ココで個展をすることになりました。
kurryさんの最初の個展が、『excube』だったんですね!
そうなんです。お互いが⾃分の道を⾛り始めたときの出会いでしたね。kurryくんの知り合いもたくさん来てくれて、そこからいろんなつながりが⽣まれ、そこで出会った⽅の展⽰をして、また新しいつながりが⽣まれてって感じです。
つながりがつながりを呼ぶって、理想的ですよね。⻘野さんがキュレーションする際に⼤切にしてることって、何ですか?
昨年まではキュレーション7、レンタル3くらいの⽐率で展⽰してましたが、今年からレンタルをやめてキュレーションオンリーにしました。⼤切にしてるのは、アーティストさんの作品を⾃分が好きかどうか。シンプルなことだけど、アートにもいろんな種類があるし、好きと思えることが原点じゃないかなと。それと、アーティストさんとの波⻑も⼤切にしてます。
波⻑ですか?
⼩さなギャラリーなので、作品も含めてアーティストさんと⻑い時間を共有することになります。だからこそ、作品だけじゃなくて、その⼈の内⾯的な部分まで分かち合いたいんですよ。喋ったときの感覚とか、アーティストとしても、⼈としても、⾃分と波⻑が合うかどうかって、すごく重要。そういう部分も意識してるからイイ関係が築けると思うし、アーティストさんの濃度も純度も薄まらないのかなと。
作る、表現する、という⾏為がどんどん進化してる。
アートって⾔っても表現⼿法はさまざまですが、最近のアーティストさんはどうですか?
あくまでも『excube』で展⽰してくれたアーティストさんや、その界隈の話になりますけど、みんなホントに⾃由に表現してると思いますね。キャンパスに描く⼈もいれば、加⼯したり、コラージュしたり、⽴体的にしたり、ぶっ⾶んだ⾔葉を使って表現したり、決められた枠なんかないなと。⼀時期に⽐べて若い⼦もどんどん出て来てるし、今のアートシーンはかなり活性してる感じがする。
⻘野さん⾃⾝にとっても、刺激的ですね。
「え、何これ!どうやって作ったの?」みたいな話も多いし、刺激も魅⼒も尽きないですよ。うちのギャラリーはネームバリューに関係なくキュレーションしてるから、そういった点でもおもしろみはありますね。30代~40代のアーティストさんがごちゃ混ぜになる企画展もあれば、1⼈のアーティストさんをフィーチャーしたり、東京に拠点を移した⼦の作品展もあったりなど、多様な感じだけど、アーティストさんの濃度と純度は⾼く表現できるギャラリーでありたいと思ってます。
その多様さとアーティストさんと向き合うスタイルが、アートと⼈を新たに結びつける要因なのかもしれませんね。そんな⻘野さんが今注⽬する、関⻄のアーティストさんを教えてください!
挙げればキリがないんですけどね。関⻄で活動してる若⼿アーティストってことで、個⼈的にもこの4⼈の作品や動向に注⽬してます!
時吉あきな (https://www.instagram.com/akinatokiyoshi/)
彼⼥は被写体をスマホで⾊々な⾓度から撮影し、それを出⼒して⽴体物を創るという⼿法を⽤います。張り合わせなどのズレによりどこか奇妙さもあるけど、愛おしさも抱く作品が魅⼒的です!
南⽥真吾 (https://www.instagram.com/shingominamida/)
彼は彼独特な塗り分けを⽤いた作品が特徴的です。近年の⾵景をテーマに描いた作品は都会的な雰囲気もあるんですが、レトロさも感じることができます。その⾵景に吸い込まれるような⼼地よさを与えてくれますね。
前⽥流星 (https://www.instagram.com/ryusei_maeda/)
彼の作品はどれも独⾃の⽬線で切り取られた⾵景・モノ・⼈・出来事がモノクロで描かれており、ニヤッとさせられたりドキッとさせられたり、時にはキモさもあったりとすごくクセになります。最近始めた陶器の作品も、いびつな形とそこに描かれた彼の絵がとてもマッチしててオススメ!
YANKEECONG (https://www.instagram.com/yank__ee__cong/)
京都在住のペインター。ストリートカルチャーを感じさせるようなパワフルさと、和の要素も含んだ緻密さも併せ持つ作品が魅⼒的です。3本の線“ライン”によって構成される光の軌跡のような最近の作⾵は、すごく特徴的で素敵ですね。
⽇本のアーティストさんやブランドを、ヨーロッパにもつないでいく。
『excube』と⾔えば、ヨーロッパのセレクトアイテムも⾒逃せないですよね。
もともとがバイヤーだったので、店をするならショップ&ギャラリーという形態は決めてたんです。扱ってるのは、ヨーロッパのヴィンテージやインディペンデントなデザイナーズものが中⼼。今はコロナの影響もあって⾏けないですが、年に数回はドイツへ買い付けに⾏ってますね。
ドイツなんですね。買い付けはスリフトとかですか?
スリフトも⼀応⾏きますが、ヴィンテージのアイテムについては基本的にコレクターの家に直撃します(笑)。もちろん知り合いからの紹介だけど、扉を開けるまではどんな⼈が出てくるか分からないから、毎回ヒヤヒヤ。まぁ、相⼿側も⽇本⼈がいきなり来て、「コレクションしてるアイテムを売ってほしい!」って⾔うわけだから、お互いが怪しさを秘めてますよね(笑)。
コレクションアイテムって、どんなものですか?
ここ3~4年ずっと探求してるのは、90年代のレイヴシーンファッション。当時のイベントやパーティーで作られてたクラブウェアで、世代的には⾃分も通ってきた道だし、今改めて⾒るとすごくカッコイイんですよ。デザインの空気感とか⾊使いとか、着こなし⽅とかね。最近ではハイブランドも、このレイブ系のものをオマージュしたアイテムも出してて、徐々にトレンドになりつつはあります。
確かに、デザインとかも“今”な感じがします。
ヨーロッパのマーケットでもほとんど出回らないアイテムなんで、コレクターに直撃するしかないんですよね。だから、コレクターからまた次のコレクターを紹介してもらって、ひたすら個⼈宅を駆け回ってます。
ヨーロッパでもつながってつながって、という感じですね。
⽇本でもヨーロッパでも、そこは⼤事にしてます(笑)。現地のデザイナーを紹介されて⽇本で委託販売することもありますし、⽇本のブランドを海外につなぎ、ベルリンのショップに置いてもらうことだってあります。もちろん、アーティストさんの作品もそう。⽇本の、しかも難波の⽚隅にある⼩さなショップ&ギャラリーだけど、いろんなアートやファッションの橋渡し役になれたらなと。役⽬って⾔うと⼤げさですが、やっぱり好きなことをやってますからね。好きなもの、好きな⼈とつながった以上には、⾃分からつなげていくことも⼤切にしたいと思ってます。
⻘野 真
濃度も純度も⾼めのアートとファッションを発信する『excube』のオーナー。難波と⾔っても静かな街並みで、そこと相反するコントラストが圧倒的。⻘野さん⾃⾝は、猫が⼤好きという可愛い⼀⾯も。
大阪府大阪市浪速区稲荷1-7-30 山崎ビル2F
TEL/06-6567-9660
営業時間/14:00~21:00、土日13:00~21:00
https://www.excube.jp/